行き詰まりを脱する方法~自己否定を止める~

仕事のみならず、私達は生きていくうちに必ず何度かは行き詰まりを体験します。
そして、「どうしても上手くいかない」とか、「何をやっても上手くいきそうにない」と思い、まるで無限に続くトンネルの中から抜け出せそうにないと感じ、絶望して「どうせこんなもの」と現実を見ないふりをする事もあります。
行き詰まりは、その時は一見万策尽きて解決策が無いように感じるのですが、真実はそうではありません。
行き詰まりを打開しようとして私達がやっていることは、自分が過去に成功したやり方であったり、自分が守るべきものは守りながら何とかしようとしているやり方に過ぎないのです。
それらの方法で行き詰まりを解消できないからといって、「もうダメだ」と諦めてしまうのは早計です。行き詰まりの問題は、選択肢がないという問題ですが、選択肢の幅を狭めているのは自分が譲れないと考えている「問題」が大きく影響しているのです。

さて、この「問題」ですが、心理学では、「問題は自分の外側にあるのではなく、実は自分の内側にある」と考えます。大雑把に換言すれば、「問題と感じるから問題であり、問題と感じないならば、それは問題ではない」という事なのです。

カウンセリングでよくあるご相談の一つに「会社に行きたくない」というものがあります。人間関係や、仕事が面白くないなど人によりその理由は様々ですが、仕事や会社での人生が行き詰まってのご相談なのですね。
そんな時、私は基本的に3つの選択肢からどれを選ぶかを決めてもらうようにお話しします。
先ず1番目は、会社を辞めること。第2番目は、会社を休んでみることです。そして第3番目は、自分の感じ方を変えてみることです。「これだけ選択肢があるのですよ」とお伝えする訳です。
それに対して、大概の人は、会社を辞めることには生活の不安や仕事が長続きしないなどの自責の念から抵抗を示されます。そうですね、今の世の中景気も余り良くないので、会社を辞めたら仕事が無くて路頭に迷うのではないかと不安になるのは当たり前かも知れません。しかし、会社を本当に辞めるかどうかは別にして、会社を辞めることへの禁止を解除することにより、不思議なことに行き詰まり感は少し楽になるのです。

「選択」は、人間が持つ最大の力です。これを封じ込められたら(実は自分で封じ込めているのですが)、追い詰められた感じがしてとても苦しくなるのです。

では、私達の選択肢を狭めてしまうような「問題」とはどのようなものなのでしょうか?
その全ては怖れ、不安です。それを選択することにより生じると予想される何かに対する不安がその選択肢を禁止しているのです。
そしてその不安の根源は、実は自分をネガティブに扱っている自分自身の心です。
例えば、「私には価値がない」「私は失敗するに違いない」「私の本質は怠け者だ」「私は罰せられるような人間だ」「私は騙される人間だ」などです。
これは、今自分が感じられる顕在意識にあるかも知れませんし、あるいは感じる事ができない無意識にあるかも知れません。

私達は自分に対するネガティブな気持ちを持っていると、「そうではない」とその事を否定しようとする心を同時に持ちます。これは、私がネガティブに思っている通りの事が証明されると、傷口に塩を塗るような、とても酷い感情に陥って心のバランスを崩してしまうことを防ぐための心の仕組みです。
この「そうではない」と思いたい気持ちがあると、そうなる怖れがある事を選択させないように働きます。すなわち、選択肢を制限してしまうのです。その結果、行き詰まりを生んでしまうのです。

この「そうではない」と思いたい気持ちは「自分は○○に違いない」というネガティブな気持ち、言い換えると自己否定から出ているのですから、この自己否定を無くせば、行き詰まることは無くなる事になります。

自己否定を無くす、或いは緩める方法には様々な方法がありますが、最も簡単で効果的な方法の一つは、自己承認の癖をつけることです。
その為には、例えば、今日一日自分が頑張ったこと、自分が出来たこと、自分がやったこと、どんな些細なことでも結構ですので、自分を褒めることです。そしてそれを続ける事です。
最初は照れくさいかも知れません。こんな事で果たして効果があるの?と疑いの気持ちが顔を出すかも知れません。
しかし、それらはまた自己否定を継続するように仕向ける心の罠なのです。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。