20年ぶりのコミュニケーション

パートナーに内緒ごとを作ることが大きな問題ではありませんか?

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

知り合いの夫婦から、私がカウンセラーであるということで、夫婦別々に相談を受けたことがあります。どちらからも、「パートナーには内緒にしてほしい」と言われたのですが、内容はともに夫婦のセックスに関するものでした。

奥さまからのご相談は、「最近、セックスの回数がものすごく減っていて、彼の様子がおかしい。外に女ができたんじゃないだろうか?」というものでした。

一方、ご主人からのご相談は、「40代半ばになり、セックスにだいぶ自信がなくなってきた」というものだったのです。

彼は、若いころはセックスなしでは生きられないようなタフな男性でした。奥さまもその彼に一生懸命ついていって、どんどんセックスを楽しめるようになっていたのです。

ところが、40代半ばにさしかかったころから、彼のほうが肉体的な衰えを感じるようになってきました。

そのため、奥さまを十分に満足させることができていないと感じるようになり、奥さまからの誘いを断ることも多くなったのです。

これが、夫婦それぞれの悩みの真実であったわけです。

しかしながら、ご主人がそんな悩みをもっているとは、奥さまのほうはつゆ知らず。それより、「あれだけセックス好きだった彼なのに、最近は求めてくるどころか、私から求めてもいやがられる始末」ということのほうが大問題になっていました。

そして、「私は彼から嫌われてしまったのだろうか。そういえば、最近、彼の態度がおかしい。これはきっと、外に女ができたんだ」という心配が生まれていたのです。

一方、彼には、奥さまから求められても、セックスをしていないという罪悪感がありました。

そのため、会社が終わってからも、飲みにいったり、無理やり残業を入れたりして、できるだけ家に帰ることを避けていました。

もちろん、奥さまはそうとは知りませんから、「女ができたから、帰りが遅くなったのでは?!」と考えたりしたわけです。

ご主人は、性的に弱ってきた自分と向き合うことから、ただ逃げていたわけなのですが、それが大きな誤解のモトになっていたのです。

これは夫婦で向き合ってもらうことがいちばん簡単な解決方法だと私は思いました。

そこで、双方に「パートナーに内緒ごとを作るということが、今回のいちばん大きな問題ではありませんか?」と言い、それぞれにパートナーと向き合うことを決断してもらったうえで、じつはどちらからも同じ相談を受けていたということをお話したのです。

そして、私を交え3人で話す機会をもち、おたがいに思っていることをすべて話してもらうことにしたのです。

じつは、セックスに関してのカウンセリングを通し、いちばん大事なことは、この「だれにも言えない」ことを二人で分かち合ってもらうことなのです。

私たちは思春期にセックスというものがあると知って以来、セックスとは、「してはいけないこと」とか「内緒にするべきヘンなこと」と感じており、夫婦といえどもなかなかオープンに会話できない場合がとても多いのです。

それゆえ、セックスをめぐっては、思い込みや偏見などがとても多く作られますし、このご夫婦のケースのように、大きな誤解を呼ぶこともよくあるのですね。

この話し合いでは、ご主人が、「じつは最近、体力的に衰えていて、きみより先に自分が終わってしまうことに、恥やコンプレックスを感じている」と、とてもつらそうに話されました。

それに対し、奥さまには「浮気されていたのではなかった」という安心感もあったのでしょう、「なによ、そんなことぐらい」と、あっけらかんとされていたことがとても対照的でした。

ご主人の中ではとても大きな問題が、奥さまの中では問題にすらならないことだったのです。ご主人にとって深いこだわりであったことが、奥さまにとってはまったくどうでもいいことだったのです。

そして、奥さまは、結婚して以来、たぶん初めてだったのだろうと思いますが、「あなたは私が感じてもいないところを、なんであんなに長時間、愛撫していたの?」などとおっしゃいました。

「え、おまえ、感じてなかったの?!」とご主人。このような会話を20年ぶりにすることができたのです。

セックスにおけるコミュニケーションは、すべてのコミュニケーションの中でいちばん難しいものともいえます。

だからこそ、これができるようになると、どんなコミュニケーションもできるカップルになれることが多いのです。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。