過保護・過干渉がもたらすもの(1)~ヒロユキコさんの告白~

自分に自信が持てなかったり、自分が無いように感じたり、あるいは恋愛や夫婦関係がなかなかうまく行かない、人に気を使いすぎて疲れる、といった問題をカウンセリングしていくと、その背後に親御さんとの過保護・過干渉の問題が隠れていることが少なくありません。

この過保護・過干渉は愛情の裏返しであることも多いのですが、母子癒着などの非常に近い関係性を築くので、自分の意志よりも親の意志となるなど自分の意見が持てず、恋愛や仕事などの人間関係も顔色を伺うばかりでうまく構築できなくなったりするんですね。

今回はカウンセリングでよく見かける事例をケーススタディ風に紹介し、なぜ、そうした過干渉が生まれるのか、そして、その影響と、どうすればいいのか?を具体的なアプローチとともにお話して行きます。

ヒロユキコさんの告白。

私はお母さんがすごく心配性というか、過干渉な人で、小さい頃からなかなか自分の意志というものが持てなかったんです。
「あれをしなさい、これをしなさい」ということも言われましたし、無言の圧力もあって、「お母さんの気に入らない事をしてはいけない」と常にお母さんの顔色を伺ってきました。

だから、大人になった今でも、周りの人の顔色を伺ってしまいます。
自分に自信がもてない、彼ができても愛されてるという実感がない。
自分の意見を言うこともできなければ、自分の考えなんてちっぽけだと思って心の中に仕舞いこんでしまうんですね。

だけど、もっと自立しなければ!と思う一方で、離れられないというか、つい引き込まれてしまうんです。
ようやく一人暮らしを始めたんですけれど、それまでも大変で、家の近くじゃなきゃ許してくれませんでした。

時に「ここまで育ててやったのに私を捨てる気?」と脅されたり、「お母さんもお父さんも最近、体が弱ってねぇ」と情けに訴えられたりして本当に困ってしまいました。
それでも何とか振り切ったんですけれど、当然のように「合鍵は?」と言うのでイヤイヤながら渡してしまいました。

掃除をしてくれたり、料理を作ってくれたりするのはいいのですけれど、勝手に家に入られるのがもう気分が悪くて。
電話も今でこそ減りましたが、始めの頃は毎日、多いときは1日に2、3回ってこともありました。
それでも今は2、3日に一度は電話がありますし、メールで報告しないと怒られますね。
もういい大人になったというのに。

ええ、郵便物もチェックももちろんされてました。
大人になるまでそれが当然のように思ってたんですよね。
昔、同級生の男の子から手紙をもらったんですが、しっかり中身を読まれてて、家に帰るなり「○○くんってどんな子なの?どこの家の子なの?」としつこく聞かれる始末。
その子の家に電話をかけそうになったので、泣いて止めましたけど。

だから、小さい頃から何とか認めてもらおうとして頑張ってきました。
学校の勉強も頑張ったし、習い事も頑張って通ったし。
だけど、今になって思えば、何が残ってるのかな?という気持ちになることもあります。

でも、色々してくれるのも確かなんですよね。
心配症なだけで、愛情の裏返しなんだろうな、と思ってました。

服とかも全部選んでもらっていました。
今でもちょっと派手なもの、といっても、ちょっと膝丈のスカートとか、明るい原色系の服とかですけど、そういうのを着ると、ちょっとどうしたの?そんな格好して、恥ずかしいじゃない!って必ず言われます。

いつでも監視されてるような感じがするんです。

彼ができても、いつも門限を気にしてるので呆れられるし、そんなことお母さんにばれたら大変ですから、凄く気を使って疲れてしまいました。
彼も「自分よりもお母さんのことが好きなんじゃないの?」って言って振られたこともあります。
そもそも、好きだって言ってくれる人がいても「お母さんはこの人のこと、どう思うかな?」って必ず考えてしまうんですよね。
もし、お母さんが気に入らなさそうな人だったら、付き合うこと自体を辞めてしまうことだってありました。

そういう子ども時代を過ごしてきたので、結婚には憧れはあっても現実的に考えられませんし、子どもはあまり産みたくないって思ってしまうんです。

過去の恋愛は・・・実はあまり言えない恋が多かったんです。
どういうわけか奥さんや彼女のいる人ばかりを好きになってた時期もありました。

仕事は無難にこなしてます。そんなしたい仕事というわけではないのですが。
始めの頃は周りに気を使って大変だったりしたこともありますが、慣れてからは比較的周りの人にも恵まれてできています。

※このお話はカウンセリングでよく伺う事例を元にまとめたフィクションです。

>>>『過保護・過干渉がもたらすもの(2)~過保護・過干渉の背景にあるもの~』へ続く

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