手のかかる娘の巣立ち

私にはこの春大学生となって、家を巣立っていく娘がいます。

大学なんて、高いだけで行く意味がない、勉強はもうしたくない、と言い切っていた娘でした。
一度言い出すときかないことを知っているので、高校を出て就職するならそれはそれでいいんじゃないかなと私も思っていました。

でも、最終的には自分でさんざん悩んだ末に、1つだけ大学を選んで合格することができました。
自分でちゃんと決める力があるってすごいな、でも、昔からこの子はそうだったな。
その近くで住むマンションも決まり、ウキウキと新生活に必要なもののリストをつくる娘を横目で見ていると、なんだか熱いものがこみ上げてきます。

いつの間にか大きくなったな~。
一人暮らしが始まるなんて、ついにこんな日がきたんだな~。

思い起こせば、赤ちゃんの時から、娘を育てている時には、あまりにもしんどくて、とにかく育ってくれ、とにかく早く自立してくれ、そればっかり考えている時期がありました。

産まれてしばらくしてから始まった夜泣きが本当にひどくて、二時間おきに起こされて抱っこの日々。
下におくと泣くので、私は横になることもできず、その辛さを一人で抱えこんで死にそうでした。
小児鍼や指圧、最後には夜泣き封じの神様にも祈祷してもらいましたが治りませんでした。

少し大きくなってからも、娘はささいなことで気が狂ったように泣きました。
お風呂にいれるたびに、どんなに優しくお湯をかけても、身体のどこかをナイフで刺されているのか、というくらい泣きました。
虐待を疑われたらどうしよう、って毎回ハラハラしながら、泣きたいのはこっちだよ、って心の中で私も泣いていました。

その後も、少し気にいらないことがあると、家でも外でも床にひっくりかえっていつまでも泣きました。
折り紙をおったあと、ここに戻そうねって言っただけで二時間くらいひっくりかえって泣かれる。
どうして、うちの子だけこんなに親を困らせるんだろう。

私には娘が理解できなかったし、育児が本当に苦行に感じました

このまま大きくなったら本人も周りも困る、ちゃんとしつけないとって思うようになってからは、娘と私の壮絶なバトルが繰り広げられました。
娘には本当に可愛そうなことをしたと思います。

身も心もお互いにボロボロになってはじめて、私には娘の心底絶望した表情が見えました。
その顔を見たときにはじめて、この子のこの行動はわがままじゃなかったのかもしれない、
やらないんじゃなくて、ほんとうにできないってことなのか、、、。

ものすごく衝撃でしたが、やっとその事にきづくことができました。
それがたしか小学校1年生くらいだったとおもいます。

私がしなきゃいけないのは、娘とバトルすることではなく、彼女を理解してあげる、受け入れてあげることなんだ、って、長い長い時間がかかってやっとそこにたどりつきました。

私がそんな風に思えるようになってから、娘もようやくほっとできたようで、二人の関係が少しづつあたたかいものに変わっていきました。

こうやって書くと、ほんとに娘に悪いことをしたと思うのですが、当時の私にはほんとにそれが分からなかったのです。
母親としてとにかく必死でした。

今振り返ってみると、あの当時の私は、大阪から愛媛にとつぎ、慣れない土地で、必死で良い妻や良い母、良い嫁にならないと、ってがむしゃらでした。
育児は母である私がしなくてはならないもの、と思い込んで、夫を全く頼りにできませんでした。
しんどい、苦しい、さびしい、そんな感情を自分自身から切り離していました。

子どもは大人の抑圧した感情を感じるといいますが、娘は私の抑圧した感情を感じて、ただ悲しかったり、淋しかったり、苦しかったりしたんじゃないかなって今では思います。
あんなに小さな体で、私に怒られながら、それでも体を張って、私が見ようとしない感情を体現してくれてたのかもしれません。

自分は自分でいい、娘は役割ではなく自分の感情とつながる大切さを私に教えてくれました。
そのままの自分を受け入れることの大切さを教えてくれました。

人より少し感受性が強く、こだわりが強い娘、その後もやっぱり私が理解できない行動は多々ありましたが、なんとかここまで元気に明るく育ってくれました。

大変だったころ、私は娘に一刻も早く自立してくれ、って願っていました。
でも、今娘の巣立ちを目の前にそんなに早く自立しなくてもいいじゃない、ちょっと待ってよ、もう少し母と娘の時間を楽しもうよ、って言いたくなる自分がいます。

スーパーで、買い物をしながら、娘の好きなものをもう作ってあげられなくなるのか、って急に泣きだしそうになる自分をもてあましています。

手はかかったけれど、今でも手はかかるけれど、マイペースで怖がりで甘えん坊だけど、私の大切な愛しい愛しい娘。
あなたの成長はうれしいけれど、巣立たれるのはお母さんはとってもさびしいよ。

昔の育児で死にそうになっていた私に教えてあげたかったな、こんな日がくることを。
そんなことを思いながら、あと少しの娘との時間を大切にしようと思う今日この頃でした。

この記事を書いたカウンセラー