たのみごと

怒りという感情は助けを求める声

こんにちは 平です。

以前 結婚3年目の男性のカウンセリングをしたことがあります。

ご相談は、結婚後すぐから不安神経症のような状態になってしまった奥さまのことでした。

奥さまはお嬢様育ち。大切に育てられた彼女は心も素直で、みんなから愛され、かわいがられるタイプの女性です。

そして、学生時代につきあいはじめた彼から、卒業してすぐにプロポーズされ、結婚することになったのでした。

しかし、おかあさんが家事も育児も完ぺきにこなすタイプなので、結婚するまで掃除・洗濯・炊事などはほとんど経験したことがありませんでした。

結婚してからは専業主婦になったので、家事がすべて苦手というわけにもいかず、ナーバスな状態が続いていました。

なにをしてもうまくできず、自分がいつもおかあさんから与えられていたものと比べては、自分にゲンメツする日が続いたのです。

そして、「こんな自分はいつか彼にあきれられ、捨てられてしまうだろう」という“見捨てられ不安”に苛まれ、それが彼女の不調のいちばんの要因になっていました。

そんな彼女を見たおかあさんから、「子どもができれば、不安は消えるわよ」と提案され、子どもを作りました。

が、今度は育児もうまくできず、不安が付け加わっただけで、ますます不安定な精神状態になってしまったのです。

そして、最初はふさぎ込んでいたのですが、そこからある程度回復してくると、彼女はおかあさんとご主人に怒りをぶつけるようになりはじめました。

ご相談におみえになったご主人は、その怒りを真正面から受け止めていました。

「たしかに、自分にも至らないところがあった」と、奥さまの理不尽な怒りですら自分のせいだと考えるような人だったのです。

そんなお話を聞き、私は心理学的に見た奥さまの状況を伝えるとともに、奥さまがほんとうに言いたいことの通訳をご主人にしたのです。

一つは、自分をあまりに責めているときは、だれかを責めているときだけが、自分を責めなくてよい時間になるということ。

それが、奥さまの怒りの理由です。

もう一つは、いちばん甘えられる相手に、その怒りは向かうということ。

さらに、怒りという感情は助けを求める声だということ。

「愛してほしい」、「わかってほしい」、「助けてほしい」が上手に言えないとき、怒りが生まれ、感情的になるということをお話しました。

そのすべてが彼にとっては目からウロコだったようなのですが、それよりももっと大事なことがもう一つありました。

それは、彼が自分の感情を抑圧するタイプで、奥さまのことにしても、がまんしてしまうということです。

奥さまの目から見て、「こんなに彼をがまんさせている自分は最低」となるわけで、その彼の生き方を変えることも彼の課題となったのです。

彼の生い立ちを聞いてみると、小学校4年生のときにおとうさんが交通事故で亡くなったとのこと。

おかあさんに心配をかけないようにと、ほんとうにいろいろなことをがまんして育ってきたようでした。

つまり、「したい」、「欲しい」という言葉を、ほとんど口にしない子どもだったのです。

そして、「オレさえがまんすれば」と生きてきた、ほんとうによい人だったわけです。

しかしながら、奥さまからすると、いったいどうしたら彼を喜ばせることができるのかがまったくわかりません。

その結果、「こんな私じゃ、彼を喜ばせられない」といつも思っていて、それもまた結婚生活や子育てのプレッシャーになっていたようでした。

そこで提案したのが、小さなことでもいいから、ご主人が奥さまに「こうしてほしい」と頼みごとをするということです。

たったこれだけのことで、奥さまは自分がご主人の喜びになれることを知りました。そうしてこの夫婦は救われることとなったのです。

では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。