人間関係は代理戦争?(2)~溢れ出る思いもよらない感情~

このパターンに陥ると、相手への印象が瞬間的に変わってしまうことがあります。温和だった彼に、怒りっぽいお父さんの姿を投影すると、もう彼を「温和で優しい人」と形容することができなくなってしまうのです。また、欲しかったのに得られなかったものをパートナーが与えてくれると、びっくりするくらいのニーズが溢れ出てくることもあるんです。実例を通じ、代理戦争が起こっている状態を詳しくお伝えします。

●パートナーへの印象も、瞬間的に変わってしまう。

代理人として相手を見てしまうパターンについて、もう少し例を挙げて紹介したいと思います。

もし、あなたが高圧的で偉そうな、そして、怒りっぽいお父さんの下で震えながら育ったとしましょう。

そして、そんな怖い男性が苦手なあなたは、温和で優しい彼氏とお付き合いしています。

しかし、あるときひょんなことから彼がものすごく強く怒りだしたんです。

反射的にものすごい恐怖を感じるあなた。

その時、あなたの心は、瞬間的に彼をお父さんを思い出します。

つまり、あの高圧的で怒りっぽいお父さんの姿を、彼の中に見てしまうんです。

それは、お父さんとの間にあった心の傷が、その瞬間に彼に写し出されてしまったことを意味します。

しかし、その時、彼のその怒りに対し、あなたはまるでお父さんに怒られたような恐怖心をリアルに感じるんです。

そして、それにとどまりません。

同時に彼にあるレッテルを貼ります。

「この人は高圧的で、偉そうな人だ」と。

それがたとえ1回きりの怒りの表現だったとしても、です。

そして、それから先、あなたは彼のことを「温和で優しい彼だけれど、本当は、あのお父さんみたいに高圧的な怒りをもっている人」として見続けます。(あるいは、震え続けます)

でも、それは彼の本当の姿なのでしょうか?

もちろん、その可能性も否定はできません。
しかし、彼の中にも怒りってあると思うんです。(彼の中だけでなく誰の中にも)

あなたの中のお父さんとの関係性が未消化である分だけ(癒されていない分だけ)、今の彼の怒りに対し、あのお父さんを見出してしまうのです。

このことに気付くと、あなたは二つの方向性を手に入れることができます。

・彼はお父さんのように必ずしも高圧的に怒りを出す人とは限らない。
温和で優しい彼も、ほんとうの彼。

・お父さんとの関係を癒していけば、こうした思いは緩和されていく。

そこではまず、「ああ、パートナーにお父さんを投影しているんだな」ということに気付けばいいのです。

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そうして、自分を癒していくことで、彼を一人の人間、ありのままの存在として捉えられるようになっていくのです。

 

●まるで自分じゃないみたい・・・

もう一つ、別のケースをご紹介したいと思います。

恋愛を通じて、過去に与えてもらえなかったものをパートナーを通じて得ようとすることもあります。

こんなケースがありました。

『A子さんは子ども時代から育児に無関心なお母さんの下で育ちました。お母さんはあまりお母さんらしいことはしてくれず、彼女は早い時期から自立して、自分で何とかしなければいけない状況だったんです。

また、彼女が若い頃に付き合った男性は、とても彼女のことを愛してくれはしましたが、冷たい性格で、いざというときは突き放されることが多かったんです。
やはりここでも彼女は精神的に耐え、強くならなければいけませんでした。

そうして大人になってある素敵な男性と出会いました。
とても優しくて、気が利く、彼女にとっては初めて安心感を感じられる人でした。
頼りがいがあって、こんな人にめぐり合いたかった、そんな思いを痛烈に感じられたんです。

始めのころは幸せでした。まさに夢のような恋だったからなんです。

しかし、付き合い始めて数ヶ月が過ぎた頃、彼女の中にふつふつと不満が出てくるようになったのです。

もっと側にいて欲しい。毎日連絡して欲しい。もっと強く深く愛して欲しい。私を不安にさせないで欲しい。もっと大切にして欲しい。

自分でもびっくりするくらいの依存心(ニーズ)が出てきたのです。

知らないうちに彼にそれをぶつけるようになっていました。
でも、一方では「そんなことをしては嫌われる、重たくなる」と理性が警告しています。でも、その依存心はとどまることなく強くなり、ある日彼から「お前は欲しい欲しいばかりでもう疲れた」と別れを切り出されてしまったんです。』

A子さんの中に何が起きたのでしょう?

次回、その心理を見つめて行きますので、ちょっと考えてみてくださいね。

>>>『人間関係は代理戦争?(3)~連鎖する関係性~』へ続く

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