血だらけの指が、見せてくれた世界

「どうしたの、その手!」
発達障がいの診断を受けている息子ですが、ある日、学校から帰ってくるとほとんどすべての指に絆創膏をつけていました。
そのあとすぐ、先生からお電話が。
「授業中、爪をかんだり、ささくれをむいたりして、血だらけになっていました。大人になると改善しにくいです。ばい菌が入ったりしますし、自傷行為でもありますから。学校ではよく見ていきますが、ご家庭でもよく見てあげて下さい」
と、ご連絡いただきました。

受話器を持ったまま、息子の絆創膏だらけの手を見つめて、しばらくぼうっとしてしまったことを覚えています。

■発達障がいとは

発達障がいとは、生まれつきの特性です。多くは生まれつきの脳の働き方に違いがあります。ただ、原因も症状も個人個人で様々です。周りの人、もしくは本人の「困り感」があることから、診断につながることが一般的です。大人になってから、会社などでの仕事や人間関係などのつまづきや生き辛さから、診断につながるケースもあります。

・息子のケース

人それぞれの特性や個性を持つ発達障がいですが、息子はとにかく待つことが苦手です。
待つこと、とくに退屈が、とにかく苦痛に感じるようです。走ったり、アスレチック系などの身体能力はかなり高いように見受けられます。しかし、退屈をやり過ごすすべは、息子の辞書にはあまりないようなのです。
発達障がいの特徴として、能力の凹凸があることがあげられます。大好きなこと、得意なことには、多大なる集中力を発揮します。しかし、苦手なこと、不得意なことに集中力の散漫さや欠如を指摘されることも多いかもしれません。私自身も、当てはまる数々です。

 

■なぜ、爪をかんでしまうのか?

爪をかむ原因は、人それぞれによって様々です。寂しさや愛情不足から爪を噛むケースもあるかもしれません。また、ストレスやイライラ、欲求不満やプレッシャーなどが原因の場合も多いかもしれません。
小学校にあがると、勉強が始まります。わからない問題を目の前に、隣を見るとほかのこどもたちは解けている。または、解けているようにみえる。でも、自分はできない。そういった劣等感や自己嫌悪、無価値感などもあるかもしれません。
じっと座って授業をうけなければなりません。やりたくないこと、苦手なこと、不得意なことに集中できないのかもしれません。でも、離席もできません。先生の目も光ります。
「地獄時間」
息子は待つ時間のことを、このように表現します。爪をかむことで、待つことをしのごうとしているのかもしれません。

・爪かみは、SOS

爪かみの原因は一つではないかもしれません。でも、はっきりしていることが一つだけあります。爪かみは、SOSだということです。なにか、訴えたいことがある。なにか感じていることがあるのだけれども、言葉にならない。そんな思いがあったのだと思います。
指には神経もたくさん通っているため、痛みも感じやすいものです。今回、息子は痛みを通して、なにかを伝えようとしてくれていました。

 

■一人で抱え込まないで

息子の爪かみというSOS。今回、改めて、学校の先生方、療育の先生方に大変お世話になりました。息子本人は明るくて、みんなを楽しませることが大好きで、甘え上手で、率先して何でもチャレンジするタイプなのですが、年に1~2回寝る前に
「おれってバカだから…」
と、大泣きしながら寝るのです。

正直、一緒に泣きたなるくらい胸が痛くなる思いがありました。そのことを、今回初めて先生方にお話することができました。

「そんな思いがあるなんて、知りませんでした」
口をそろえて話してくださるのです。

「フォローしますし、なにか思い当る出来事があったらお伝えするので、抱え込んでいる様子があったらいつでもご連絡ください」
と、先生方のあたたかさに、私も心に染み入りました。

・親御さんのSOSでもある

お子さんのSOS。実は、親御さんもなんらかの思いを一人で抱え込んでいることが少なくありません。でも、大人である私たちは、
「自分のことは、自分で解決しよう」
と、されるかと思います。それは、悪いことではありません。自分のことは自分でなんとかする。それも、とても大切なことだと思います。

でも、抱え込みすぎること、人に頼れないということは、どこかで周りの方々を信頼していない態度でもあるのかもしれません。私自身の態度も、どこか傲慢でもあったなと、振り返るのです。

お子さんが発してくれるSOS。でも、それはお子さん自身のためだけでもないのかもしれません。親御さんが抱え込んでいるSOSを、お子さんが発してくれているのかもしれません。

・「世界は、優しいよ」

今回、息子の爪かみを通して、周りの先生方に相談する機会が増えたことで、先生方が本当に真剣に思いをもって息子に関わってくださっていることを、改めて実感しました。

「よりよく、生きられますように」
「幸せで、元気に過ごせますように」
「一人で抱え込まずに、みんなで助け合いましょう」
そんなふうに、思って下さっていることを改めて知る機会となりました。

息子を通して、
「世界は、優しいよ」
と、見せてもらったのだと思います。

みなさまの何かのお役に立てることがあれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

来週は、小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。

[子育て応援]赤ちゃんの頃から、思春期の子、そしてそんな子どもたちに関わる親とのお話を6名の個性豊かな女性カウンセラーが、毎週金曜日にお届けしています。
この記事を書いたカウンセラー

About Author

発達障がい児の子育ての経験から、生き辛さの根っこにある未消化な思いや痛みに穏やかに寄り添い隣で支えることを大切にしており、 「話すことのすべてを大切に聴いてもらえる安心感」がある。 あらゆる人のなかにある豊かな才能・魅力に光をあてることで、生きる力を一緒に育てるカウンセラーである。