子育てサポート2~思春期の心理~

最も難しいと言われる思春期の心理を巧妙に解説します。

思春期は僕たちの心身がもっとも発達する時期で、それゆえに心理面でも大きな負荷・影響が見うけられます。
大人からすれば何でもない悩みも、子どもからすれば自殺を考えてしまうくらいに深刻なものも多くあります。
ですから、思春期のお子様を持つ親御さんには「大人の目、自分の基準」を当てはめないことを必ずお勧めしています。

しかし、とは言っても、現実には試行錯誤の連続であり、親御さんから見ても一部を除けば、子どもの将来について色々と思い悩ませる(経済的な理由も大きいようですね)時期でもありますから、今まで以上に衝突や葛藤を経験する時期でしょう。

●思春期における心理的な変化

1.自意識の高まり
思春期に入り、初潮・精通、胸のふくらみ、体毛、声変わりなど外見的に大人へと変化し始めると否が応にも意識が自分自身に向かうようになります。
いわば、社会生活(学校生活)の中で家族、先生、学友達と接しながらも、自分自身を個別化させていく時期でもあり、特に自分の外見や行動を常に意識するようになります。それゆえに精神的なストレスも非常に高くなる時期です。

2.個別化の台頭(アイデンティティの確立)
また、この個別化のプロセスでは「自分は何が他の人と違うのか」「周りからどのように見られているか?」「周りの人から嫌われていないか?」「自分は劣っていないか?」という心理的な比較・競争が始まる時期でもあり、何かちょっとしたことで劣等感や敗北感を感じます。

ところが、ここで周りの人と同じ行動・態度・考え方を求められたとすると、自分の個性を抑圧せざるを得ない結果となり、そのためより個性的な人格を持てば持つほど、それを発揮する場を失ってしまう、という矛盾が生まれてきます。
この部分で大きなストレスを感じて自分の心を閉じてしまうケース(引きこもり)や、反発して家を飛び出してしまうケースもあります。

少なくともこの時期は折からの個別化の時期にあたりますから、個性を主張した時期でもあります。その場面で、子ども達が主張したい気持ちとそれをどう社会的な面で適応させていけばよいのか?というのは多くの親御さんの悩むところのようです。

3.完璧主義の誕生
また、完璧主義と言われるものがこの時代に生まれてくるようになります。
外見的にも行動的にも完璧に物事を成し遂げようとし、そのために意識を向けます。
この時期にファッション性に目覚めたり、体の手入れに入念になったりするようになりますし、行動に対しても「~すべき」や「~すべきでない」といった自分自身の規律を作るようになります。

しかし、多くの子ども達にとって物事を完璧に成し遂げられることや周りに対して勝っている部分を探すのは難しいのが現状で、ここで劣等感を覚え、自己を否定するような行動を取ることが多くあります。
(逆に勝っている部分があると自意識過剰になり、その行動が逆に周りからの孤立を招くケースもありますね)
そんな劣等感が、ある場面では非行になり、不登校になると考えることができます。

●何が欲しいのだろう?

では、なぜ完璧になりたいのでしょう?
それは心理的には「愛されるため」「認められるため」と考えています。
もちろん、その対象の一番は親御さんです。
続いて先生や周りの友達です。
「完璧になれば愛される」という思いなのです。

実際にこの欲求の存在は成長のプロセスを振り返ってみることでわかってくるでしょう。

僕たちが生まれたとき、何もできませんが、たくさん面倒を見てもらえました。
ご飯を食べるのも、排便するのも全部。
ところが3,4歳から躾が始まると、今度は多くのことを自分でやっていくことが求められます。
幼児の頭ではそれが躾だということはまだ理解できませんから、単純に「愛情が減った」ように感じられます。もちろん、ここでご両親は今までとは違った形で愛情表現をすることが大切なのですが、なかなか事情や知識不足等もあって手が回らないのが現実のようです。

そうすると子どもは減った分の愛情を取り戻さなければ、と思います。
そこで「いい子」になることを覚えます。
お手伝いをしたり、お母さんの言いつけを守って誉められることで愛情を感じようとするわけです。
ところが、それも年齢を重ねるにつれて要求が厳しいものに変わっていきます。
学校の成績だったり、周りの子どもとの親による比較だったり、兄弟の影響だったり。
でも、愛情がほしいと思う分、我慢を重ねます。
わがまま言ったら嫌われると思えば、わがままを言わないように我慢します。
もちろん、我慢できることは大切なことなのですが、必要以上の我慢はやがては不満となって心の中にたまっていきます。

その中で完璧になれば愛される、という心理が自然に生まれてきます。
実際にはこの心理が意識レベルにのぼることはほとんどありませんが、両親からの愛情を求め、それを得るにはより完璧にならなければ、という行動が随所に見られるようになります。

また、劣等感や完璧主義は、何か自分が失敗を犯したときに「もう後戻りできない」「自分の人生は終わってしまった」という感覚を作り出すことが多くあります。
大人が考えればちょっとした失敗(失恋や試験の失敗)でも、自分の人生が終わってしまったように悩み、自殺を考える子ども達がいます。

●親離れ、子離れ(分離と独立へ)

