「執着を手放す」ということ

こんにちは、平です。

みなさんからいただくご相談の中で意外と多いのが、「彼のことが好きでしょうがなくて、ストーカーのようになってしまいます」、「しかも、嫉妬心が人並み以上に強くて、彼のすべてをチェックしないと気がすまないんです」というものです。

じつは、この“執着”と“嫉妬”というのはセット商品のようなもので、いっしょに登場することがとても多いのです。

私たちカウンセラーが恋愛のご相談を受けたとき、よく言う言葉に、「執着を手放してくださいね」というものがあります。

「彼とはふだんからできるだけいっしょにいたい」、「たえず彼のことをチェックしていたい」と思っているみなさんには地獄のセリフに聞こえることでしょう。

それでも、なぜ、執着を手放すことがそんなに大事なのかということを、きょうはみなさんにお話ししていきます。

まず、執着について理解していただくために、ちょっと極端なたとえではありますが、ストーカーの心理をレクチャーしておきたいと思います。

ストーキングする人の深層心理には、多くの場合、「こんな自分を好きになってくれる人などいるはずがない」という信念があります。

この信念ゆえに、「人は必ず自分から離れていくだろう。そうならないよう、見張っておかねば‥‥。くっついておかねば‥‥」と考えてしまいます。

くっつかれる側は、適正な範囲を超えて接近されると距離をとりたくなります。
2mぐらい離れていた人が、急にあなたの顔の前20cmのところに来たとしたら、「な、なに?!」と思わず距離をとりたくなりますよね。

だれだって、あまりにも近くに他人に来られると、気持ちが悪く感じるものです。

ところが、ストーカーのみなさんは、「あまりに近づきすぎると、相手から距離をとられる」と考える以前に、「離れていってしまわれる恐怖」を感じるために、自分から近づくことを選んでしまうわけです。

そして、オフィスのエントランスで待ち伏せしたり、あなたのアパートを見張っていたりするわけですが、あなたにしてみれば、相手が近づこうとしてくるほど、「いい加減にして!」と拒絶したくなりますよね。

そうなのです。最初にお話ししたように、ストーカーの深層心理には「きっと自分は嫌われる」というのがあります。

「いきつくところ、自分は嫌われ、ふられるんだろう。でも、自分から嫌いになることはけっしてできない。だとしたら、私のことをきみが嫌い、思いきり拒絶してもらわないと、この関係を終わらせることはできない」と思ってもいるのです。

二人の関係を清算するために、それぐらいあなたに嫌われることをストーカーさんたちはしてしまうのです。

すると、まったく逆説的なのですが、「嫌われるために執着は存在する」ということになるわけです。

女性のみなさんの中には、彼と連絡がとれないと、何度も何度も電話やメールをしてしまうという人も多いようです。

彼が携帯を見た途端、あなたからの着信履歴やメールが10本以上もあったとしたら、どうでしょう? 彼は、「僕はなんて愛されているのだろう」とは思いませんよね。

でも、あなたはそのことには気づいてさえもいないのです。

その心の力学は、もうその時点で、あなたが彼に嫌われるようなことを多発させるように働いているのです。

私たちカウンセラーが「執着を手放しましょうね」と言うのは、第一に、彼がつけるあなたの点数が、これ以上、下がってしまうことを恐れるからです。

あなたはただ安心したいからだけなのかもしれませんが、しつこくすればするほど、あなたの点数は間違いなく下がります。

そして、その点数が一定水準以上に下がってしまったら、もう二度と会えない関係になってしまうかもしれませんし、恋のリバイバルマッチの可能性もなくなります。

執着しているとき、表面的にはパートナーに執着しているように見えます。でも、ほんとうにあなたが執着しているのは、「この私を愛してくれる人など、けっして存在しない」という信念であるようですよ。

 

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。