思い込みとコミュニケーション

「一を聞いて十を知る」とは、物事の一部を聞いただけで全体が理解できるという賢明で理解力があることの例えです。
これで全てがうまくいくのであれば、とても素晴らしいことだと思いますが、実際にはなかなかうまくいきません。
一般的に、何かを誰かに伝えるという行動には、伝える方の思い込みがあり、受け取る側の思い込みがあるからです。

例えば誰かと「いつもの場所で会いましょう」と約束したとします。
私が思っている“いつもの場所”と相手が思っている“いつもの場所”が同じであれば問題なく会えるのですが、お互いが思っている“いつもの場所”が異なった場合には、会えないという問題が起こります。
では、何が問題だったのかというと、“いつもの場所”が私と相手に共通の認識だという思い込みが問題なのです。

前述の例は少し極端な話しかと思われるかもしれませんが、昔私が経験した実際の話で、当時は携帯電話もなく、結局その時には相手に会えずじまいで終わってしまいました。

日常生活はもとより、仕事においても思い込みによるミスコミュニケーションは結構な頻度で生じます。

例えば「15時までに書類を提出して報告すること」という記載が指示書にあったとします。
Aさんは「15時までに書類を提出する」「報告する」というように解釈したとします。
ところが、指示書を書いた人は「15時までに書類を提出して報告を終わらせる」と15時までの完了報告を求めていたとします。
Aさんが15時10分に報告したとすると、「指示書通りにしていない」と指示書を書いた人に叱られるわけです。

これは、どちらが正しいとか間違っているかの問題ではなく、ミスコミュニケーションに原因があるわけです。
叱られたAさんは理不尽に感じるでしょうし、指示書を書いた人は、Aさんは仕事のルールを守らないという先入観を持つかもしれません。

このケースの場合、そもそも2つの行動を1つの時間で区切ったことが問題で、正確な指示書の書き方は、「書類を提出して15時までに完了報告を終わらせる」と書けば2つの行動の2つ目の行動の締め切り時間が規定されるので、Aさんも報告を15時までにしていたはずです。
指示書を書いた人も、Aさんもそれぞれが思い込んだ結果なのですね。

指示を行う側の人間は、できるだけ解釈の幅が少なくなるように指示を出し、指示を受ける側は確認するという行動がミスコミュニケーションを少なくする方法です。

しかし、ミスコミュニケーションを完全に無くすことは難しいことですから、問題が生じたときにはそこに何らかの理由があると考え、叱るのではなく、先ずは相手から事情を聴くことで指示書上で不足したたコミュニケーションを補うことが大切です。

私たちが思い込みをする原因は、ミスコミュニケーションのみではありません。

自分が思う常識がみんなの常識だと考えていること、「こうに違いない」「こうあるべきだ」という固定観念、自分のその時の気分や心的状況を反映する投影、過去の成功体験や失敗体験、正常性バイアス、心的ブロック(そう思いたくないという気持ち)など様々な原因があります。

これらの原因は一朝一夕にはなくならないかもしれませんが、「自分は思い込みをしやすい」と気がついたときには、「なんでだろう?」と自分自身に問いかけてみてください。
その原因はほとんどの場合、あなたの中にある何らかの「怖れ」に根差しています。

そしてその原因がわかったら、自分の感情や心のパターンから一度離れて、客観的に(俯瞰的に)物事を捉え直してみる練習をしてみましょう。
「怖れていることは真実か?」と考えてみたり、「信頼するする〇〇さんだったらどう考えるだろう」など第三者を通して客観視してみるなど、そのやり方は先ずは自己流で結構です。

思い込みは仕事や人間関係、ひいては人生にネガティブな影響を与えます。
思い込みに気が付いたら、ぜひ、思い込みを少なくする努力をされることをお勧めします。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。