人を操りたい心理~コントロールの心理学~

欲求から僕達は意識的・無意識的に人や状況をコントロールしたいと思います。そんな時の対処方法のレクチャーです。

誰もが自分の思い通りになったらいいと思うものです。
恋愛でも仕事でも対人関係でも、そして、自分自身の感情、性格も。

でも、なかなか思い通りに行くなんてことは少ないから人は悩み、苦しむのかもしれません。
昔僕がそんなしんどい状態にあったときに、ある友人が教えてくれました。
「欲があるから苦しいんだ」と。
妙にその言葉が胸に響いたのを今も覚えています。

そんな欲求から僕達は意識的・無意識的に人や状況をコントロールしたいと思います。
彼氏を思い通りの人にしたい、仕事が思い通りに行けばお金持ちになれるのに、と。
場合によっては「あいつさえ、いなければもっと楽な人生を送れるのに」と思ってしまう場合だって存在するでしょう。

多くの人は思い通りにならない状況にイライラし、やがては誰かのせいにしたり、その人を攻撃したりします。
そして自分の思い通りになるように要求を始めるようになります。
また、怒りや悲しみの感情を感じたくないと思った分だけ、自分のそんな感情を抑圧するようになります。

これらの行動を心理学的に“コントロール”と呼んでいます。
このコントロールは僕達皆が持っているといってもいい心のパターンです。

今日はそんな僕達の心に潜む“闇”に少しだけアプローチしてみましょう。
このコントロールを手放していくことで、あなた自身がその呪縛から解き放たれて、楽に毎日を過ごすことができるようになります。

そんな日を目指して・・・。

コントロールの色々

コントロールは基本的には自分自身の欲求が作り出すものですが、それが顕在化するパターンは色々なものに分類できます。

権威によるコントロール
上司の立場を使って「上司の命令は絶対だ。だから、私の言うとおりに行動しなさい」という態度です。
これは「親」「先生」など、一般的に上の立場の者が使う方法です。
同様に「私はお客よ」という主張によって、店員さんを困らせているお客さんも同じといえますね。

カウンセラーもそういう立場で見られることが多いです。
ですから、カウンセリングをする際には僕自身がもっとも注意しているポイントの一つですし、カウンセリング講座などでも必ず話題にしている点でもありますね。

力によるコントロール
「権威」も「力」ですから、先ほどのものと同じですけど、ここでは肉体的な力ということで敢えて別にしてみました。
例えば、暴力を使って相手を思い通りに動かそうとする行動です。
言うことを利かない子どもを殴って思い通りにしようとするところもあれば、力づくで女性をものにしようとするのもこれにあたります。

正当化によるコントロール
自分の正しさを主張することによって、相手を思い通りに動かそうとする行動です。
例えば、浮気をしてる彼に向かって「あなたが悪いんだから、その行動を改めなさい」という態度です。
あるいは「自分は一生懸命やっている。

でも、うまいこと行かないとすれば、お前が悪いからだ。
何とかしろ」というのもその一つ。

恐れを使うコントロール
これはいわゆる「脅し」というものですね。
相手の恐怖心を煽って思うとおりに動かそうとするものです。
「~しなければ、傷つけるぞ」という態度です。
子育て中の「いい子にしてなきゃ、怖いおじさんのところに連れてっちゃうよ」というのもこれです。

罪悪感を突くコントロール
上の正当化によるものと少し似ていますが、こちらは相手の罪悪感をストレートに突っつくものです。
「あなた、散々私を傷つけたでしょ?だったら、今度はきちんと面倒見てよね」とか「あなた付き合いはじめた頃は『○○してあげる』って言ってたじゃない。
やっぱり口先だけなのね」とか。

恩を仇で返すコントロール
相手への恩や情けを突ついて自分の思い通りにさせようとする行動です。
例えば「お前に、この前は散々助けてやったよなあ?今度はお前が俺を助けろよ」とか「いつも私がお金出しているんだから、今度はあなたが出してよ」とか。

このように色々なパターンがあるわけですが、読んでるだけで気分が悪くなった方もいらっしゃるかもしれませんね。
もしそうならば、あなたの心の中にはコントロールに関する何らかの痛みが癒しを待っているのかもしれません。

コントロールが招く悲哀

あなたも誰かにそんなコントロールを受けたことがあろうかと思います。
どんな気分だったでしょうか?
嬉しいと思う人。おそらく誰もいません。

逆に悲しくなったり、怒りを感じた人がほとんどかと思います。
それでも渋々それに従ってきたとすれば、心の中にはその相手への蓄積された怒りや憎しみが残っているかもしれません。
だから、コントロールをしようとしてしまうと相手との間に感情的な壁ができてしまいます。

そして、結果的にその人とはどんどん距離が出来てしまうでしょう。
ところが、このコントロールをしてしまうパターンを持っていると、この壁を無意識的に感じるので、更なる強いコントロールに出てしまいます。
そして、ますます相手との間に壁を作ってしまう悪循環を作り出してしまいます。

例えば、最初は口で「おい、~してくれ」って普通の声で言ってたのが、だんだんエスカレートして「早く~しろよ!」と大きな声になり、やがては殴りつけてでもその通りにさせようとします。
これが慢性化すると最初の「~してくれ」ってのも無くなって、いきなり暴力と共に要求をぶつけるようになります。
DV(ドメスティック・バイオレンス)のきっかけの一つはこんなところにあります。

