●人の幸

ふと、目の前を走るトラックに目をやると、”海の幸、山の幸”の文字。
何を運んでいるのか、どこの会社なのかもわからない、ただそれだけが書かれたトラックでした。
変なの〜と思いながらも、そこから思わず連想してしまったサンマ・・・
朝食を食べていなかった私は、不覚にも空腹感を感じてしまいました。
さぁ、大変です。
時間がなく、急いでいたので、コンビニに立ち寄っているヒマはありません。持っていた水でなんとか、しのぐことにしました。
しばらくして、淀川を渡る橋にさしかかります。
橋の上からは、川下の方にはビル群が、川上の方には遠く京都方面への山が見えます。
目の前に現れる自然に運転中、和まされる場所。大きな水鳥が飛んでいたりすると、ついつい見つめてしまいます。
危ない、危ない。
サンマは、海がもたらしてくれる恵み”海の幸”か・・・
おいしい=幸せ、だから、海の”幸”なんだろうな・・・
もしかしたら、満足できる、満たされる、で”幸せ”なのかな・・・
昔は、あまり食べ物がなかったから、食べられること自体が”幸せ”だったのかも・・・
淀川を越えても、トラックの文字に捉われている頭を、そのまま放っておくことにしました。
なにか、意識的に考えたりすると、お腹が空いていることを思い出してしまうからです。
私は、最近、幸せです。
というより、ずっと以前から幸せだったことを認識できるようになったというか、今までの積み重ねが、そう感じられるようになったというか、とにかく、幸せです。
お腹は空いたままで、時間がないのには変わりはありませんでしたが、やっぱりその時も幸せでした。
理由は、お腹に赤ちゃんを身ごもったからです。
イライラし、吐き気もしますが、なぜか幸せでした。
妊娠すると、情緒不安定になる方が結構いると聞きます。
なるほど、確かに”あまのじゃく”が激しさを増したように感じます。
でも、でもなんです。
やっぱり、基本的には幸せなんですね、不思議なんですが。
そして、その幸せは、さらに大きくなることに、心のどこかで不安を感じながらも、本能的に・・・
人を幸せにする、様々なおいしいものや景色。
栗にも、サンマにも、きのこにも、目がありませんが、いやいや”人の幸”には勝るまい・・・
と、私は勝手に思うのです。
「おめでとう!」と言われる度に、喜びと不安が同時にこみ上げ、いつもと変わらないダンナの顔を見ては、一緒にいることに震えるほどの幸せと、ムカムカが同時にこみ上げる。
客観的に見ると、ただのわがまま妊婦ですが、そんな自分になっていることすら、なんだかうれしい。
正直、”幸せ”を定義することは難しい、と感じていました。
だって、たくさんの、そして人それぞれの幸せがあるから。
だから、曖昧なまま”幸せ”と表現し、その人にとっての幸せに耳を傾けてきました。
でも、なんだか得体の知れない、泣いても笑っても消える事のないこの”幸せ”の存在を、黙ってはいられません。
理解しあえたり、心から相手のことを思えたり、人との関係で感じる事のできる”幸せ”は、こうして終わることなくくり返されて、大きくなり続ける。
そうだったら、いいな・・・と、どんどん大きくなっていく”人の幸”。
大切に育てていきたいと思います。
源河 はるみ

この記事を書いたカウンセラー

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