多くの動物は思春期に差し掛かると親が子どもを過激に虐待し、巣を追い出します。
キタキツネのドキュメントをご覧になったことがある方は覚えてらっしゃるかもしれませんが、何度も何度も巣に戻ってくる子どもを親が本当に殺さんばかりの態度で攻撃します。
これは一言で言えば、種の保存のためなのですが、実は人間はこの逆で子どもの方から旅立っていくスタイルをとっていきます。
これが反抗期と言われるもので、親のやり方に反発し、自立していくプロセスなのです。

自分の主張を(理不尽であっても)繰り返したり、強い要求をしたり、事あるごとに反発したり、と親御さんにとっては苦労の毎日だろうと思います。

特に親の存在を疎ましく思う時期でもありますから、この時期には常に決断を迫られますね。
この子どもの態度を容認した方がいいのか、それとも叱った方がいいのか、という。
これは本当にケースバイケースのため、具体的な方法は別の機会に譲りますが、基本的には親御さんが自分の価値で判断していくほかありません。
実は子ども達が巣立とうという意識を持ち始めるときに、最も問われるのが親自身の人格であり、人間としての完成度なのかもしれません。

でも、後にも述べるように一番大切なことは、子どもへの愛情です。
それが一番欲しいものなのですから。

●性的な目覚め

また、性的な影響も見逃すことはできません。
実は多くのお母さん方が内心抱いている不安が、自分の子どもの性的な成長についてです。
思春期に入ると恋愛に興味を持ち、また、性的な欲求も高まります。
男と女の身体面での違いに興味を持ち、また、セックスへの期待・欲求が出てくるのです。
もちろん、それは大人の男性・女性への過渡期なのですが、性欲というのはとても刺激的で新鮮かつパワフルなエネルギーであるが故に、子ども達の多くはその扱いに戸惑うようになります。
その結果、社会的な要請もあり、その性的なエネルギーを抑圧する方向に向ける人が多いようです。
(そのエネルギーがどれくらい強いものかというのは、フロイトがすべての心理的な問題や症状を性的な欲求不満が原因として解釈したことからも分かるかと思います)

そして、男の子は特にこの時期に、罪悪感を強く感じます。 母親に対してろくに話しをしなくなる(返事もしなくなる)時期ですが、母親のもと で子供でいた自分が、 男のエネルギー(性欲)を持ち出したことに無意識的に罪悪感を感じ、母親と距離を とりたくなります。

女の子の場合も同様で、自分の中におとなの女性のエネルギーを感じ出すと、逆に父親 に対して反発を使って距離を取り出します。 大人の女性(性的)になっていくことに、無意識的に罪悪感を感じるからです。

●迷いと葛藤

子ども達側にも「もう子どもじゃないけど、大人でもない」という曖昧な感覚を強く抱いているケースが多くあります。
いわゆる迷いや葛藤と言われるものを数多く体験します。
それは自分探しの一歩目ですので、応援してあげたい面もあり、でも、社会にどう適応させていったらいいのかを考えることも必要でありますから、本当に難しいですね。

特に何か問題を起こしたときに、問題児とかアウトローのような目で見てしまうと子ども達ははるかに敏感に察知してしまい、ますます心を開くことはありません。

●この時期の子ども達への接し方

一番大切なことは基本的には彼らを一人の人間として扱いはじめることですね。
子どもとしてだけでなく、大人として成長してきた部分を尊重してあげることは、分かっていても、なかなか難しいケースも多く、またそれぞれの家庭の事情や子ども達の個性によるところも大きいため、なかなか一般論では割り切れないものです。

書籍などではよく「対話してください」などと書いてあるものも多いようですが、なかなか対話の席につけることすら難しい場合も多くあるでしょう。
ここに紹介してきた思春期における心理を元に、それぞれのご家庭で試行錯誤していくことがどうしても必要になってくるでしょう。

そんな風に揺れ動く子ども達に対して、親はより独立した人格と認めつつも愛情を示していかなければならない、という一見矛盾した課題を突きつけられます。

ただ、僕たちの臨床例から分かることでもありますが、子ども達にとって何よりも親が味方であること、どんな場面でも愛情を示してくれることが何よりも大切になってきます。
それはどんなやり方でも構わないようです。
自分なりの言葉や態度で、愛情を示していくこと。
長い目で見れば、子ども達が大人になり、親となっていくにつれ、親が示した愛情の全てに気付き受け取ってくれます。
子ども達も反抗しながらも、どこかに両親への愛情を持っています。

何かのきっかけで行き違いになってしまったとしても、親子関係のベースには愛が備わっているものです。

そんな深い心の中にある愛情を信じて接していく事。
これはどの世代にも共通かもしれませんが、特に忘れがちなこの時期に改めて意識に留め置かれるとよいでしょう。

思春期を乗り越え、青年期に入っていったときに、今度は大人としてもう一度両親との関係を再構築するプロセスがやってきます。
そのときにより良い関係(それはまるで親友のような親子関係)を築いていく礎となるのがこの愛情の部分なのです。

●最後に

思春期の心理はとても広範囲に及び、親御さん、子ども達共々多くの葛藤と悩みを持っているものです。
ここで紹介させていただきましたのも、その中の基本部分に留まっていますから、抽象的に感じられた方も多いことかと思います。

具体的なケースにつきましては、やはり個別論になりますので、カウンセリングなどの場をご利用下されば幸いです。
また、具体例としてこの場で紹介することに同意いただける場合は、メールなどを頂けましたらできる範囲で回答させていただきたいと思います。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

アバター

退会しました。