カリスマリーダーの光と影 〜知っておきたいリスクと多様なリーダーシップ〜

強い信念を持って人々を惹きつけ、大胆なビジョンで組織を導いていく、カリスマ的なリーダーに憧れていませんか?
皆さんにとって、理想のリーダーはどんな人でしょうか?

カリスマリーダーの言葉には力があります。
まぶしいくらいの存在感があって、時には不可能を可能にするかのような期待感を抱かせるでしょう。
実際に、心理学でも、カリスマ的リーダーシップが組織やチームにポジティブな影響を与える研究結果が出ています。

今回は、カリスマ的リーダーシップの特徴とリスク、他のリーダーシップスタイルについて解説します。

●カリスマ的リーダーシップとは

「カリスマ」とは、宗教的な意味合いを持つ言葉で、「神から与えられた特別な才能や魅力」といったニュアンスのある言葉です。
現在では、人々を強く惹きつけ、熱狂させ、影響を与える、並外れた個人的魅力や資質を指す言葉として広く使われています。

カリスマ的リーダーシップの特徴には、次のようなものがあります。

1)明確で魅力的なビジョンの提示
部下や支持者などに、将来のビジョンを情熱的に語ります。
「こうなったら最高!」というイメージを共有するのが上手です。

2)高い自信と楽観性
たとえ困難な状況でも自信があり、成功を信じる姿勢を示し続けます。
部下や支持者が抱く「大丈夫かな?」という不安を、リーダーの在り方で「なんとかなりそう」と思わせる雰囲気があります。

3)信頼と期待の表明
部下や支持者の能力を信じ、「あなたならできる」と期待を表明することで、部下や支持者の自己効力感(「できる」という感覚)を高めます。

4)型にはまらない行動
従来の慣習やルールにとらわれず、時にリスクを取るような大胆な行動で注目を集めます。
「この人についていけば何かが変わるかも」と、変革への期待感を抱かせます。
現状に不満な人たちの支持を集めやすかったりもします。

5)自己犠牲的に見える姿勢
自らが自分自身の利益のためよりも、ビジョンの達成や組織の成功ためにに尽くす姿勢を示したりもします。
「あの人がここまでしているのだから、自分も」と、部下や支持者の献身を引き出します。

●カリスマ的リーダーに惹かれる理由

先行きが「わからない」と不安な状況で、明確なビジョンと自信を持つリーダーは、希望を与える存在になります。
また、リーダーの言葉が日々の仕事や活動に意味を与え、モチベーションが高まります。
そのリーダーと一緒にいると、自分が重要な存在だと思えるので、いい気分になれます。
さらに、そのリーダーと同じ集団に属することで、自分自身も「素晴らしいことをしている」と自尊心が高まる場合もあります。

●カリスマの「光」は組織を輝かせる

倒産しかけた企業が、カリスマ的リーダーを迎え入れて、奇跡的な復活をとげた話は聞いたことがあるでしょう。
カリスマの「光」は、ポジティブな影響力を持っています。

リーダーの関わり方は、仕事への意欲や、愛社精神や、会社への貢献意欲にかかわってきます。
また、リーダーからの「あなたはできる」という信頼は、相手の能力を引き出し、パフォーマンスを向上させることも多いでしょう。
変化が求められる局面での決断と推進力は、新しい組織への生まれ変わりを実現させます。

●カリスマの「影」

カリスマ的リーダーは強い「光」であるがゆえに、「影」も同時に生み出しやすいものです。
見過ごされがちなリスクも知っておきましょう。

例えば、カリスマ的リーダー自身が自己愛が強くなりすぎて「私は特別な存在」と思い込んでしまうと、他者に承認を求め、他者からの批判を聞き入れず、自己中心的な決定をしてしまう場合があります。
一歩間違うと、独裁者になりかねない危険性があります。

また、強力なリーダーシップのもとでは、部下や支持者は「リーダーの指示通りに動けばいい」と思いがちです。
自分で考えたり判断したりする機会が減り、依存的になる傾向があります。
加えて、リーダーに異論を唱えにくい雰囲気があると、集団思考に陥り、誤った選択をするリスクが高まります。
さらに、カリスマ的リーダーのもとでは、後継者が育ちにくい側面があります。

●多様なリーダーシップ像

カリスマ的なリーダーシップの他にも、多様なリーダーシップのスタイルがあります。

1)サーバント・リーダーシップ
部下の成長を第一に考え、支援することに徹するリーダーシップのスタイル。
傾聴や共感を通じて、メンバーが能力を発揮できる環境を作り、チーム全体での目標達成を目指します。
縁の下の力持ちのようなリーダーシップです。

2)変革型リーダーシップ
魅力的なビジョンを示して部下のやる気を引き出し、前例にとらわれない新しい考え方を促すリーダーシップのスタイル。
一人ひとりに配慮し、潜在能力を開花させることで、組織全体の変革と成長を目指します。

3)オーセンティック・リーダーシップ
自分自身の価値観や信念を深く理解し、それに正直に行動するリーダーシップ。
嘘や偽りがなく、倫理観に基づいた透明性のある言動を心がけることで、周囲からの深い信頼を得ます。
「自分らしさ」がポイントとなるリーダーシップです。

様々なリーダーシップのスタイルを知ることで、ご自身に合うリーダーシップを発揮したり、自分の理想と違うリーダーを理解する材料にしてみてくださいね。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。