仕事で失敗したときの立ち直り方

仕事でミスをしたときに、ひどく落ち込んだり、引きずってしまうことはありませんか。
誰にでも失敗はつきものですが、なかには思い出すのも嫌になるような出来事もあるかもしれません。

ミスや失敗が続けば、自信を失い、これから頑張る意欲さえも失ってしまうでしょう。
そんなとき、どのように失敗と向き合い、気持ちを立て直していけばいいでしょうか。

私は過去にシステム開発の仕事をしていたことがあります。
システムを設計、開発したあとには、作ったものをテストする段階があります。
それは、たくさんのミスと向き合う時間でもありました。
不具合を見つけては、どこが間違っているのか、なぜこういった問題が起きてしまったかを分析し、お客さまに説明したり、不手際を謝罪する必要がありました。

報告書を書きながら、「なんでこんなに間違いがあるんだろう」「もっと自分に能力や経験があれば、こんなことはならなかったんじゃないか」と自責の念にかられたのを覚えています。

ときには、自分を過度に責めるあまり、上司がきちんと指示を出してくれていたらこんなことにはならなかった、周りの同僚だってもっとフォローしてくれればよかったのにと責任転嫁したくなることもありました。
「ミスをなかったことにしたい」と隠したい気持ちに駆られたこともあります。

何かに失敗したとき、情けなさ、恥ずかしさ、申し訳なさや、自己嫌悪など、しんどい気持ちに押しつぶされてしまいそうになりますよね。
それくらい、失敗は私たちの心にのしかかるものです。

人間は完璧ではありませんから、どんなに注意しても、ミスをゼロにはできません。
でも、同じ失敗をしても、引きずってしまう場合と、スムーズに切り替えられる場合があります。

私は失敗を長く引きずってしまうほうでしたが、一緒に働いていた先輩はたくさんの不具合が報告される現場で、いつも落ち着いている方でした。

あるとき、私は、自分が担当した箇所に不具合が多く見つかり、落ち込んでいました。
そんな私に先輩が声をかけてくれたことがありました。
「だれでも最初はそうだよ」
「私も前に、本番のシステムを止めちゃって、怒られたことがあるよ。」
先輩はあっけらかんと笑って、自分の失敗談を話してくれました。
中には、私のミスよりも大きなものもあり、自分だけじゃないんだと勇気づけられたのを覚えています。

私は一つ一つの間違いが起こるのは、「自分が未熟だから、ダメだから」と自分の能力や価値が劣っているせいだと捉えていました。
一方で先輩は、「間違いは誰しもあるもの。自分の価値や能力とは関係ないもの」だと捉えていたのです。

失敗やミスがあると、私たちはどうしても、自分を否定しがちです。
「ここでしっかり反省しないとまた繰り返してしまう」「気をつけていないと、もっとひどい状態になってしまう」などと考えて、自分を責め続けてしまうのです。

失敗そのものよりも、そこで自分をどう責めたかの方が心の与えるダメージは大きいです。
ときには、たった一つの失敗を使って、心の中で繰り返し、強く自分を批判していたりします。

しかし、自分を責めることにエネルギーを使っていると、心理的には余裕がなくなってしまい、前に進むことができません。

間違いは罪ではなく、修正すればいい。
分からないこと知らないことは、ここで新しく学べばいい。
この出来事を失敗とするか、糧にするかは、解釈は自由に選ぶことができます。

とはいえ、失敗から学ぼうにも、自分を責める気持ちが強すぎるときには、まずは自分を優しく労ることが大切かもしれません。
そこまで責めるということは、本当はどれだけうまくいかせたかったのでしょうか。
そこには、あなたなりの責任感や、貢献したい気持ち、頑張りがあったのではないでしょうか。
結果だけではなく、そこに至るまでのプロセスであなたが取り組んできたことを承認してあげることも、心の回復につながります。

そして、心に余裕が生まれてきたタイミングで、「ここから学べることはなんだろう」と振り返ってみるといいでしょう。
この経験があったことで成長できたこと、自分が得られたものが見つかれば、もう失敗したままのあなたではありません。
失敗は次につながる体験になり、一歩進めていることになります。

そして、もう一つ、失敗を重く捉えてしまったときには、「5年後、10年後の私がみたら、今回のことはどんな意味があるだろう」と考えてみるのもおすすめです。
いっときのことで考えると大変なことに感じても、長い視点で見れば重く捉えすぎずにすむこともあります。この失敗を乗りこえたら、今度は笑い話として誰かを励ますネタに使えるかもしれません。
ひとまわり成長した未来の自分から、今の自分にメッセージをもらうことも、一歩ふみだす勇気につながります。
できるところから、新しい視点を取り入れてみてくださいね。

みなさんが、失敗を乗り越えて、軽やかに仕事できるよう応援しています。

この記事を書いたカウンセラー

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人間関係、自己嫌悪、家族関係、仕事などの相談を主に扱う。じっくりと話を聴きながら、そのままの自分でもっと楽に自由になれる道筋を一緒に見出していくサポートを行う。 お客さまの個性やペースを尊重し、いつでも味方でいることを大切にしており、「話していて安心できる」「心の深いところをわかってもらえた」と好評である。