魔法の手

右腕を骨折してから5ヶ月が経ちました。
前回のコラムで人が持つ回復力ってすごい!
ということを書いたのですが、その反対に使わないと本当に固まってしまう(衰える?)ということも実感しています。

私は骨折した翌週から週に一度リハビリに通っているのですが、そのおかげもあり順調に回復し、おおよその日常生活は出来るようになってきました。

病院内のリハビリテーション課なので、そこでリハビリを受けるのは入院中の高齢の患者さんが多く、私のように外から来る人はほとんどいません。

母が大腿骨骨折で手術後にリハビリを受けていたので、リハビリに励む高齢の患者さんたちを見ながら、母もこうしてリハビリに励んでいのかと思うとよく頑張ったんだなと思う反面、元気に歩ける私はなんとなく居心地の悪さを感じていました。
なので、最初はこの部屋に入るのが気が重かったんですよね。
(私は)元気でごめんね、って感じていました。

多くの人は立つための訓練や手を動かすためのトレーニングというように、懸命にリハビリを頑張っているわけです。理学療法士さんも20人以上はいて、患者さんへ熱心に指導をしています。

だけど、私は腕がまだ動かせないというくらいで、リハビリも自分にとっては痛いものでも、無理して頑張るというものでもないのですから、ちょっぴり申し訳ない気持ちでした。

そんな私を担当してくれている理学療法士のSさんは、まだ3年目と言う25歳の理学療法士さん。 
ものおじはしないけれど謙虚で、丁寧で、仕事熱心なさわやか好青年です。
実は、最初は若い人で経験も少ないだろうから頼りなくないのかしら・・と疑っていたのですが、堂々としていて、仕事の技術としてもしっかりしているようで、今ではとても安心していられます。

リハビリでは、理学療法士のSさんが腕の可動域をチェックしつつ、動かしづらい筋肉をほぐしてくれるのですが、Sさんが触る前と後では、全然感覚が違うのです。

例えば、腕を上げるという動作をする時に、痛みはないけどここに突っ張るような違和感があると伝えると、ちょこちょこっとっとSさんがそこを触った後に同じ動作をすると、動かしやすくなるんです。
マッサージでほぐしたというよりは、本当に軽く触った、手を置いて軽くなでた、くらいなのに、「えっ! どんな魔法使ったんですか??」と言いたくなるくらい変わるんです。
もう何度このセリフは言ったことでしょう。(これを言うとSさんは少し照れたように笑ってます。)

突っ張る箇所をほぐすときもあれば、全然別のところを触っている時もあり、最初は「何をチェックしてるんだろう」くらいに思ってました。 
で、「これでどうですか?」と聞かれて、腕を動かすと明らかに違う。
動かしやすくなってることにビックリし、真剣に、魔法の手、魔法使いだ!くらいに感激していました。

通うたびに少しずつ出来ることが増えていくのと、Sさんの雰囲気や優しい対応で、気が重かったはずのリハビリ室に入るのも、だんだん楽しみになってきました。

Sさんとのリハビリをしながら2ヶ月くらい経った頃、ふと思い出したことがありました。
一緒にリハビリをしていると言ってもトレーニングという感じではなく、ここが違和感、ここが突っ張るとか伝えながら、そこをマッサージをしてもらっているようなものなのですが、リハビリ中に感じるこの感覚がどこか懐かしいと思っていたその理由がわかったのです。

Sさんは、私がまだ20代の頃、社交ダンスを習っていた先生に似ていることに気づいたのです。
そう思うと、声も話し方も似ているし、顔や雰囲気も似ています。 
その先生は教え方も上手く、私が出来ないことは何度でも手を変え品を変え、出来るようになることを考えてくれました。
だから、注意されても、落ち込むよりはなぜか楽しいくらいでした。
レッスンの時間は心地よく、とっても楽しみな時間だったのです。

Sさんとその当時の先生が年齢も同じ25歳だと思うと、その頃の感覚がいっぱい出てきました。
好きなことに夢中になっていて、ダンスをしていると嬉しい、幸せ、って思っていた感じです。
ダンスが好き過ぎて、一人で英国のブラックプールまで世界一を決める大会(Shall We Danceでもその場所は映ってました)を見に行ったなあ、とかその先生とのレッスンでワクワクしていた気持ちを思い出しました。

今のこのリハビリの時間もちょうどそんな感じであることに気づき、腑に落ちた瞬間でした。
その後、Sさんとのリハビリがより楽しみになったのは言うまでもありません。

ただね、未だに右手を後ろに回すのは厳しい・・のです。
それをもう少し出来るよう、今は頑張っています。
以前よりは少しトレーニング的になり、家でも出来る課題を出されるようになりました。 
リハビリも年内で終了となるので、Sさんとの時間を楽しみながら、今よりもあと少し動かせるようにひとつひとつトレーニングを積み重ねていこうと思います。

この記事を書いたカウンセラー

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自己否定、自己嫌悪、疎外感、自己肯定を得意とする。「その方の心に寄り添い、一番の味方でいること(安心感)」をモットーに、わかりやすい言葉で恋愛問題や対人・自己との関係を紐解き、改善・生き易さへと導いている。  東南アジア2カ国での生活経験もあり、国や文化の違いについても造詣が深い。