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Lecture.749

人の問題と自分の問題に境界を引こう〜私が悪いと問題を引き受けてしまうのはなぜ?〜

講師:大谷常緑

問題を抱える方の典型的な捉え方の一つに、「この状況を招いたのは私が悪いからだ」と考えられている場合がとても多く見受けられます。
そもそも、問題が生じるという事は、どちらかが一方的に悪いという事は無く、二人の間の関係性において生じるものです。
AさんとBさんは関係がうまくいかないが、AさんとCさんは関係がうまくいき、BさんとDさんも関係がうまくいく、という事はよくある話ですね。
起こった問題を「私のせい」と引き受けてしまうのは、「自分は悪い」とか「自分は人に迷惑をかける存在」などの自己概念があるからです。
この自己概念を客観的に見直す事と、問題は相互関係で生じる事を理解すれば、問題は自分のせいと引き受ける事はなくなっていきます。

Keywords
投影 自己概念 問題 自分のせい 認知 

◎リクエストを頂きました◎
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子供の頃、まわりの大人たちの機嫌が悪かった時や両親の仲が悪くなった時、いつも「私のせいかな?きっとそうだ」と思っていました。
家庭内不和で育った子供は、私に限らずそのような思いを持つようです。
(「お母さんが出て行ったのは、私が良い子にしていなかったからなのかな?」等)
どうして子どもはこのように思うのでしょうか?
また、大人になった今、「自分のせいかな?」と思い自分を責めていた幼い自分が可哀想に思えてしまうのですが、こういった思いはどう対処したらよいのでしょうか?
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問題を抱える方の典型的な捉え方の一つに、「この状況を招いたのは私が悪いからだ」と考えられている場合がとても多く見受けられます。
お話を色々聞いていると、先ずは「良い」と「悪い」という二値的な価値観をお持ちで、出来事や今の状況に対してそれを当てはめて解釈しておられます。
例えば、誰かとの関係性で問題が生じた場合には、「私は悪くない、相手が悪い」という事になるのか、「私が悪い、相手は悪くない」という事になるのかいずれかになるのですね。
世の中には様々な価値観や考え方を持った人間がいます。
その価値観や考え方は、男女の差から出てくる場合もあれば、地域性によるもの、生育環境によるものなどとても多様です。
これに加えて、その人の経験や習い性になっている物の見方、捉え方からくる心のフィルター“投影”も大きく影響します。
従って、自分と全く同じ価値観や捉え方をする人は世の中に存在しないと言っても過言ではないでしょう。
この捉え方を心理学では“認知”と呼び、少し乱暴な言い方をすれば、認知に従ってその人がどんな言動をするかが決まっていきます。

ここで、言動には言葉によるコミュニケーションや振る舞いはもちろんの事、表情や服装といった“表現”全てを含みます。

このように、人により異なる認知や言動で、人とのズレが生じ、そして自分の認知や言動による表現は人と同じと勘違いする事で問題が生じるわけですから、問題の原因はどちらかにあるという事ではなく、相互の関係性の中で生じてくるという事が真実です。
例えば、AさんとBさんがカップルになってうまくいかなかったとしても、それはAさんとBさん相互の関係性の中の問題であり、AさんとCさんでは生じない問題なのかも知れません。
「あなたは誕生日に彼に何をして欲しいですか?」と女性に尋ねると、大きくは三つの答えが返ってきます。
1つ目は、ロマンチックなレストランで一緒に食事をしたいという答えです。2つ目は、何かプレゼントをしてほしいという答えです。3つ目は、彼と一緒にまったりと過ごしたいという答えです。
この全てが叶えられればもちろん問題は生じないのでしょうが、どれか1つを選択するとなると、相手の彼が自分がしてもらったら一番嬉しい方法を選ぶ事が多くなります。自分がそれをしてもらったら嬉しいから、相手もきっと喜ぶに違いないと思う訳です。
しかし、彼が選んだ方法と、その女性がして欲しい方法が一致しなかったとしたら、彼女は「私の事を理解していない」と思うかも知れません。そしてそんな些細な行き違いが問題へと発展する可能性がそこにある事になります。
このケースでは、どちらが悪いと言う訳ではありませんね。
お互いの思いが行き違っただけなのです。
そして、このような“本質的ではない”事柄の積み重ねが関係性を悪化させていきます。
お互いに自分の心の傷を見始め、相手の事が見えなくなってしまうのです。

問題は、起こった出来事よりも、寧ろお互いに自分の心の傷に着目し、相手を見なくなった事にあるのです。

さて、では問題を引き受けてしまう心理の奥底には一体何があるのでしょうか?
そこには、「自分はこうだ」と自分自身で自分の事を決めつけている自己概念が横たわっています。
人には余りにも多くの側面があり、その全てを取り込んで自分で自分像を作る事は困難です。例えば、普段は人に優しい側面を持っていても、何か問題が起こると人に対して腹を立ててしまう自分がいると、その両方を自己概念として取り込むと矛盾が生じて混乱してしまいます。従って、自己概念に取り込む自分のありようは、どちらか意識している方になります。この例でいえば、「人に優しくしたい」とか「人に優しくしなければならない」と意識していると、多くの場合、できていないところに着目して「自分は人に優しくない」という方を取り込んでしまう訳です。
そうして、様々な側面のうちその一部を取り込んだ自分の姿、「自己概念」が出来上がるのです。

この自己概念の中で、「自分は悪い」とか「人に迷惑をかける存在」という自分像があると、例え自分が問題を作り出した訳でもないのに、「問題は自分のせいで生じた」と捉えてしまうのです。

自分の姿を客観的に見て、このネガティブな自己概念を書き換えていくこと、また問題は相互関係で生じている事を理解される事で、自分の課題と人の課題を切り分け、自分の課題についてはそれを解決する事ができるようになります。

この自分のありようを客観的に見る事はとても重要で、ここに「よい」「悪い」の考え方を入れない事がコツです。「よい」「悪い」のジャッジを入れてしまうと、心理的な抵抗が生じて客観視ができなくなってしまいます。

さて、リクエストにありました幼少期の「私が悪かったのかなぁ」という気持ちですが、この頃には“親は正しい”という考え方が支配的で、「親がこうするには何らかの訳がある」と考えがちになります。
自分の問題ではなく、親自身の問題であってもそう解釈するのですね。
正しいと思っている親が信じられない言動をとるのですから、必然的に“自分が悪い”という解釈に至ってしまいます。
また、“大人になった今、「自分のせいかな?」と思い自分を責めていた幼い自分が可哀想に思えてしまうのですが、こういった思いはどう対処したらよいのでしょうか?”

という点は、それだけ頑張ってきた自分を「よく頑張ってきたね」と認めてほめてあげられてはいかがかと思います。

(完)


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