また、正当化や罪悪感を使ったコントロールをしてしまうと、徐々にパートナーとのコミュニケーションがコントロールのみになっていってしまいます。

最初はかわいく「どうして~してくれないの?して欲しいな」と言ってたものが、だんだん「どうして~してくれないのよ」になり、「どうせ、あなたはいつもそうよね」に発展してしまいます。
そうすると彼氏の中では「かわいい女」が「重たい女」に変わってしまいますから、ますます彼からは冷たい態度しか引き出せなくもなってしまうでしょうし、お互いにその不快な感情からケンカばかりが起こるようにもなってしまいます。

それに、もしコントロールした通りに相手が動いてくれたとしたらどんな気分でしょう?
全然嬉しくありません。
“当然”と感じてしまうか、“言わなきゃやってくれないのね”という気持ちになってしまうかが多いために、相手への感謝は生まれにくい環境を作ってしまいます。
もちろん、従う相手も“犠牲”や“補償行為”ばかりで苦しくなり、あなたから遠ざかろうとするでしょう。

逆に自分の思う通りに相手が動くとしたら、だんだんその関係に退屈してしまいます。
思い通りにしたいと思う反面、天の邪鬼な僕達は、思い通りになってばかりいるとやがてはつまんなくなってしまう、なんて一面も持っているようです。

コントロールを手放すには・・・。

コントロールしてしまう裏には、自分自身の欲求があります。
その欲求と向き合っていくことが、コントロールを手放して行く一番の方法です。
「欲求の心理学」でもお話しましたが、欲求なんて人間ならば必ず存在する気持ちです。
だから、欲求そのものを無くそうというのは難しい話ですから、それと上手に付き合う方法を学んで行くことがが一番大切ですね。

シンプルな方法としては「して欲しいことをしてあげる」。
よく聞く言葉ながらとっても難しい行動です。
でも、これは自分自身の与える姿勢になりますから、欲求を消化するにはとってもいい方法です。

また、誰にでも欲求があるとすれば、誰にでも少なからずコントロールしてしまう可能性があるということです。
だから、“コントロールしてしまうことが自分にもあるんだ”てことにに気付くこともとても大切なことだと思います。

“気付くこと”で僕達は謙虚になることができます。
謙虚な気持ちでいるときに、誰かや自分をコントロールしたいという気持ちにはなれないものですからね。

だから、時々あなたのパートナーや家族などに対して「私は今この人を思い通りに動かそうとしていないだろうか?」ってチェックしてみましょう。
これを習慣付けるだけで、あなたの対人関係は大きく変化していくことになります。

その結果「君って人当たりもいいし、僕のことを尊重してくれる人だよね」なんて評価を頂けるようになるかもしれません。
そして、そんな言葉をもらう頃には、あなた自身、人との関係を今よりもずっと楽に進められるようになっているでしょう。

もう一歩深いところへ

ただ、同じ欲求を感じていても、ある人は上手におねだりしたり、素直に頼むことができますね。
何が違うのでしょう?
それは自分自身の無価値感や罪悪感による「素直に頼んでもやってはくれないだろう」という感情ではないでしょうか。

素直に言ってやってくれるならば、そんな力づくな方法は使わないですよね。
具体的には、無価値感があるとすれば「私みたいなちっぽけな人の言うことなんて聞いてもらえない」という気持ちになります。
一方、罪悪感があるとすれば「私は悪い人だから、そのままでは人に相手にしてもらえない」という気持ちが出てくるでしょう。

そんな部分が根っこにあるのであれば、自分のそのパターンに気付き、癒していくことでコントロールも手放せるようになります。

コントロールされてるな、と感じたとき

基本的な方法は「その手には乗らないよ」という態度がお勧めです。
そして、そのためには相手と向き合う必要があります。
それに従ったとしても、更なる要求を突きつけられるだけですし、向き合わずに逃げていても追っかけられるのがオチですから。

ただ、コントロールされる側にも何らかの問題を抱えていることがありますので、謙虚に自分の問題として向き合って行きたいものです。
例えば「いつも彼の言う通りにしてしまう」とすれば、それはあなたの自信の無さや無価値感も問題ですね。

ところで、ここで相手がしているように自分の正当性を主張すると、今度は自分が相手をコントロールするようになってしまいますから、本末転倒になっちゃいます。
ご注意を。

ですから、まずは自分が地に足を付けて、その人と向き合って行けるようになることを最初の目標にしてみてください。
とは言っても、家族だったり、近い関係であればあるほどそれは難しいし、また、その手に乗らないために外傷を負ってしまうこともありますから、あくまで基本形と捉えてくださいね。

カウンセリングの現場でも本当にケースバイケースです。

最後に・・・

自分の感情をコントロールしたいって僕達はよく思います。
怒りや寂しさ、悲しみ、不安、恐れなど、イヤな感情は味わいたくないから、それを感じないようにコントロールしたくなります。
でも、感情をコントロールすることはとっても難しいことです。

感情は天気のようなもの。
晴れの日もあれば、嵐の日もあります。
感情をコントロールして、いい感情だけ味わいたいというのは、まるで1年中晴れであって欲しいってことと同じなのかもしれません。
実際にそうなってしまったらどうなるでしょう?
あなたは飲み水にも困るようになりますね。

雨が降れば傘を差します。
嵐がくれば家でじっとしていたりもします。
例えば、バーベキューをしようと計画してたら当日は雨でした。
がっかりはするけど、その代わり室内で楽しめることを探すことができます。
そうして僕達は天気と上手に付き合ってます。

それと同じでイヤな気持ちになったとしても、その気持ちと上手に付き合う方法もありますね。
誰かに話を聞いてもらうことだったり、気分転換することだったり。
イヤな気持ちにならないように自分をコントロールするよりも、イヤな気持ちになったときにどうするか?を準備しておく方がいいのではないでしょうか?

この記事を書いたカウンセラー

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