絆をつくるもの

ご主人がいきなりヒーローに変身!

こんばんは

神戸メンタルサービスの平です。

私の知り合いのご夫婦は登山が共通の趣味です。

なかなかマニアックな登山をする人たちで、ザイルで二人をつなぎあいながら、ロッククライミングのようなことをなさいます。

すると、どんなにひどいケンカしたとしても、命をかけた登山をしたあとは、当然のように仲直りすることができるようなのです。

たしかに、一本のザイルでつながれ、ともに危険なチャレンジをすることで絆が深まるというのは、想像しやすい話ですよね。

さて、きょう、ご紹介するご夫婦は、多忙なビジネスマンのご主人と専業主婦の奥さまという組み合わせです。

ご主人は、「家庭や子育てのことは、すべておまえに任せる」というタイプ。

奥さまのほうは、長年、任されっぱなしでコミュニケーションもほとんどない状態なので、このご主人との暮らしはどんどん魅力を失いつつあります。

で、お子さんが大学に進学したころには、「退職金をもらったら、離婚しようかしら」とこっそり考えるほど夫婦仲は冷え切っていたそうです。

奥さま曰く、「でも、私がこんなに冷え切っていることすら、うちの主人は知らないと思います。そもそも、私に興味がないと思います」。

興味をもってもらえないということにも、奥さまはとてもウンザリしているわけです。

そんなとき、このご家族がある事件に見舞われました。住んでいた賃貸マンションで、漏電による火災が起こったのです。

で、このマンションのオーナーというのが利己的かつ威圧的な人で、こんなことを言ってきたわけです。

「あなた方の出した火事のおかげでうちのマンションの価値が下がった。その補償はしてもらうからな」

これに対し、あれほど家にいてもいなくても同じような状態だったご主人が、キッパリとした対決姿勢を見せたのです。

「漏電は、マンション管理者であるあなたのほうに責任があります。あなたこそ、私どもの失った家財などの賠償をすべきです」

これまで、なんの役にも立たなかったご主人が、いきなりヒーローに変身したようなものです。

その後、「弁護士を立てて争う」と言ったオーナーに、「弁護士など立てなくても、私の力で十分に戦える」とご主人は言い、実際、法的にも先方を打ち負かしてしまったのです。

で、オーナーからしっかりと賠償金をせしめ、「おまえの好きな家財道具を買い直せ」と奥さまに言ったわけです。そんなご主人に、奥さまはメロメロです。

曰く、「ふだんは頼りない新聞記者であるクラーク・ケントがじつはスーパーマンだったというぐらい、びっくりしてしまいました」とのことで、すっかり惚れ直してしまったのです。

幸い、ご家族は家財に対する火災保険にも入っていました。オーナーからの賠償金も入ったので、この際、これを頭金に夢であった一戸建てを買おうということになったのです。

なんらかの危機が訪れたとき、それが、いままで気づかなかった家族の長所や、たがいの絆を再認識する機会になることがあります。

このご家族が遭ったような火災、地震や台風などの災害、そして、いま、世界を脅かしている新型コロナウイルスによる感染症などもその一つといえることでしょう。

コロナ禍のせいでたがいに在宅ワークとなり、毎日顔をつきあわせているとケンカが絶えないというご夫婦もいます。

が、じつはそれはきょうに始まったことではなく、前々からガマンしていたことに向き合わねばならなくなりなくなった状態です。

ここで必要なのは、先送りをせず、ごまかさず、向き合うことといえますよ。

 

来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。