癒やしの呪文

私はあなたたちのよろこびです

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

彼女は毎日、怒りまくっています。

2人の子どもをもつ彼女ですが、3歳と1歳の子どもたちにはそれは手がかかり、育児のことだけで手がいっぱいです。

いつもイライラしていて、子どもたちに怒鳴り散らし、ご主人に対しても怒ってばかりいます。

すると、当然といいますか、上の子はあまり怒らないご主人のほうになつきますし、ご主人はご主人で、家にいると怒られるので、仕事を口実になかなか帰ってきません。

すると、ますます上の子やご主人に当たり散らすことが多くなってしまう‥‥というわけです。

「そんなにパパが好きなら、パパにごはんを作ってもらえばいい!」

「あなたはいいわよね。ものわかりのいい大人ばかりの仕事場でストレスフリーだもの」

ついついイヤミを言ってしまったりもするのですが、そんな毎日に疲れ果てた彼女は、この日、2人の子どもをご主人に預け、カウンセリングを受けにおみえになったわけです。

心理学では、不平不満の感情の下には、罪悪感という大きな感情が潜んでいるといわれます。

この罪悪感ですが、なにか悪いことをしてしまって、自分を責めているときに生じる感情だと思いがちですよね。

もちろんそれもありますが、じつは「自分はやるべきことをなに一つしていない」と自分を責めているときに生じることのほうが圧倒的に多いといわれているのです。

それでは、彼女の不平不満の下には、どのような罪悪感があるのでしょうか?

それを見ていったところ、やはり、「私は子どもや夫にひどくあたっている」ということよりも、「子どもや夫をやさしく愛することができない」と自分を責める感情が大きいことがわかりました。

この思いは、彼女にかぎらず、世の多くの子育て中のおかあさんがもっているものです。そんなおかあさんに、私はよくこんなふうに言います。

「では、あなたはほんとうは、やさしいおかあさんになりたいわけですよね?」

問題意識は、本来、自分がしたいこととの間に乖離があるところに生まれ、その乖離が大きいほど問題意識も大きくなるといわれます。

つまり、自分はやさしいおかあさんでいたいいにもかかわらず、ついつい怒ったり、ひどいことを言ったりしてしまっている‥‥。

自分のしたいことと実際にしていることにギャップがあることが、ハートブレイクやストレスをつくっているのです。

彼女は子どもたちやご主人に対して怒り狂っているわけですが、なぜそんなに怒り狂っているかというとこんなふうに思っているからなのです。

「私はこんなことをしたいわけじゃなくて、あなたたちをもっともっと愛したいのよ。なのに、あなたたちがそんなふうだから、私は愛せずに怒っているのよ」

彼女の怒りの本質は、「子どもと夫を愛せない」というところにあったわけです。

そして、なぜ愛せないのかというと、「怒ってばかりで、こんな最低最悪の母親、こんな最低最悪の妻を、あの子たちや夫が愛してくれるはずないじゃない」という思い込みがあるからです。

言い換えれば、彼女自身が子どもたちとご主人の愛を受け取れないという状況が、この怒りをつくっているのです。

彼女にこう言いました。

「不機嫌である、怒りん坊であるということは、愛の拒絶をしているという状態であり、人が近づくことを拒んでいる状態でもあります」

そして、こうお願いしてみたのです。

「きょうはあなたの魔法の呪文を授けますから、朝昼晩、毎日3回、唱えてみてください」

その呪文とは、鏡の中の自分の目を見つめ、子どもたちとご主人のことを思い浮かべながら、この3つの言葉をいうというものです。

「私はあなたたちのよろこびです」

「私はあなたたちの生き甲斐です」

「私はあなたたちを照らす太陽です」

なぜなら、それが本来の彼女だからです。

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。