カウンセリングの現場から

表面的に見ると、奥様はとてもひどい人で、ご主人をまったく愛していないかのように見えた

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

心理学用語で「ダブルメッセージ」というのですが、一人の人に、2つの違う方向に行けというメッセージを出すと、その人はどっちに行けばいいのか迷ってしまって一歩も動けなくなってしまいます。

自分においても人においても、このようなダブルメッセージを出すと、人生がまったく止まってしまったようになります。

男女関係でも、パートナーに無意識的にこのような二重のメッセージを送り、2人の関係を滞らせてしまうことは、よくあります。

例として、あるご夫婦のカウンセリングをご紹介しましょう。

2人は同じ会社で、奥様から見ると、会社のトップセールスマンであるご主人は、とても光り輝いて見えたそうです。

そして、奥様はそんな彼に恋をし、憧れの人と結婚することができました。

しかし、不況が深刻になるにつれ、ご主人の営業成績がどんどん下降線をたどり、あまり芳しくない状況になってきました。

ご主人は、営業成績に比例する歩合給だったので、昔に比べてお給料も半減し、今は家のローンを払うとそんなに残らなくなり、奥様もパートに行かなければならないほどになってしまったのです。

そうなることで夫婦関係もどんどん険悪になり、今では奥様は平気でご主人のことを「このろくでなし!」などとなじる始末で、彼の唯一の楽しみである晩酌も「ビールが飲みたけりゃもっと稼げ!」などという辛らつな言葉を奥様から浴びせかけられたりしています。

ご主人も、当初は「自分の稼ぎが悪いから」とがまんにがまんをしていらっしゃったのですが、さすがに耐え切れなくなって、ご相談にお見えになったのでした。

表面的に見ると、奥様はとてもひどい人で、ご主人をまったく愛していないかのように見えます。

しかしながら、こういう場合は、ご主人を愛するがゆえに彼を攻撃してしまう、ということが実はとてもよくあるのです。

離婚のセラピーの現場では、とてもよくあることなので、奥様のダブルメッセージについて説明しました。

表面的には、奥様はご主人に活を入れ、もっと稼いでもらおうとしているわけですが、このやり方は、百害あって一利なし、ご主人のモチベーションを下げるだけで効果はあまり期待できないのです。

しかしながら、深層心理では、奥様はまったく気づいていらっしゃいませんが、ご主人にあまりバリバリと活躍する、トップセールスマンでいてほしくないのです。

もちろん、意識的には、彼がトップセールスマンとしてバリバリ稼ぐことで、家計も潤い、奥様の利益にもなるわけです。

しかし、奥様はそんなバリバリ活躍していたころのだんなさまに魅力を感じ、恋をしたわけですから、深層心理では、ご主人がバリバリ稼ぐトップセールスマンになると、世界中の女性がだんなさまに魅力を感じてしまい、その結果、きっと私は捨てられる、と思ってしまうのです。

そして、これが恐れになりますから、この恐れをコントロールするために、奥様はあえてご主人に嫌われるようなことをしているわけです。

しかしながら、奥様はそのことにぜんぜん気づいていません。

ここでご主人に意見を求めてみました。

「今は稼げないのでがまんするしかしょうがないかもしれませんが、もしバリバリ稼げるようになったらどうしますか?」するとご主人は、「そのときは、がまんしないで好きなように生きてみたい」と答えてくださいました。

当たり前なのですが、彼が成功すると、ご主人がこれまでがまんした度合だけ、リバウンドして、奥様に背を向けてしまう確率がとても高くなるのです。

離婚のセラピーでは、この夫婦のさらなる深層心理に入り、この夫婦をもう一度ラブラブにするわけですが、そのプロセスは、次週お届けします。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。