頼まれると断れないのはどうしてだろう? 〜投影をヒントに解決への扉を開く〜

頼まれたことを断れない心理とは?

誰かからお願いをされたり、勧められたことを上手に断れる人もいれば、断りたいのに断れなくて悩んでいる人もいます。「断れない人」にはどんな心理が隠れているのか?投影から見えてくる感情的な理由の詳しい解説と、断り上手な人になるためのヒントをお届けします。

■断りたいけど断れないのがしんどい

誰かから頼みごとをされて「ちょっと嫌だな」「今は無理かな」と思った時に上手に断れる人もいれば、本当は嫌だけど断ることが苦手でつい引き受けてしまう人もいます。

例えば、早く帰りたいのに上司から残業を頼まれた。飲み会が好きじゃないのに幹事を押し付けられた。気が乗らないメンバーのコンパに誘われた。ショップの店員さんからオススメされたものを必要ないのに買ってしまった。

つい引き受けたけど、後になってしんどくなってしまった。なんてことはありませんか?

受け入れること自体は悪いことではありません。相手のために何かできたり、困っている人の助けになれるのは素晴らしいですからね。

ただ、そのために自分が本当にしたいことができなくなり、それがストレスになってしまっては肝心の自分自身の心が助けられなくなってしまいます。

他にも恋愛では、パートナーとはもう別れたいと思っているけど「お別れしましょう」が言えない。なんてお話もよく伺います。

すると、相手から嫌ってくれるように、つい自分が悪い態度をとってしまうことが多いのですが、結局はパートナーから責められて怒られて、かなりつらい状況でのお別れになることがほとんどです。

断ることで相手のことを傷つけたくない分「自分が悪者になって傷つく方がマシだ」と思うからこその行動なので、ある意味とても心根が優しいという証明とも言えます。しかし、これは本当にしんどい努力です。

こうした傾向の強い人は誰かに助けを求めることが苦手なので、傷ついた自分を誰かに助けてもらうお願いができずに抱え込んでしまうんですね。そして誰にも迷惑をかけないために失恋する度に職場を変え、住む場所を変えて、人間関係を全て切ってしまうような人も珍しくないのです。

■投影で解き明かす「断れない理由」

「断れない」心理と言うのは、過去に誰かに言われた拒絶で大きく傷ついたり、否定されたと感じた体験がルーツだと考えられます。

過去に自分が「NO」を言われたり、断られて傷ついたことで、今度は「断ること」で相手を傷つけてしまうのではないか?という不安からなのです。

このような、自分の感情を相手も同じように感じるはずだと思うことを「投影」と言いますが、また別の投影が働いているケースもあります。

例えば、あなたの子供時代にお母さんにお話したくて近づいたのに「あっちへ行ってなさい!」と断られたことに傷ついていたとしましょう。そして拒絶されたことを今も心のどこかで怒っているとします。するとこんな風に感じるのです。

「昔、断られた相手を私がまだ怒っているように、もし私がお願いを断ったら、私はその人から怒りを向けられるかもしれない」

これは潜在意識で感じていることなので、意識的に気づいてはいません。ただ心の奥でこう感じていたとしたら、怒りを怖れる分だけ我慢して受け入れてしまうのです。

さらに、もう一つこんな投影もしている可能性があります。

先ほど助けを求めるのが苦手な人が多いと書きましたが、それは自分が断るのを苦手としている分だけ、お願いをした時に「相手も負担に感じるだろう」と申し訳ない気持ちになってしまうから。というものです。

人によってはこうした投影が幾重にも重なって、断れない心理が生じていると考えられます。

断るのが苦手な人は、断ることで相手を嫌な気持ちにさせてしまうのを怖れていますが、投影だと気づけると、自分の感情が元で思い込みになっていたと気づけるのです。

心と頭で自分のパターンだったと受け入れられると、怖れの感情から抜け出しやすくなります。

■まずは半分だけ自己表現してみる

「断れない人」は、「NO」「それは嫌です」「できません」を言えずに、我慢に我慢を重ねて生きています。我慢は蓄積されると怒りに変わるので、心の中にたくさんの怒りが封印されていくことになります。

すると「断れない人」が、「断ろう」「NO」を言おうとすると一緒に怒りが出てきそうになります。つい「NO」が怒りと共に出てしまい自己嫌悪で苦しみ、その後の人間関係が気まずくなり、やっぱり断れないパターンに戻ることもあります。

なので、まずは半分だけ自己表現をすることを意識してみるといいでしょう。

一旦は相手のお願いの気持ちを受けとる。でも全部を断るのではなく、半分だけNOを伝えてみることから始めてみてください。

例えば、行きたくない飲み会に誘われたとしたら・・・

「ありがとうございます。でも仕事が終わらないかもしれないので途中から参加でも良いですか?」

または、帰りたいのに残業を頼まれたらとしたら・・・

「分かりました。ただ友だちと約束があるので全部は無理そうですが、これだけならできそうです。」などのように。

ひょっとしたら断り上手への道は、自分も相手もどちらの気持ちも大事にできる人間関係の達人へ通じているのかもしれませんね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

超自立男性との恋愛・コミュニケーションに関わるお悩み・慢性的な生きづらさの解消などを得意とする。 理論的な“心理分析”と、感覚を使った“心理セラピー”を活用する多面的なサポートが好評。 問題の裏に隠れた「真実の物語」を読み解き「自分の本質を生きる」ことを目指すカウンセリングを提供している。