側にいたい。

側にいたい。
そんな風に、このひとに対して感じたのは、いったい何年ぶりだろうか。
愛おしく、優しい。
こんな気持ちを持つことも、もう、ないと考えていた。
昨年末、母は入院し、今年になって自宅に戻る。


親不孝な娘は、彼女に向き合った時に感じる自分の罪悪感を嫌い、めったに母に
顔を見せない。
気持ちの上でわだかまりがある時は、永遠にこの塊は溶けるはずもなく、分断さ
れた川岸の向こうにいる‘敵’とは橋をかける術もないと感じるもの。
永遠と感じる時間は、全く動かぬ、つまりは止まっているのと同じなのだろうか

ふと、そんな事を思い、状況を動かそうと、モチベーションのあがらぬまま、あ
まり役に立ちそうにない「おやこーこー」を考えるが、実行に移すことは滅多に
ない。
かくしてわだかまりは、やはりまた、永遠のときを刻み始める。
母の入院は毎度のことであり、あまり驚くに値しない。
そう判断している私の親不孝度は年々アップしていた。
既にアラフォーまっただなかだというのに。
そしていまに至るのだ。
今回ばかりは、少し様相が違うらしい。
いわゆる「治療」はしないらしい。
一時、食を摂ることができない状態のため、毎日点滴をするがそのまま自宅療養
となるらしい。
友人に手伝ってもらって、いまできる最善の環境整備を父とともにした。
週2回の訪問看護師さんの手配と、在宅医の手配、そしてヘルパーさん。
この土地だからこそ準備できる環境に、感謝しそして、胸をなでおろす。
7年前から「高次脳機能障害」である母は、判断も理解もできるが、5分前のこ
とも悪気なく忘れてしまう。忘れることに自覚があるので、忘れているよ、と指
摘すれば問題はないが。
その状態でも、私の事は心配する。
仕事のこと、収入のこと、結婚のこと、健康のこと。
心配されると、罪悪感を感じ、冒頭のわだかまりは、動かぬものとなっていた。
かたちあるモノ、それは人間の人体であっても、それは永遠ではないんだな。
時間の長短はともかくとして。
自然の摂理を自分のものとして目の当たりにして、自分が逃げていた事に気づく

それは、愛したい人を愛することから。
愛したいと思ってくれている人から、愛されることから。
言い訳は、なんだってつく。
忙しかったんだ、私にしかできない仕事なんだ、休めないんだ、予定が先にある
んだ。
そうはいっても、ほんとうのところ、世間はそれほど狭量ばかりではない。
(狭量な場合もあるのはわかるが・・・。)
私の場合は、言い訳である。
選択は、できる。
そして、時間も贈り物であることに、気づく。
側にいたい。
側にいたい。
愛おしい、愛しています。
彼女のいのちの輝きは、私の中に自然な愛を引き出した。
永遠だと思われたわだかまりは、あっさりと溶けた。
彼女は「生産的」な事は、もう何年も前から、ほとんど何ひとつしていない。
努力すら、忘れ去っている。
私が「生産性」を求め続けていた頃、ただ車椅子に乗り、食すら誰かの世話にな
り、そんな状態は心から恐怖の対象であった。もしも、自分が、いや家族であっ
てもそんなことになったなら、私は心情として耐えられる自信は全くなかった。
でも、いまは「ひとときの穏やかさ」が、どれほど人を癒し、豊かであるのかを
知った。
身をもって母が教えてくれたといっても、過言ではないと思う。
昨年相次いで、大切な友人が愛へと旅立った。
彼女らは目には見えない愛を今も送り続けてくれており、私の感じ方の変化をサ
ポートしてくれているように思う。
映画「パッチアダムス」のモデルである、「ハンターアダムス氏」が来日し、講
演会を東京で行っていた。それでも、まだ、親不孝な娘はこの期に及んで東京ま
でハンター氏に会いに行く☆
ゲズンハイトインスティチュート、無償診療所の構想のため、東奔西走する60
代の少年。
ホスピタルクラウン、彼の突飛な衣装は、世の中からバイオレンスを無くすため

そういう彼は、戦争孤児だそうだ。
質問者達の質問に、ユーモアと愛と、そして勇気をもって、答え、少なからず傷
ついた医療従事者・介護者・聴衆たちを鼓舞し、そして、時にただ抱きしめる。
‘私たちに壁は存在しない。できないと思ったところがただ、壁になるのだ。’
彼は、そう静かに語る。
人と人との関係も、わだかまりは‘心の壁’なのだろう。
リアルに感じる、不可能さ・・・、一生埋まらないと思う溝・・・。
愛によって、いのちの輝きによって、押し流され、溶けることもあるのなら。
わたしたちの、こころは思うよりも、柔軟で、強く、しなやかで、ダイナミック
な現実を作り出すこともできるのかもしれない、と、いまは感じている。
愛おしい、という、人間らしい感情は、豊かな泉のように私の胸を満たす。
不自然な生きかたのほうが、まだ、しっくりくることもあるけれど、
側にいたい、こころのままにあることを、今日は少し、自分に許してみようと思
う。
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