好きな人には愛されない(2)~手に届かない人を好きになる~

さて、今回から本格的な心理のお話になります。好きな人に愛されない心理の一つに、「手の届かない人を好きになる」という問題があります。

それはテレビの向こう側のアイドルに恋をするが如く、可能性の低い恋にはまってしまうことを指しますが、この原因の一つに「私は愛されるわけが無い」という“無価値感”という感情を“証明する”パターンがあります。にわかには信じがたいかもしれませんが、その無価値感を持ち続けるために、私たちは愛してくれない人を好きになってしまうのです。

アイドル(偶像)化の問題~手に届かない人を好きになる~

好きな人には振り向いてもらえないんです、というお話を伺っていくと、ある共通点が浮かび上がってきます。
それは、周りが感じる以上に自己評価が低く、自信の無さや不安などを強く持っていることなのです。

そういう思いが強いと、まるでテレビの向こう側のアイドルを好きになるように、自分のことを愛してくれる確率がとても低い人を選んでしまうようなのです。

○無価値感の証明

なぜ、そういう手の届かない人を好きになってしまうのか?というと、その背景の一つとして、あなたの中にある「自分は愛されないんだ」と言う思い込みが影響していることが少なくないようです。

実は私たちの心は、自分の内側にある思い(観念)を証明しようとして動きます。
“言霊(ことだま)”って言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、言った事が現実化する、というのと似たようなもので、心の中で思っていることがそのまま現実として起きてしまうのです。むしろ、言葉のパワーよりも、感情のパワーの方が遥かに大きいので、この観念を証明しようとする動きはほんとうにパワフルなのです。

例えば、あなたが「きっと自分は成功しない」とうい観念に縛られていたとしましょう。そうすると、仮に成功しそうな場面が訪れたとしても、なぜかそれを取り逃がしてしまうような失敗を引き起こします。
成功してしまったら、その観念は間違っていることになってしまいますからね。
そうして、失敗することによって、「自分は成功しない」という観念を証明しようとするのです。

もちろん、それは意識的なレベルではなかなか気付きません。丁寧に自分自身を見つめて行った時にハッと気付く心の癖、すなわち、パターンなんですね。
気付けばそれを書き換えることも出来るのですが、多くは心の痛みが原因になっているので、その痛みを癒していくことが有効なアプローチとなるんです。

さて、もし、あなたの中に「どうせ、私はちっぽけな女だから、誰も私の事なんて愛してくれるわけがない」という観念があったとしたらどうでしょう?

いわゆる“無価値感”という感情で、自分自身を必要以上に過小評価し、自己嫌悪させるものです。

こうした感情は、過去に酷い失恋や離婚をして恋をすることが怖くなっていたり、実はまだ忘れられない人(意識レベルではとっくに過去になっていても)がいて、その人への執着が残っている場合、さらには家族(特に異性の親)から全然愛情を感じられなかった場合などに生まれます(この3つ目については次で詳しく扱います)。

もし、あなたが大好きだった彼に裏切られて酷く傷ついてしまい、もうそんな辛い思いはしたくないと「どうせ、私を愛してくれる人なんて居ない」という思いを強く持ったとしましょう。
その思いは呪いのようにあなたを縛り付けるようになるのです。

しかし、あなたが恋に生きる女で、どうしても誰かと恋したい、誰かを愛したい、という欲求を強く持っていたとします。
そうでなくても、私たちには人を好きになりたい、誰かを愛したい、という欲求があるんです。

さて、「傷つきたくはないが、好きな人は欲しい」と思ったとき、どんな相手ならば、この一見矛盾するリクエストを叶えてくれるでしょうか?

そんな時、「私は好きだけど、私の事を好きにはなってくれない相手」はとっても格好の相手だと思いませんか?

もちろん、その呪いは意識の外にありますから、自分でそれを選んでいるなんて自覚は全然ないかもしれません。
でも、もし、あなたがまだまだ癒せていない過去の恋愛、あるいは、執着を手放せていない元彼がいるとすれば、そこで生まれる無価値感から、手の届かない人を好きになってしまうのです。

実際のカウンセリングでも、10年前の失恋の傷がこのパターンを作っていたケースもありました。その痛みを癒していくセラピーをしてみると、本人もびっくりするほどの涙が流れ、まだまだ心の中に彼の存在が色濃く残っていたことが分かったのです。

こうしたセラピーを繰り返すことで、少しずつその痛みが癒え、その分だけ、無価値感は癒され、ネガティブな思いも薄れていきます。
そうすると「恋をしていいんだ。幸せになっていいんだ。」という許可が自分に下りるようになるのです。

 

>>『好きな人には愛されない(3)~エディプス/エレクトラの“敗者”~』につづく

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