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Lecture.816

人を好きになりたいのに、なれなくて悩む時〜補償行為から本当に人が好きな気持ちに気づく〜

講師:池尾昌紀

「人が好き」と思い、それを表現している場合には、本当に人が好きでやっている場合と、自分へのダメ出しから、それを隠したり、償いのようにやってしまっている場合があります。補償行為と言われる「良いことをやっていても、その動機が無価値感から来るために、やっていても嬉しくない、むしろ苦しくなる」という心理が隠されているケースなのです。
「人が好き」という思いを、自分の心の中で嘘をつきながら持ち続けるように感じてしまうのですね。
そこから脱していくための方法は、自分が無理をして人を好きになろうとしていることに気がつくこと。この気づきを持つことで、実は人をあまり好きではないとか、無理していることに気がつくことができ、無理なことは止めようという気持ちになれるきっかけを持てる場合も多いのです。
そして、その先にあるのは「実は本当に人が好きだ」という思い。だからこそ、人と接点を持てないことに悩んでいることに気がつくと、自己価値を取り戻すことにつなげていけます。

Keywords
補償行為 無価値感 対人関係 コミュニケーション 自己価値 

◎リクエストを頂きました◎
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私は人が好きだと思っていました。今は人が好きになりたいと思っています。
前と今と人に対して好きという考え方が変わったのは、今の自分のことをきちんと見るようになってきたからだと思います。
そこはいいことなんだと思うのですが、私は人が好きになりたいというように、今はあまり人が好きではないんです。
どうしてそう思うようになったかというと、私は会話することが面倒で仕方がないのです。
楽しく会話したいという欲求はあるのに、いざ会話をすると面倒だなと思ってしまって会話がおろそかにしてしまいます。
会話の勉強をしたりしてもっと積極的に話そうと努力しているのですが、心の深い部分が拒否してる感じがします。
そこで質問なのですが、どうしたら心から会話を楽しみたいと思い、会話に積極的になることができるのでしょうか?
ご回答いただければ幸いです。よろしくお願いします。
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「私は人が好き!」と思ったり、それを言動で表す時。

心理的には、そうした場合、思いや言動の元になっている動機が二種類あると考えられます。

1.本当に人が好きという気持ちが動機になっている時。

2.もう一つは、自分から好きになっていかないと嫌われる、という気持ちが動機になっている時。

人が好き、と思っている時に、苦しくなったり、うまくいかなくなったりするのは、2.の動機の時なんですね。

心理学には「補償行為」という言葉があります。

私たちの心は、罪悪感や無価値感、例えば自分には価値がないという思い、があると、それを補おうと良いことをして償おうとします。

人が好き、と思う時には、「自分みたいに価値がない人間は、人を好きになる努力をしないと、人から好かれない」とか、「自分はダメだから、せめて人を好きと思い続けることで、やっと価値が持てる」などの心理がベースになっていることがあるんですね。

人が好きと思うこと、それを言葉や行動で表すこと自体はとても良いことなのに、その動機が「自分はダメだから」「価値がないから」だったとしたら、それをやり続けることが、苦しくなってきてしまうんですね。

ダメな自分を隠すため、悪い自分が償いをするために、やり続けないといけなくなってしまうからなんです。

では、どうしたらいいかと言えば、自分の価値を見直してあげる、というアプローチが有効になります。

私たちは、自覚している人も、無自覚な人もいますが、本当に自分に厳しいのです。
そのことを自覚しているしている人は、その自覚以上に。
無自覚な人は、一度、見直してみるほうがいい。

それくらい、自覚しにくいのですが、心の奥底では、いつも自分にダメ出しをし続けていると考えてもいいほどなんですね。

ほとんどの人が、自己価値の自己イメージと、実際がとても大きく離れているのです。

別の言い方をすれば、私たちは、自分がやってきた努力や、がんばってきたこと、自分の良い影響力などを自覚できていないのですね。

ですから、自分を褒めてあげる、自分のがんばりを認めてあげる必要があるのです。

小さなことでいいから、毎日、自分を褒めてあげる。

その積み重ねが、自己価値と自己イメージを近づけていくことに役立ち、補償行為を減らしていくことに役立ちます。

今回のご相談者は、「人が好き」から「人を好きになりたい」に変化した結果、「あまり人が好きではない」ことに気がついた、というところにたどり着いておられます。

その理由として「今の自分のことをきちんと見るようになってきたから」と述べられています。

これは、補償行為という視点で整理すると、補償行為から人が好きと思っていたところから、自分の価値を見直す作業をしていくことで、自分が無理して人を好きになろうとしていたことに気づいた、ということになるでしょう。

自分には価値があるのかもしれない。自分にダメ出ししすぎていたのかもしれない。

そうやって、自分の価値を見ることができるようになると、今までしてきた無理をしなくてもいいや、と少しずつ思えるようになっていきます。

その結果、無理して人を好きでいなくてもいい、と思えるようになってきて、人と会話をするのが面倒だ、というところにたどり着いているのでしょう。

その上で、人との会話を楽しめるようになるためにはどうしたらいいの?というご相談に行き着いているわけですから、まずは、人をあまり好きじゃないことに気がついた自分を褒めてあげることからスタートしていただけたらと思います。

この気づきは、すごいことなんです。

人が好きと思っていた人が、人があまり好きじゃない、にたどり着くというのは、今までの自分を否定することにもなります。

ところが、そんな人が、人をあまり好きじゃないけど、人を好きなりたいから、会話を楽しめるようになりたい、と思い悩むということは、実は「本当に人のことが好き」である証拠になるのです。

人をあまり好きじゃないと気がついたのなら、そのままでいいじゃないですか。

なのに人を好きになりたいと思うのは、人が好きな証拠なんです。

つまり、冒頭に書かせていただいた「人が好き」な動機は、実は、2.の補償行為だけで思っていたわけじゃなくて、1.の「本当に人が好き」という思いも合わせて持っていた、ということになるのです。

私たちは、1.と2.の動機が混ざっていて、わからなくなって、うまく表現できなかったり、気持ちがわからなくなることが、実はとても多いのです。

補償行為であることに気がついて、それを止めていくことで、本来持っていた「人が好き」という気持ちがわかって、使っていけるようになるのです。

今回のご相談者にお伝えしたいのは、このことです。
無理して人を好きにならなくていい、会話をしなくていい。
まずは、楽に話せる人とだけ、会話をしていくこと。

そして、こんな風に悩むほど、あなたは人が好きなことを受けとめてあげてください。

これを積み重ねていけば、会話が楽しめる人が少しずつ広がっていきます。

(完)


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