●いのちと時間

 今朝も当たり前のように目がさめました。
バルコニーから今日一番の陽射です。
東の海の上、鉛色の空の隙間から少しずつ光が増えていくのを眺めていると、地球上で生きてるなって感じるんですよ、大げさなようだけど。太陽ってすごいなあ、とか、ぼーっと考えたりして。
 
 太陽が上がりきる前に、この街が崩壊したのは8年前のことです。
もう8年、たった8年。かなり復興はしたものの、未だに空き地があったり、名残をとどめるような場所・建物も案外残っています。
年の瀬には「ルミナリエ」というイルミネーションを使ったイベントで、犠牲者への鎮魂と復興を願うのですが、年々スタイルも変わってきているようでもあります。
 
 そう言えば、あの地震の前には毎朝当たり前に目を覚ましていました。
そして、出勤前のあわただしさに追われ、朝日を見ようとも思わなかったな…。
 こんな話になると、一部の方に「まだそんなことを言っているの」と言われたことがあります。
でも、来るはずの朝が来なかった経験は私たちだけではないのに、って思うんです。
ある日突然大切な人を亡くしたり、事故に遭ったり、家や物が現状を留めていなかったり、と。それが命ほど大切ではないにしても、心の中にぽっかりと空いた穴はなかなか埋められるものではありません。大震災後、アル中が増えたというのも頷けます。
こういった「喪失感」は、もしかしたら日常的に感じでいるのかもしれません。ただ、あまりにも日常的だと、「気づかないくらいの仲良し」みたいな感覚になるかもしれませんね。
 人生80年といわれて久しいですが(何と私は半分終わってる!)、人は一体どのくらいの数の人と出会い、別れていくのでしょう。その別れも、ただの通りすがり的なものから、永遠の別れ、愛しながらの別れ、巣立っていく人との別れ…自分の人生を彩ってくれるとともに、私たち自身もまた誰かの人生を彩っているんですよね。なーんてセンチメンタルになったのには理由があります。
 少し前、知り合いの子供さんが亡くなりました。
中学生で、とてもかわいい子供さんでした。
直前までとても元気だったのですが、不慮の事故により怪我を負い、手当ての甲斐なく亡くなったのです。
三日間、様々な治療を施された彼がどれだけがんばっていたかは、棺にお花を添えるときにわかりました。
筆舌には尽くしがたいんですが、高度の医療を伺わせる姿でした。
 
 正直言って、数日間とか数時間とかの延命に何の意味があるのか、当人は苦しいだけじゃないのかってそれまでは思っていましたが、彼の顔を見た時に「3日間生きていてくれて本当にありがとう!」って思えました。
彼がこの3日間を生きることで、残された家族にたくさんのものを残していったことを感じたからです。
彼の頑張りは、わずかに見えた顔に現れていました。
彼の学校の先生たちも交代で危篤状態の彼の近くにいて励まし、縁のあった方がたくさんお見舞いにきたのだそうです。
ご両親・ご家族の苦しみ・悲しみは計り知れませんが、こう言った周囲に囲まれていた彼のことをとても誇りに感じておられるようでした。
もちろん、生きていて元気な声、顔が一番なんですが、人間は助からない命の中でこんなに人は周りを愛せるんだな、と、、、そう思いました。
 
 彼は、天使の姿で家族や友達、大好きな先生、みんなを見守ってくれているに違いありません。人の心の中で生きるとは、こういうことなのかも知れませんね。
  
 こんなふうに考えると、人々の違った一面が見えるような気がしだしました。
ニュースを見ても、この人のことを愛している誰か…両親、妻や夫、きょうだい、子供、恋人、友達、色んな愛に包まれていなかったのだろうか、それとも気づいてなかったのかな。彼・彼女を愛している人はいるのだろうか、だとしたらその人たちの思いは…。そんな風に以前にもまして考えるようになりました。
 
 奇麗事のように聞こえがちなんですが、愛を感じられたら無くなる犯罪は本当に多いんじゃないかと。まあ、おばちゃんのたわごとですけどね(笑)。なんせ思春期の息子どもと生活していると、心がささくれることも数知れず…(やつらも言ってるでしょうが)かわいいな、と思うこともあるし、このやろーと思うことも。でもこんな小憎らしい?うちの息子たちもほんとにかわいい天使の時代があったし、今だってそしてこれからも亡くなった彼のように周りを愛し愛される存在であることには変わりないんだな、と頭でわかっていることをまた感じる今日この頃です。
こんな気持を誰もが持っていることを思い出したら、戦争や犯罪はほんまに減るんでしょうね。いや、つくづく感じます。
 ありきたりの朝の話からえらい話になってますが、とにかく、一人一人の想いが幸せや平和を創っていくもんなんやなあ、と改めて思ったのでした。
中村ともみ

この記事を書いたカウンセラー

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