年下上司の葛藤(1)~年上部下へのクレーム対応~

昨今ではベンチャー企業のみならず、年功序列が崩されている大企業でも「年下上司」「年上部下」という存在は少なくないようです。実際、実年齢に関係なく役職ポストやマネージメント業務に就く人が出てきています。しかし、現場では仕事の経験年数や実年齢を気にする人も多く、職場での人間関係に影響を及ぼしていることもまた事実としてあります。

そもそも、役職やマネージメントという仕事は役割の一環であって、プレイヤーであるスタッフや社員なども役割として考えると上下の関係ではなく、チーム構成であることが理解できます。若くてもマネージメントが得意な人もいれば、年齢を重ねていてもプレイヤーの方が力を発揮できる人もいます。いわば、適材適所で働ける仕組みの方が皆が仕事の効率を上げることができるわけです。

そうはいっても「年下上司」「年上部下」といった言葉があるように、実年齢との立場に葛藤する人も少なくありません。今回は「年下上司」の立場から、年上部下へのクレームがあった場合、どのように対応するのが望ましいのかを考えてみます。

●年上部下がクレームを受け入れられない

まず前提として、誰かから注意を受けることは年齢関係なく「嫌なこと」として受け止められやすいです。成長意欲の高い人やどんな逆風が吹いていても物事をポジティブに進められるような人以外、往々にしてクレームを受けることは気分の良いものではないというのは想像がつくかと思います。
そして、そのクレームを「年下」から指摘されたとしたら「さらに気分が悪い」ことにもなりかねません。

クレームを真摯に受け入れられない年上部下がいたとしたら「なんで私より年上なのに理解できないの!?」と怒りたくなる気持ちにもなるでしょう。
しかし、ここで何も考えずにストレートに怒りの感情まかせに年上部下へ接してしまうと、相手と競争する立場へいとも簡単にハマってしまいます。

まずは、こんなクレームがあったけれども、どうしてそういう言動になったのかを部下にインタビューして確認することが大切です。

●年下上司が年上部下を指導する

クレームを受けた年上部下の知識や技術が不足している場合、指導を受け入れてもらいやすいように別の同僚や年上の先輩となる立場の人の指導役をお願いするのも一つの方法かと思います。
このように人との相性(マッチング)を考えるのもマネージメントの一つです。

また、年下上司が気をつかってしまい年上部下へあまり指導しないで済ませてしまう場合もあるかもしれません。
しかしそれは問題を先延ばしにしてしまうだけであって、また同じようなクレームが繰り返されたり、場合によってはさらに大きな問題を勃発させてしまうことになったりする危険性もあります。
大きな問題になってしまう前に、やはりクレームはきちんと振り返り改善していくことが必要になります。

すでに信頼を得て良好な関係性である年上部下の場合は、丁重に指導すれば問題ないですし、むしろ厳しいこともちゃんと伝えてくれる年下上司としてさらに信頼を深められるでしょう。

ところが良好とはいいがたい関係性である年上部下の場合には、できるかぎり円滑にしたいところかもしれません。ただし、ここではわざと嫌われ役を買って出てでも「上司として指導」していくことが大切です。

●年齢にかかわらず人として存在価値を認める

指導を受けた側はとしては「年下からあんなことを言われる職場なんて辞めてしまいたい」と思われたり、「年下上司から嫌われている」と被害的に捉えられたりしかねません。

仕事での評価と人としての評価とは全く別なのですが、人のこころは仕事での評価を自分の「存在価値」として受け止めてしまうことがあります。

この原理を逆手に取れば、相手の存在価値を維持したり高めたりするには仕事での評価を伝えることは大変効果的であることがわかります。
ですから、指導した後に良い変化があればそれをフィードバックすることが必要です。

また、「存在価値」という視点でみると挨拶や日頃の思いやり、世間話なども大きなポイントとなってきます。
相手を敬う気持ちは何も年齢にかかわらず、誰に対しても与えることであなたの人間性を高めることもできるでしょう。

年下上司のみなさんは気苦労も多いかと思います。
しかし役割としてあなたに白羽の矢が立つということは、一回りも二回りも成長できる大きなチャンスでもあります。
あなたの成長がチーム全体の躍進にもつながることになるのです。

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