●じいちゃんのポッキー

小さい頃から、僕にはある一つのあまり重要ではない疑問がありました。
小さい頃、夏休みや冬休みに田舎に帰ると、じいちゃんがいつもポッキーというお菓子をくれていました。
仕事の関係で家にいない時には、ポッキーだけが置いてあることもありました。
毎回帰る度に、赤い箱のポッキー。
ポッキーを食べながら、「なんでいっつもポッキーなんだろう?」と思いながら食べていました。
ポテトチップスやビックリマンチョコなど、欲しいお菓子は他にも一杯あったので、「たまには違うお菓子もくれたらいいのになぁ」などと思いながらも、ポッキーは好きだし、おいしいし、じいちゃんがポッキーをくれることもうれしかったので、それ以上深く考えることもなく、じいちゃんに「何でいつもこのポッキーなの?」と聞くこともなく、ただ遊び回っていました。

先日、友人の子供にお菓子を送ってあげることになり、奥さんと2人でスーパーのお菓子売り場に行きました。
ずいぶん久しぶりに訪れたお菓子売り場は、童心をくすぐられるなかなか魅惑的な場所でした。
で、いざ、その子に送ってあげるお菓子を選び始めると、二人とも途方に暮れてしまったのです。
膨大な種類のお菓子があって、どれを送ってあげたらいいのかがわからないのです。
奥さん:「どうしよう?どれにしよう??」
僕  :「このボンタンアメなんかいいんじゃない?」
奥さん:「それはよーちゃんが好きなだけでしょ!あの子が好きそうなものを送ってあげるのよ。」
僕  :「そういえば、『ひもQ』欲しいって言ってなかったっけ?」
二人 :「ひもQ、ひもQ、ひもQ… あった!!」
奥さん:「ポケモン好きやったんちゃうかな??」
僕  :「え〜っと、ポケモン、ポケモン、ポケモン… このグミのやつなんかどう??」
たまにしか会わない子供が好きなお菓子って、接していない分だけわからないんですよね。
過去の記憶を手繰り寄せながら、そうしてなんとかかんとか見繕って、二人して「これで喜んでくれるかな〜?」などと言いつつ買い物を済ませたのでした。

そのお菓子の会計を済ませるレジの列に並んでいる時に、ポンと「じいちゃんのポッキー」のことを思い出したのです。
そして、思い出すと同時に、その疑問が解消されたのです。
“じいちゃん、僕が好きなものがわからんかったんや…”
“いつだったか、僕がポッキーおいしそうに食べてたの見てたんや…”
“僕がポッキー好きなのを覚えててくれたんや…”
“「これで喜んでくれるかな〜?」って思いながら、ポッキー買ってきてくれてたんや…”
口数が少なく、家にいないこともあったじいちゃん。
はっきり言って、(僕の中で)存在感薄かったじいちゃん。
あのポッキーは、そんなじいちゃんの愛情表現だったんです。
積年の疑問が解けると同時に、あのポッキーがただのお菓子ではないことに気づいた僕は、スーパーでウルッときてしまいました。
じいちゃんは今はもう死んでしまっていませんが、もし今もう一度会えるなら、じいちゃんに伝えたい。
「ポッキーありがとう」って。
「じーちゃんの愛情、受け取ったよ」って。
「すごい幸せな気分でね、胸が熱くなって、涙が出てくるよ」って。
じいちゃん、そしてじいちゃんの愛情に触れさせてくれた友人の子供ちゃん、本当にありがとう。
僕は、幸せ者です。

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