傷ついた人との接し方~人はどんな時に傷つくか・傷つくことのメリット~

人は自己嫌悪や広義のコンプレックス、過去に傷ついた事柄、あるいは自己を防御するための様々な観念を刺激するなど、その人が持っているネガティブな心の琴線に触れたときに傷つきます。従って、傷つくポイントがどこにあるかは、人それぞれです。

そしてネガティブな心の琴線は投影により更にネガティブな捉え方を強化し、それが更に状況を悪化させるという悪循環を生み出していくのです。

しかしながら、人は傷つくことにより自分が注目し、執着している事を気づかせてくれます。そしてその執着を緩和したり手放せると、人生が大いに前進する場合がとても多いのです。

また、何かミスをして傷ついてしまった人との接し方は、深刻さが比較的軽い場合はそのミスを打ち消してあげるような言葉を掛けること、深刻さが重い場合には、孤独感と自己否定を緩和してあげる事です。

◎リクエストを頂きました◎
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先日テレビで国際結婚をされたご夫婦のエピソードを放送していました。
奥様(日本人)とご主人(中近東)がレストランで食事をしたとき、ウェイターが誤ってご主人のスーツに料理をかけてしまったとのこと。
奥様がハンカチを取り出し、ご主人のスーツを拭こうとした時、ご主人は「このままでいい」と言ってその手を止めました。
ご主人は「あなたがスーツの汚れを拭くたびに、あなたはナイフで彼(ウェイター)の心を刺しているのと同じだ。彼の心を傷つけたくないからこのままでいい」と言ったそうです。

その言葉をきっかけに奥様は結婚を決めたそうですが、スーツの汚れを落とすことが本当にウェイターを傷つけることになるのでしょうか。私がウェイトレスなら、いつまでも汚れたスーツを見ているほうが辛いです。
例えば第三者ではなくても、一緒にいる人がミスをしてしまった場合、どのように接すればその人を傷つけない(恥をかかせない)ことができますか。

(一部編集させていただきました)
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私たちは、多くの場合、人を傷つけようと思いながら世の中で生きている訳ではありません。
しかしながら、とある一言が人を傷つけたり、何らかの行動が意に反して人を傷つけてしまうことがあります。
そして、相手が急に怒り出したり、違和感のある行動をとったりして初めてそれに気づくこともあります。

では、人は果たしてどんな時に傷つくのでしょうか?

それは、その人が抱えている何らかの問題、例えば自己嫌悪やコンプレックスと呼ばれる心の中にある感情の渦、過去に傷ついた事柄、あるいは自己を防御するための様々な観念を刺激するなど、その人が持っているネガティブな心の琴線に触れたときに起こります。

従って、傷つくポイントがどこにあるかは、人それぞれなのです。
更に加えて言えば、心の琴線は起こった出来事や誰かの言動など自分の身の周りに生じている事柄についても心のフィルターを介して自分の都合の良いように解釈するという影響を及ぼします。
この心のフィルターのことを心理学では「投影」と呼んでいます。

少々極端な例かも知れませんが、「私は運が悪い」と思っている人は、私が問題なのではないと感じたいために、運命を象徴する神様を責めながら、電車の座席が空いていないだけで「やっぱり、私には運がない」というそれに応じた捉え方をしたり、誰かが「私は運がよい」と言っていると、それを与えられていない私を感じて傷ついたりします。

このように、ネガティブな心の琴線は更にネガティブな捉え方を強化し、それが更に状況を悪化させるという悪循環を生み出していくのです。

さて、では傷つく事は私たちにとって何のメリットも無いのでしょうか?

実は、大きなメリットがそこには存在しているのです。
それは、自分が何を感じて自分を責めているかという“自分の問題の所在”を明らかにしてくれる事です。そこばかりに着目し、執着している自分の姿を見せてくれることです。

そしてその執着は、人間関係であるとか、頼まれるとNoと言えないとか、依存的になってしまうとか、あるいは自分が思うように物事が進まない(進められない)といった、自分の人生の中で上手くいっていない分野について大きく関わっています。

この執着が緩和されたり、うまく手放すことができれば、今までと違った世界が開けて人生が大いに前進する場合がとても多いのです。
しかし執着を手放そうとすると、自分が自分でなくなってしまう感覚や自分の存在に意味がないように感じられてしまうなどの抵抗が現れるのが普通で、なかなか上手く事が進みません。

しかし、人生の目的が本当の意味での自分自身の解放であり、自由に楽しく生きていくことであるという大局に視点を据え、諦めずに変化できる自分を見詰め続ける事が出来れば、その抵抗がやがて緩み、執着の緩和や手放しを実現することが出来るのです。

さて、リクエストの本題に戻しましょう。
人の傷つくポイントは様々であると先に書きましたとおり、そのテレビ番組で取りあげられていた状況で、スーツを拭いたからといってウエイターが傷つくとは限りません。
寧ろ、汚れた服をそのまま放置する方が行動としては違和感があるかも知れませんね。

先に話をした「投影」の法則に則れば、そのご主人こそが失敗に対して通常以上にネガティブな心の琴線をお持ちで、自分がミスした場合の心情をウエイターに投影されたのではないかと思います。

また、何かミスをしてしまった人との接し方ですが、深刻さが比較的軽い場合はそのミスを打ち消すような言葉、例えば「人間だからミスもするよ」「何とかなるよ」などという言葉を掛けてあげて、通常通りに接してあげれば良いと思います。

件のウエイターの場合は、何かジョークを交えてコミュニケーションを取るなど軽くそのミスを扱ってあげれば、ウエイターも深刻にならないのではないでしょうか。

重い深刻さを伴っている場合は、その人の話を十分に聞いてそれを受け止めてあげること、そしてその人が持っている良い部分を伝えてあげる事だと思います。
深刻なとき、人は孤独感と自己否定をしてしまいがちです。これらを緩和してあげることがとても大切なです。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。