誰かとのビジョン

40歳を過ぎて、ふと、自分の人生をふり返って感じることがあります。
漫然と年を重ねてきたようで、いろんな経験をしていること。
そして、自分が望んだことの大半がかなっていることにも気づくのです。
「40代からの心理学」をご覧になっているみなさんも、ご自分をふり返った
とき、意外と自分の望んだことがかなっていることに気づかれるのではない
でしょうか。
年齢を重ねるごとに、経験を重ね、叡智を養い、おのずと森羅万象の
ことわりに対する理解が深まるのでしょうね、ものごとを見る思慮にたける
ように思います。


同時に、子供も手を離れて、パートに出たり、自分のための時間が増えます
よね。
お稽古に行ったり、エステや温泉、ホテルのランチ、楽しいことで生活を
充実させて、充分楽しくてしあわせを感じることもできます。
でも、その一方で、なぜか、こんなものか、と悟ったような気持ちになって
しまう、そんなことはないでしょうか。
それは、もしかしたら、「あなた以外の誰かと」何かを始めるときなのかも
しれません。
誰かとのビジョンは、それを叶えるプロセスで親密感や意外性といった
ユーモアや楽しさを与えてくれます。
ビジョンといっても、小さいものでいいんです。
例えば、ご主人とのデートや旅行。
ある主婦の方は、旅行が趣味だったのですが、ご主人はついては来るものの、
結婚するまであまり旅行をしなかったのでしょうね、下調べをしたり
するのがニガテで、奥さんまかせだったようです。
旅行好きで計画を立てるのも楽しみのひとつとはいえ、ついてくるばかりの
ご主人に頼りなさを感じて、うんざりしていました。
ところが、子供がだんだん一緒に旅行に行かなくなり、親離れしていくに
つれ、このままではいけないと思ったのでした。
彼女は悩んだ末、二人で旅行に行こうと決めました。
この「二人で」というのが、彼女の決心です。
彼と二人で何かをするということに、コミットメントしたのでした。
コミットメントとは、よく決心、とか腹をくくるといいますが、「全面的に
自分を与える」ということです。
自分も数にいれる、というところで犠牲や役割とは異なります。
二人で行くのは、何年ぶりでしょうか。
どこに行きたいか、どんなことをしたいか、ご主人に切り出すと、案の定、
どこでもいいよ、という感じでした。
彼女は一瞬カチンときたそうですが、コミットメントです。
コミットメントとは、何度もする選択の繰り返しでもあります。
彼女は怒ることではなく、自分の気持ちを話すことを選択したのでした。
自分がなぜ旅行が好きなのかを話したのです。
なぜ、旅行が好きなのか、旅行のどんなところがいいのか、そして、その
楽しい時間を分かちあいたい、ということを、初めて話たのでした。
ご主人は、知らない土地に行くことに抵抗があるようで、その気持ちは
変わらなかったようですが、彼女の気持ちは理解したようでした。
そして、少しずつ、ココがいいんじゃないかという話をしだしたそう
なんです。
それは、マイナーで、観光にしては的外れなところをリクエストされた
そうで、旅行不器用なご主人を象徴していたそうです。
かつての自分であれば、こんなリクエストは即刻却下か、面白くないのに
と思いながらも、経路や日程を決めて、あなたのために連れてきてあげた
わよという気持ちだったそうです。
今回は、二人で行くという意識を持っていたので、一緒にプランを立てる
ことにチャレンジしてくれました。
それをしながら、結婚してずいぶんになるけど、こうやって一緒に何かを
することってなかったなあ、と彼女は思ったそうなんです。
家のこと、子供のことも、どちらかの言い分が通って、どちらかは却下される。
そのほとんどは、自分の言い分ばかりだったそうなんですね。
そのときに、彼女は何か分からないけれど、彼のふがいなさに対する怒りが
急にプシューっと治まったそうなんです。
そうして行ってきた旅行先では、やっぱり彼のリクエストはいまひとつ
面白くなかったそうで、彼女は報告してくれました。
ご主人はといえば、ピザで有名な店をわざわざ調べて行ったにも関わらず、
パスタを注文したりと、やっぱり的外れだったそうです。
でも、その話をしてくれている彼女はとっても楽しそうでした。
あまりイライラしなかったんですよ、彼女は意外そうに教えてくれました。
その面白くなかったマイナースポットは、主要な観光ルートからは大幅に
ずれているところだったそうなのですが、彼が積極的にリードして行った
そうなんです。
そのときの、彼が小さな子供みたいに嬉しそうだったそうなんですね。
その誇らしげな顔と、たどりついた先がいまひとつさえなかった、というの
が彼女にとってはツボだったようです。
ご主人がユーモラスに、かわいく見えたそうなんです。
あのひとがこんな風に見えるなんて、不思議です、とおっしゃってました。
その後、楽しかったのはご主人も同じだったようで、旅行に行きたいという
言葉が出てくるようになったそうです。
彼女は、そうはいっても、ご主人の相手は根気がいるから、しばらくは
いいわと苦笑していました。
この思い出で、「しばらくは持つ」そうです(笑)。
あなたが誰かとのビジョンをすでに持っているのであれば、それはすばらし
いことですよね。
もし、誰かとのビジョンを持っているのに何か物足りないのだとしたら、
もっとあなたとのビジョンを分かち合うひとがいるのかもしれません。
あるいは、プロセスに楽しみがあるということを忘れて、目的にばかり目が
いってしまっているのかもしれません。
また、子供とのビジョンももちろん素敵ですが、子供はもともと親との
親密感が強いものです。
いつかあなたの手を離れるとき、ビジョンだったはずのものに、あなたが
しがみついてしまわないためにも、子供以外の誰かとも、ビジョンを持つと
いいでしょう。
私たちは、自分ひとりでできる範囲のことであれば、かなりの確立でうまく
いくと思うんです。
でも、誰かとのかかわりを持ちながら、何かを成し遂げるのは、お互いの
違いを認め合う成熟さが必要になります。
でも、その違いを分かち合うことができるのです。
お互いに、もっていないものを受け取ることができるのです。
あなたは、誰とそれを分かち合いたいでしょう。
自分の器用さばかりが優先されていて、不器用だけれど本当は欲しいもの、
というのを後回しにしていませんでしたか。
無理だとあきらめた人とほど、こうしたつながりが欲しいのかもしれませんね。
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