今を生きる

私たちは、過去の問題を引きずって今を生きている場合があります。

これらが、問題ではなく、純粋に、前に進むためのエネルギーになっていたり、本当の意味で気軽に笑い話にできていればそれはもはや問題ではないのですが、心のどこかに引っかかっているのであれば、それは“今”を生きている訳ではなくて、過去を生きていたり、未来にファンタジーを求めようとしているのに他ならないのではないかと思います。

本稿では、受け容れられない事柄を受け容れるプロセスについて、エリザベス・キューブラー・ロスの「死の受容5段階モデル」を例にお話しし、受け容れる事と許しについてお話をしています。

◎リクエストを頂きました◎
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今は結婚して20年以上経ち、実家から離れている生活をしているにもかかわらず、夫婦仲が悪く、経済的な面での不安定さも加わり、常に家庭内はゴタゴタばかりの中で育った私は実家が大嫌いです。
両親は自分のことで精一杯で私はいつも安心して暮らした記憶がなくて こんな育ち方をしたことを卑下しています。
私は大事にしてもらって育った人ではなく、汚れた人だと思えて そんなふうに思ってしまう自分をまたいやになってしまいます。
貧しく、家庭不和、精神的な虐待、私はそんなろくでもない家庭環境に育った汚れた人間です。
過去は変えられないからもうずっとこのままこのことに苦しみながら私は生きていくしかないのでしょうか。
つらいです。
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私たちは、過去の問題を引きずって今を生きている場合があります。
例えば、失恋の経験や、親との関係性、仕事での失敗経験、上手くいっていないと感じる人生全般、身体上の問題など。
これらが、問題ではなく、純粋に、前に進むためのエネルギーになっていたり、本当の意味で気軽に笑い話にできていればそれはもはや問題ではないのですが、心のどこかに引っかかっているのであれば、それは“今”を生きている訳ではなくて、過去を生きていたり、未来にファンタジーを求めようとしているのに他ならないのではないかと思います。

ここでいうファンタジーとは、ヴィジョンとは異なり、空想の世界で生きる、即ち“現実逃避”という心の防衛機序になります。現実に目を向ける事が辛く感じられ、苦しいと感じる時に、心の中のネガティブな何らかの要素(例えば、私には素敵な人が現れる事は無いという思い込み)がファンタジーを作り出すのです。

さて、では私たちが過去の問題を引きずって生きてしまうのはなぜでしょうか。
それは、受け容れたくないと感じている何か、受け容れられない何かが過去に存在するからです。
“受け容れる”という事を考える時に参考になるのが、看取りの心理学者と呼ばれているエリザベス・キューブラー・ロスの「死の受容5段階モデル」です。
彼女は、死に直面した患者の精神状態の変遷を研究し、死を受け容れるまでに5つの段階が存在すると提唱しました。

第1段階は、否認の段階です。
「私が死ぬなんて嘘でしょ」と否認しようとします。実際には心のどこかで「死」がやってくることを知っているのですが、認めたくない状態です。

第2段階は、怒りの段階です。
「死」が否定できない事を自覚すると。「どうして私が死ななければいけないの!」と周囲に怒りを向ける状態です。しかし、「私が死ななければならない理由」を見つけることなどできません。

第3の段階は、取引の段階です。
何とかして「死」から逃れようと、「いい人になりますから」など条件を付けて死を回避しようとします。実施の行動も「いい人」になる事が多くなります。

第4の段階は、諦めと抑鬱の段階です。
いくら取引をしても「死」を受け容れざるをえないという事が理解され、落ち込みます。

第5段階は、受容の段階です。
死を自然なものと受け容れられるようになり、心が平安になり、やがて死が訪れる事を受容する。

キューブラ・ロスの研究は、「死」についてのものなのですが、「死」を受け容れられないものと置き換えたときに私たちは同じような心の変遷を辿るのではないかと私は思っています。

リクエストをいただいた方は、親子関係(家庭の問題)ですが、親の事情から、愛されていないご自分を感じ、愛されないのは「私の問題」と「親の問題」と同時に責めておられる気がします。

責めている事柄こそが、受け容れられないと感じている事柄なのですね。

受け容れられないと感じている事を受け容れるには、見方を変える必要があります。
先ずは、自分を責めている部分を許す事、具体的に言えば「それは私の問題ではなかった」という事を心から認める事です。

あなたは、“汚れた人間”なのではなく、ただ、「もっと愛して欲しかった」「両親がとても好きだった」事を思い出され、受け容れられる事です。

次に、ご両親を責めている部分を許す事です。ご両親の心に余裕が無かったこと、あなたを苦しめようと思ってこの世に生を与えたわけではない事、更に言えば、ご両親も「私たちと同じ単なる人間」であることを認めてあげる事です。

ここは、凄く抵抗があるかもしれません。
でも、これを受け容れられれば、あなたの人生は過去から解放され、「今を生きる」事ができるようになります。物事の見方や考え方が大きくステップアップして、よりよい人生の一助になると思います。

誰かを許すことは、誰かのために行う事ではなく、実は、自分の人生をプラスにするためのものなのです。

(完)

 

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。