我慢でない折り合いのつけ方

子どもの頃、お砂場で遊んでいて、お友だちの持っていたスコップが欲しいと思ったら、どうしていたでしょう。

「貸ーしーてー」

って言えるようになる前には、そのまま持ってきてしまったり、取り合いっこになったり、結局貸してもらえなかったりといろいろあったはずですよね。
苦労したはずです。

でも、「貸して」って言えたり、レベルアップして「後で貸してね」って言えたりすると、だんだんと悲しい思いはしなくなってきて、スコップをスムーズに借りられる打率が上がります。

スコップ欲しい → スコップが手に入る

要望に結果が伴えばいいのですが、あの手この手を使っても、手に入らないこともありますよね。
大きな声で泣いても、転がって手足をバタバタしても、手に入らないとか、叶わないことが、この世界にはあるんだなと体験していきます。

子どもなりに、気持ちに折り合いをつける方法を学んでいきます。

スコップは借りられなかったけど、カップは手に入ったから、それで砂を掬おう。
園庭で遊んでいた子が誘ってくれたから、おにごっこしよう。
泣いていたら、お友だちが優しくしてくれたから、もう大丈夫。

これらは子どもなりの方法ですが、実は、大人になってからも、同じような方法で、私たちは、叶わなかったものや、悲しかったり悔しかったりという気持ちに折り合いをつけます。

大人になるにつれ、叶うことは増えますが、叶わないことも、また増えていきますよね。

大人は、人前では、穏やかに冷静にしていたいと思うものです。
人目も気になります。
恥ずかしいという思いも出てきますから、叶わないことがあっても、

「ま、しかたないか」

って思ったりします。
そして、だんだんと、そうするのが上手になっていきます。

大人になってからの気持ちの折り合いは、実は、ついていないことが多いのです。
折り合いをつけているのではなくて、そういうものよねって諦めているのです。

叶わない思いがたくさんあったから、もうこれ以上、悲しんだり、悔しがったりしたくないって思うからです。
平気よって。

あまり、望まなくなっていきます。
欲しいって言わなくなるんです。

だって、叶わないでしょう?って。

やがて、欲しいものや、好きなものが、よくわからなくなってしまいます。
人生が彩りを失って、楽しさや豊かさを感じることも、心が堅くなってきて動かないせいでできなくなってきます。

こんなふうになっている時、私は私との折り合いではなく、私と社会との折り合いにばかり、エネルギーを使っていたりします。

他者との折り合いでは、我慢を強いられることが少なくありません。
妥協したり、譲ったりすることが必ず出てきます。

ストレスですよね。
終わりのない悪循環。
いつまでも、諦めなくてはいけなくなってしまいます。

人生は一度きりで、さらに年々加速しています。
何もかもが時間短縮され、情報も流行のサイクルも速くなっています。
物理的な距離も、情報の行き来にはなんの障害にもならない時代です。

まずは、自分とつながることが必須になりました。
いろんな意見や、いろんなやり方、価値観、世界観があるけれど、

「私は、どう思っているのか」

いいとかわるいとか
好きとか嫌いとか
AなのかBなのか

「どっちでもいいわ」
「どうでもいいわ」

と済ませていた部分につながることで、ご自身が何を好きと言っているのか、嫌だと言っているのかを汲んであげることができます。

要望が叶うことが一番嬉しいことですが、叶わなかったけど、気持ちを汲んでもらったり、受け止めてもらったりすることで、心は、傷つきすぎたり、凹みすぎたり、次へのトライを遅らせたりするのを避けることができます。

私なりの見解を、私が汲んだり、認め受けとめることは、とても大切なんですね。

でも、気持ちの折り合いをつけようにも、まずは、自分の気持ちがわからなければできません。
いつのまにかやらなくなってしまったかもしれませんが、まずは、ご自分としっかりつながること、気持ちを理解し、汲むことが、再び楽しさや豊かさを感じる第一歩。

こんなふうに言うと、え〜って言われるかもしれませんが、ちゃんと残念がることや、ちゃんと悲しがることは、実はとてもいいことなんです。

私たちがしんどくなるのは、抑圧し、消化しきれていない感情が、大きくなってしまっている時が多いです。
辛い気持ちを感じたくないから、我慢して、感じないようにする。結果、溜め込んでしまうんですね。

「ちゃんと悲しがる、なんて辛い!」

と思うかもしれませんが、その時は辛くても、それで終わり。溜め込まずに済みます。
心の中は、すっきり。

折り合いを付ける時は、少々理屈っぽくなるものです。
理屈や理論が、助けになることは大いにあります。
言葉が付くと、私たちは安心するのです。

でも、感情は、思考とは別なので、理屈が通らないこともあります。
理屈なんて聞きたくないことも。
思考で折り合いがつかなくて、腹が立ってきて怒りたくなったり、悲しくて涙が出たりしたら、させてあげてください。

感情を消化させるグッドタイミングです。
ひとりでじっくりもよし、信頼出来る誰かと一緒もよし、カウンセラーとでもよいと思いますよ。

折り合いは、まずは自分とつけること。
そのためには、自分とつながり、自分の気持ちを理解し、汲むこと。
その際、腹が立ったり、悲しくなったら、ちゃんと自分に感じさせてあげること。

自分のご機嫌を取ることって、そういうことかなと思います。
やみくもに我慢することとは、ちがうんです。

そして、ひとりでしんどい時は、誰かに助けてもらっていいんです。

「出来ないから手伝って」
「しんどいから助けて」

これを言えるのも、がんばっているあなたに相応しいやり方です。
自分のできないを受け入れることのできる大人のやり方。

さ、気持ち良く生きていくために。
ご参考になれば幸いです。

お読みいただきありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

「自分らしく自分の人生を生きることに、もっとこだわってもいい。好きなことをもっとたくさんして、もっと幸せになっていい。」 そんな想いから恋愛・夫婦関係などのパートナーシッップを始め、職場、ママ友などの人間関係、子育てに関する問題など、経験に基づいたカウンセリングを提供している。