「なんでこんなこともできないの?」とイライラしてしまうとき

お仕事をしていて、「なんで、このくらいのこともやらないんだろう」と周りの人にイライラしたことはありますか?
人それぞれにペースがあり、得意なこと不得意なこともあるのは分かる。
でも、周りの人の頑張っていない様子に「もっと頑張れ!」と叱咤したくなる。
責任感がある方ほど、こう感じやすいものかもしれません。

例えば、上司が部下の仕事ぶりに「もっとしっかりやってくれ」と不満に感じることがあるかもしれません。
また、周りができていないところを自分がフォローする状況であれば、何度も続くと自分ばかり仕事が増えているようで、イライラしてしまうこともあります。
さらには、周りの様子をみて、自分のモチベーションまで下がってしまうこともあるかもしれません。

相手にイライラすること自体が不快ですし、批判的な自分にも嫌気がさしてしまうでしょう。
できるなら不満は減らしていきたいですよね。

「相手の言動のせいでイライラする」というように、相手を主体にして考えると、不満感はふくらんでいきます。
ここで、「どうして私はここでイライラするのか?」というように、自分を主体にして考えていくと、違った見方ができたりします。

●できて当たり前の罠

「どうしてこれくらいできないのか」と感じるということは、「これができたほうがいい」と気づけるということです。
日頃からよく注意を払っている方、問題意識をもてる方ほど、業務上でのさまざまな改善点を見つけやすいです。それだけ仕事への意識が高く、向上心や努力できる資質は、長所といえます。

私たちは自分に求めるものを、相手にも求めてしまう傾向があります。
自分にできることだから、相手もできて当然だろうと発想してしまうのです。
例えば、当たり前のように努力できる人であれば、「自分と同じように、あなたも努力すべきだ」と感じます。
細やかな気配りが自然にできる人であれば、「これくらい、ふつう気づくだろう。なんで、気づけないの?」と感じやすいのです。

できて当たり前だという前提だと、できなかったときに不満を感じやすくなります。
「これくらいできて当然だ」と思っている分だけ、自分や周りのできないことに対して、本人のやる気や努力の問題だと感じてしまうのです。

まずは、今できていることをご自身の強みとして受け取っていきましょう。
そして、「私はとても頑張ってきてるんだな」と自分を労っていただきたいです。
特に、ふだんから頑張ることが当たり前になっている人は、無理や我慢を重ねていることに気づかなかったりします。
もう十分できているのに、自分を認められず、「たいしたことない」と過小評価してしまうこともあります。

そうすると、「私はこんなに大変なのに」「こんなに頑張ってるのに」と、自分では認められない部分を誰かにわかってもらいたい気持ちがうまれます。
「私の頑張りを認めてほしい」「大変さを理解してほしい」と言えない代わりに、相手に不満を感じているのかもしれません。

「できて当たり前」を「できることがすばらしい」に置き換えてみましょう。
あなた自身の強みや、すでにやってきていることの価値を受け取る機会かもしれません。

●できない自分を許せない

他人への批判は自分への批判でもあります。
「これくらいできなくちゃいけない」と厳しいハードルを課していると、「なんでそれくらいできないの」と責めたくなるものです。自分に対しても批判していたりしないでしょうか。

もしかしたら、「しっかりすべきだ」「もっと頑張らなきゃいけない」などと、自分に鞭を打っている部分があるかもしれません。
それほど、頑張れることはすばらしいことですが、頑張れないことが悪ではありません。

自分に「もっと頑張らなきゃいけない」と言い聞かせてしまう背景には、「甘やかしたら、自分はダメになってしまうのではないか」などの恐れが隠れていることが多いようです。
つまり、そのままの自分には能力がない、価値がないと感じていて、その不足感や無価値感を埋め合わせをするために、過剰に自分に厳しくなってしまうのです。
そうすると、仕事ができること・頑張ること=自分の価値だと感じやすくなります。
「仕事を頑張っているから(仕事ができているから)、自分は受け入れられるのだ」と感じるので、頑張ることが止められなくなってしまうのです。

ここでは、自分がすでにもっている魅力や価値など、そのままの自分にあるものを認めていくことが大切です。
特別な努力をしなくても、あなた自身がもっている持ち味をぜひ認めてあげてくださいね。
そして、あなたが無理をしなくても、すでに、その場所で受け入れられていること、周りの人から愛されていることを感じられると、「しっかりしなきゃ」を降ろしていけるようになります。

「なんで、このくらいのこともやらないんだろう」とイライラしてしまうとき、「ここで私がイライラするのはなぜだろう?」と振り返ってみましょう。
無理や我慢に気づいて、自分を休ませてあげることができるかもしれません。
自分ができていること、そのままの自分にある魅力や価値に気づけるかもしれません。
そうして自分に優しくなれた分だけ、周りへの批判もゆるんでいくでしょう。

この記事を書いたカウンセラー

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人間関係、自己嫌悪、家族関係、仕事などの相談を主に扱う。じっくりと話を聴きながら、そのままの自分でもっと楽に自由になれる道筋を一緒に見出していくサポートを行う。 お客さまの個性やペースを尊重し、いつでも味方でいることを大切にしており、「話していて安心できる」「心の深いところをわかってもらえた」と好評である。