尽くしすぎてしまう恋愛の心理〜無価値感の恋愛パターン〜

尽くして報われない恋愛を繰り返す心理的な理由と対策

相手に尽くしているのに、雑に扱われているとしたら。「何かしないと愛されない」という無価値感の恋愛パターンが影響しているのかもしれません。我慢・犠牲する、本音が言えない、素直に愛を受け取れないに心当たりがあるなら、自分を大切にする、自分の価値の再評価に取り組むことをお勧めします。

無価値感という感情があります。文字通りに「無価値を感じる」ことで、「自分には価値がない」と感じるものです。

言い換えれば、「ありのままの自分ではダメ」と感じることです。無価値感が強いと、「何かしないと愛されない」「役に立たないと必要とされない」という発想にもなっていきます。

今回は、無価値感から尽くしすぎてしまう恋愛になる心理を解説します。

◆尽くしすぎる理由

無価値感から「何かしないと愛されない」「役に立たないと愛されない」という思い込みがあると、「相手が喜ぶことをしなきゃ」「よく思われる振る舞いをしなきゃ」と考えて行動するでしょう。

心理学ではこれを補償行為と言います。

この状態では、「がんばらないと愛されない」という怖れが動機に行動します。

だから、しなくていいことまでしようとしたり、イヤなことをイヤと言えずにがまんしたり、無理することもあるでしょう。

逆を言えば、それだけ「愛されない」ことを怖れているわけです。

「何もしない私は愛されない」と怖れているから、必要以上に世話を焼く、尽くしすぎるといったこともしがちになるのです。

◆本音が言えない

無価値感のある人は、普段から「いいことをしよう」「役に立とう」とするがんばりやさんが多いです。

だから、周囲からの評価は高いことが多いです。

しかし、本人の自己評価は高くないようです。「いい人を演じているから評価される」と思い込み、「自分は偽善者」とすら思っていたりします。

そのため、「本当の私」を知られたら「好きになってもらえない」「嫌われてしまう」と怖れています。

どんどん本音が言えなくなってしまうのです。

◆愛を受け取れない

人は自分の価値を認めている分だけ、人からの好意や愛情を受け取れます。

逆に、自分の価値を認めていないと、人からの好意や愛情に対して、「申し訳ない」とか「そんなにしてもらえない」といった気持ちになり、受け取れなくなってしまいます。

「私には価値がない」と誤解していると、パートナーからプレゼントをされても、素直に喜べないでしょう。例えば、彼氏が誕生日プレゼントを用意してくれたとします。

「こんな高い物を申し訳ない」「同じだけのお返しなんてできない」と困ったりしませんか。

パートナーは「あなたに喜んでほしい」とプレゼントを用意したのに、「あなたを困らせて、喜んでもらえなかった」としたら、とても残念な気持ちになるでしょう。

自分の愛情を受け取ってもらえない寂しさを、パートナーに感じさせていることには鈍感になっているかもしれません。

◆与えるけれど受け取らない恋愛の結果

「何もしない私は愛されない」という怖れから、がんばって与えようと努力していると、付き合い初めのうちは、「気が利くな」と好意的に思われることも多いでしょう。

しかし、いつの間にか「お母さん(お父さん)みたい」に「してくれて当たり前」という関係になっていく場合があります。

「何をしても許される」「何をしても嫌われない」と、自分が雑に扱われることを相手にOKしてしまうこともあるようです。

自分は無理をしてでもがんばっている、けれども相手からの愛情は受け取ることができないと、やがて燃え尽きてしまったりもします。

車にガソリンを入れずにアクセルを踏み続けるようなもので、心がすり減って動けなくなってしまうでしょう。

◆自分の気持ちを大切にするところから

まずは、自分の気持ちに正直になってみましょう。

辛いなら「辛い」と、もうがんばれないなら「もうがんばれない」と、自分の気持ちを善悪抜きに「こう感じているんだ」と認めてみましょう。

そして、自分と全く同じ状況の人がいたら、どんな言葉をかけたいか考えてみてくださいね。

他人に対してなら、「もっとがんばらないとダメだよ」なんて厳しいことは言わないでしょう。

「よくがんばったね」「もう無理しなくていいよ」「辛い思いをしたね」と肯定し、労わる言葉をかけるのではないでしょうか。その言葉を、自分自身に言ってあげてくださいね。

◆「私には価値がない」という誤解をとく

過去に「ほめられた」ことを思い出してみましょう。

もし、これまで価値を認めてくれるような人が周囲にいなかったのなら、肯定的な発言をする人たちと接して、人から認めてもらう経験をしてみるのもいいでしょう。

あるいは、「私には価値がない」と誤解してしまった出来事について、大人の目線から捉え直しをしてみましょう。

例えば、子供がどんなに「役に立ちたい」と思っていても、子供のできることには限界があります。その結果「力不足」「役に立たない」などと誤解したのかもしれません。

当時を思い出して、子供なりに「がんばっていた」と再評価に取り組んでみましょう。

自分を大切に思う気持ちを持ち、「私は私でいていいんだ」と思えると、「何かしないと愛されない」という怖れや、愛が受け取れない辛さから解放されるでしょう。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。