理想の自分と今の自分~本当はこうあるべきなのに、という自分との争い~

「ほんとうはこうあるべきなのに」「本当はできなきゃおかしいのに」そんな思いを抱くこと、ありませんか?そう思うとき、あなたは頭の中に「理想の自分」を作り上げ、その自分と「今の自分」を比較する罠にハマってしまいます。

その理想の自分は完璧主義から生まれたもので、そうしなければ愛されない、必要とされない、という恐れがベースにあります。だから、焦りも生まれ、自己否定も強くなってしまいます。

一方、理想の自分は「向上心」というポジティブな気持ちからも生まれます。これは仕事がデキる人に見受けられるのですが、自分の能力をちゃんと受け取れず、理想を追い求める姿になってしまいます。

また、自分が作った幸せの条件からも理想の自分は生まれます。幸せを願う愛情がベースになっているのですが、育った環境の影響も受けるパターンです。

そうした理想の自分は、自分自身を成長させてくれるのですが、きちんと足元を見つめ、今の自分をちゃんと評価してあげることがとても大切なんですね。

実は理想の自分を持つことにより、人に無意識に理想の姿を求めることになってしまうのです。そのために、自分の座標を知る、ということを一つ提案したいと思います。人と接する中で座標を知ることができるのですが、それにより正当に今の自分を評価してあげられ、人に対しても、愛と感謝を持って接することができるようになるのです。

カウンセリングの中でよく出会う事例を紹介します。それは「理想の自分」を作り上げてしまい、今の自分と比較してダメ出しをしてしまうパターン。皆さん、思い当たるところ、ありませんか?

ビジネス、パートナーシップ、友人・家族関係等、あらゆる場面で出てくるケースで、まるで自分を否定するための行いのようなのです。
具体的な事例を紹介しながら、この問題を考えていきます。

カウンセリングの中でとても良く出会う事例に「本当はこうすべきなのに、できていない」というものがあります。

「理想の自分」というものを作り、その自分と今の自分を比較してしまうんですね。

絶対、勝てません!!
最早自分を否定するために、自分にダメだしをするためにやっているようなものなのです。
もちろん、そんな意識はしませんよね。
でも、ついつい、やってしまうんです。

ビジネスパーソンのAさんの話。
「もうこの仕事に就いて10年経ちます。十分独り立ちして、取引先とはもちろん、部下とも信頼関係を築いてなきゃいけないんですが、私はそこが足りないんです。今度、組織横断的なプロジェクトに入れていただいたのですが、どうも、コミュニケーション力に自信が持てなくて。」

主婦のBさんの話。
「母親は家庭の太陽であれって言うでしょう?でも、私、全然、笑えなくて。家事だって十分できていないと思いますし、夫や子供たちに申し訳なくなります。昨日もなかなか宿題をしない上の子にガミガミ怒ってしまって自己嫌悪でした。」

フリーで仕事をされてるCさんの話。
「本来ならばきちんと取材の下準備をして、資料も読み込んでからクライアントに会うべきなんですが、どうもそこがうまくできないんですね。ミーティングでも「しまった」と冷や汗かくことが多いですし、もっといいものを提供できるのでは?他の人ならもっときちんとプレゼンするのに、っていつも思ってしまうんです。」

失恋したDさんの話。
「彼と別れてもう3か月経つんです。年も年ですし、早く次の恋に向かわなきゃいけないのに、引きずってしまって。頑張ってコンパにも行ったりするんですが、気に入ってもらっても、彼と比較してしまってどうしても心が動かないんです。」

・・・こうした事例だけで4回分を終わらせることができるくらいです!

客観的に文章を読むと、見えてきませんか?
彼らが「理想の自分」と戦っていることが。

あるいは、もうすでにAさんからDさんのお話を読んで、自分と比較して、落ち込んでる方もいらっしゃるかもしれません!(笑)

大丈夫ですよ。それに気づけば。「あ、ハマってる!」と思ったら、少し抜け出せます。

Aさんは「10年仕事してるんだから信頼関係をたやすく築くコミュニケーション能力を備えていなければいけない」と思っています。
Bさんは「母親は太陽で、家事もてきぱきこなし、夫や子供に優しく接するべき」と思ています。
Cさんは「フリーで仕事してるんだから、もっと責任を持って準備をし、プレゼンをすべきた」と思っています。
Dさんは「失恋して3か月も経てばさっさと立ち直って次に行くべき」と思っています。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

「本来はこうあるべきなのに」
「本当はこうできなきゃいけないのに」
「普通ならばこんなことしないのに」

と思うこと、ありませんか?

そのすべてが「理想の私」です。心理学では「観念」とも言います。

思い込みであり、ダメな自分を証明するための偽りの自分像でもあります。

この理想の私が強力だと、精神的に休まる場がありません。常にプレッシャーを受け、自分を否定し、追い込んでいます。
もし、理想通りに物事が進んだとしても、自分を評価できず、褒められません。

実際、カウンセリングの中で「これは出来てますよね!すごいじゃないですか」と伝えても、「たまたまです」「相手が良かっただけです」等々の言い訳が出てきて受け取れません。

この勝ち目のない争いを終わらせたいですよね。
それには自分に「OK」を出し続けることなのですが、それには勇気が要るんです。
「もう理想の自分と比較するのはやめよう。今の自分にOKを出し続けよう」
と決断する勇気、持ってみませんか?

この記事を書いたカウンセラー

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