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Lecture.517-4

バランスの法則3(4)〜家族の兼務体制〜

講師:根本裕幸

家族で誰か1人が欠けてしまったとき、残りのメンバーは無意識のうちに、その穴を埋めようとします。仮にお父さんがいなくなったとすれば、お母さんと子ども達は、それぞれ分担してお父さんの穴をカバーし、家族のバランスを保とうとするのです。それにより、家族の絆は深まるのですが、その一方で、子どもなのに早く大人になりすぎたり、女性なのに男性性ばかりが成長したりするなど、問題を作る側面も生まれてしまうのです。

Keywords
バランス 家族 兼務 父役・母役 絆



●家族の兼務体制

私たちの人間関係の基礎となるのはやはり、家族関係だと考えられます。生まれたときから成長していく過程で、もっとも近い人間関係が家族なんですね。私たちはそこから多くのものを学び、成長していきます。

お父さんがいて、お母さんがいて、お兄ちゃん、妹、この4人家族を例に取ってみましょう。
それぞれに様々な役割を担って、お互いに“助け合う”ようにバランスが整えられていきます。1回目でも少し触れた「家族の5つの役割」がそれで、例えば、お父さんが「ヒーロー」、お母さんが「殉教者」、お兄ちゃんが「ヒーロー」と「傍観者」、妹が「チャーマー(マスコット)」となって家族を助けようとするわけです。

しかし、そのバランスが崩れたとしたらどうなるでしょう?
例えば、お父さんとお母さんが離婚することになり、お父さんが家を出ることになったとしたら・・・?

やはり私たち家族はそれまでのバランスを保とうとして動き始めるのです。

シングルマザーのお客さんがこんな話をよくしてくれます。
「離婚したとき、私、お父さん役もしなきゃ、と思ったんです。父無し子だと思われたくないから、厳しく育てようと思いました」

そんな風にお父さんが不在になったとしたら、その分を残りの家族でカバーしようとするんですね。

ケースバイケースですが、イメージ的にはこんな感じです。

家族の兼務体制

すなわち、まず、お母さんがお父さん役を引き受けて、子ども達にとっては母親であると同時に父親的な振る舞いをしようとします。
仕事をしたり、厳しく叱ったり、将来のことについてアドバイスしたりといった役割を果たそうとするわけです。

一方、お兄ちゃんも男性なのでお父さん役を引き受けようとします。そこでは、妹に対してはお父さんがわりとして面倒を見ようとするでしょう。そして、大人になって妹が結婚するとき、父親にパートナーを紹介するように、兄に合わせるかもしれません。
また、お兄ちゃんがお父さん役を引き受けるということは、お母さんに対しては「夫役」となりますね。だから、お母さんからの相談を聞いたり、家のことをあれこれ考えたりして、家主のような振る舞いをするようになるかもしれません。

また、妹は、お父さんとの兼務で忙しいお母さんのフォローをするようになります。家事を手伝ったり、お兄ちゃんの身の回りの世話をしたりするかもしれませんね。

こうした動きは、会社でよくある“兼務”形態によく似ています。
お母さんは、『お母さん兼お父さん』に、お兄ちゃんは『お兄ちゃん兼お父さん』に、妹は『妹兼お母さん』になるわけです。

そうして家族を支えようとするわけです。

もちろん、これは一つの例で、「お父さんが不在」のケースでも、お兄ちゃんがお母さん役を、妹がお父さん役を、という場合だって考えられますし、お母さんがスーパーおかあちゃんとなって、父と母を完璧に兼務している場合もあるでしょう。
ケースバイケースですので、皆さんのケースに置き換えて考えて見られるといいかもしれません。

しかし、それぞれが違う役割を兼務するってすごく大変ですよね。慣れなかったり、合わなかったり、でも、家族のために、と頑張るわけですから、本当に素晴らしいことですし、人間的にもすごく成長するのです。

でも、一方では心理的にだいぶ負荷がかかることも少なくありません。
例えば「お兄ちゃん」や「妹」は、本来の役割に加えて「大人(父・母)」の役割を担っています。その側面では早く大人になれると言えるのですが、違う見方をすれば、十分に「子ども」をやっていないとも言えるんですね。

だから、実際に大人になった後に、その「子ども」の側面が出てきてしまうことも少なくないんです。それで、早くから自立した部分を持っている一方で、「自分はすごく子どもだ」とか「大人になりきれていない」と感じたり、それが更に強くなるとパートナーや自分の子どもを親代わりにして、子ども時代をやり直そうとする心理も出てきたりするのです。

また、このケースにおける「お母さん」もハードですよね。
本来の「女」を捨てて「男」になるわけですから、男性性がたくましく成長する一方で、女性性が傷つき、新しいパートナーシップに少なからぬ影響を与えてしまうでしょう。
逆に言えば、こうした環境にあるからこそ、より女性らしさに意識を向けることが大切と言えるのです。

とはいえ、お父さんの穴を家族3人が埋めようとすることそのものは家族の絆を強め、お互いをより大切にできるものですから、あながち、何が良くて、何が悪いかは一概には言い切れません。

さて、今回は4回シリーズにわたり、私たちの心のバランスについてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?
私なりに分かり易いと思い、3つのケースをお話させていただきました。もちろん、こうしたバランスの法則は皆さんのすぐ傍に必ずあるものですから、問題を読み解き、解決するために、また、自分自身の心のケアのために、ぜひ、参考にしていただけましたら幸いです。

(完)

関連する講座へのリンク集

110.バランスの法則〜パートナーシップの見えない繋がり〜
138.家族の5つの役割(1)〜家族を助けるために選ぶパターン〜
211.バランスの法則2〜ポジティブとネガティブの心理学〜

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