執着心の違いについて 〜葛藤の視点から〜

執着心の違いを葛藤から見つめてみると

あらゆるご相談において登場する「執着心」。
私達が何かにとらわれ、心が自由でなくなり、悩んでしまう理由の一つです。
ただ、執着にも様々な形があると言えるのです。
そこで今回は「葛藤の形態」という視点から執着心について見つめてみます。

あらゆるご相談において登場する「執着心」。

私達が何かにとらわれ、心が自由でなくなり、悩んでしまう理由の一つです。

また、私達が執着を見せるものは多岐にわたります。

例えば、恋愛(パートナーと別れたくないなど)、お金・仕事・環境など(今の生活を手放せない、今の収入を得られる仕事を失ったらどうしようなど)、自分自身に関すること(よく見られたい、嫌われたくないなどの思い)などが代表例でしょうか。

ただ、実際に執着心に関するご相談を伺いますと、その中身、性質が異なる場合があるのです。

つまり、何に対して執着しているか、その執着にどんな意味があるのかには人それぞれ、状況や環境によっても違うと考えられます。

この執着心の違いについて紐解く際に参考となるのが「葛藤」。

葛藤状態の違いで、執着心の意味も変わってくることがあるとも考えられます。

そこで今回は「葛藤の形態」という視点から執着心について解説していきます。

○対象の価値を見て執着(葛藤)している場合

これは2つ以上の事柄の価値を見て、どちらに決めたらいいか迷っている状態です。

例えば、AくんとBくん、どちらもステキでどちらにも良さがある。どちらをパートナーとするべきか、なんて悩みがそれにあたります。

ただ、この場合は、例えば「Aくんを選んだらBくんとはお別れすることになる」という葛藤になることが多いでしょうから、確かに「どちらかを手放すことへの執着がある」と言えるでしょう。

が、この状態はシンプルに「どちらかに決められないだけだ」とも言えるでしょう。

なので、悩ましいことには違いはないですが、自分なりに決めることができると、次第に葛藤も解消され、執着心も感じにくくなるでしょう。

○何かを失うと感じて執着(葛藤)している場合

これは、今、自分が手にしている価値を失うと感じて葛藤し、今感じている価値を失いたくないからこそ執着する場合です。

例えば「今の仕事にはやりがいを感じている。

けれど、パートナーとの結婚を考えると仕事を手放すことになる」と悩んでいるような状態です。

結婚やパートナーとの幸せには価値を見ている。

けれど、今の仕事を手放すことも「望まないこと」なのですよね。だから仕事に対しての執着心が芽生えるということです。

このとき「望まないこと(仕事を手放す)」を選ぶことと、「望むこと(パートナーとの結婚)」を選ぶことを天秤にかけて考えると、更に葛藤し決められなくなりやすいです。

だからこそ「選ぶことでもし後悔したり、後々失敗したらどうしよう」といった不安を感じやすいものですよね。

ただ、実際この状態を抜け出すには、失うことよりも

「何を優先し、何に価値を見るか」

を決めることになります。

つまり、自分が何を優先して大切にするか(愛するか、専念するか)を決めることで葛藤や執着心は解消されていくことが多いといえます。

ただ実際にこの手のお悩みを伺うと「選択した結果の信頼性や妥当性」を感じられずにお困りのの方が多いんですけどね。

○回避したい事柄ばかりみて執着(葛藤)している場合

これは、今自分が直面している事態を否定的に捉えていて、何を選んでも望んだ結果やよい未来がこないだろうと想像している状態です。

このような葛藤が生まれる背景には

「どちらもリスクやマイナス要因があるから回避したい」

という気持ちがあることが多いです。

例えば、「このまま一人は嫌。でも恋愛に自信がない。」「お金で困る生活は嫌。でもしんどい仕事もしたくない。」といった場合が典型例です。

このとき、どちらの選択に対してもリスクやマイナス要因ばかりに執着しています。

ただ、この執着は「傷つかない」という意味では役立つのでなかなか手放せないのです。(実際に傷つかないかどうかは別にして、です。)

むしろ、手放して失敗するということを恐れているのかもしれません。

それぐらい「自分は失敗する」という観念に執着している可能性がありそうです。

だから、何事に対しても「回避すること」を考え、選ぶことができずにいるのでしょう。

ただ、そう感じてしまうにも事情がある場合が多いものです。

例えば、自分や物事の良い面や可能性を感じ取れない事情があると言えるのかもしれません。

時には、個々の個性・特性、生育プロセスなどの影響を受けている場合もあるでしょう。

この場合は、

一人で悩まず人に相談する
必要であれば適切な支援を受ける
自分をあまり信頼できていないことに気づいて、自分を肯定的に見ていくように意識する

などに意味が出てくると考えられます。

○最後に

この執着の違いは、自分を理解するためだけではなく、人を理解する場合にも参考になります。

同じ「執着」といえども、人によって何に執着し、どう葛藤しているのかは異なるものです。

自分の執着(葛藤)と、他者のそれは異なる場合があるわけです。

その理解の目安などにしていただけるといいかもしれませんね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。