心の慣性の法則

中学校ぐらいの理科(物理)の授業だったでしょうか、“慣性の法則”を習いました。
ご存知の方も多いと思いますが、慣性の法則は、大雑把に言ってしまうと、“外からの何らかの影響を受けない場合、物体はその状態(状況)を続ける”というものです。
例えば、停まっている乗り物に乗車していて、その乗り物が急発進すると、私たちには急激な外力を受けて乗り物の進行方向とは逆方向に引っ張られたようになります。
逆に、走行している乗り物に乗っていて急停車すると、私たちは乗り物の進行方向に引っ張られたようになります。前につんのめるわけですね。
それまでバランスを保っていた力の均衡が破れると、安定するために働いていた力が強く作用してしまい、このような状態になってしまうのです。
これが、物理の“慣性の法則”ですね。

一方、物理的な側面のみではなくて、私たちの心の中にも、実は慣性の法則があります。
心の慣性の法則は「状況の変化を好まない」「そのままであり続けたい」というものです。
沢山の乗客がいる電車やバスに乗っていて、駅やバス停で新しい乗客が乗り込んでくるときに、「新しいお客様が乗車できませんので奥へお進みください」とのアナウンスがよく聞かれます。
前から乗っている多くの人は、新しいお客さんが乗り込んでくることがわかっているのですから、積極的に奥に詰めればいいようなものですが、そのような行動をとる人が必ずしも多くはありません。
私たちは一度キープしたポジションを変え、状況を変化させることに抵抗があるのです。

この“心の慣性の法則”は、様々な状況のもと、様々な事柄で見受けられます。
例えば、会社を辞める、辞めない、離婚や結婚、部署の異動、仕事の内容変更、業務の進め方の変更・・・。
今ある状況や状態が変化することに対しては、何に対しても、この“心の慣性の法則”がもれなくついてくるのです。
そして、その原因について私たちは様々な理由を用意しますが、その原因を辿っていくと“怖れ”や“自信”に行きつきます。
従って、怖れが強い人ほど、自信がない人ほど心の慣性力は強く働きます。

しかし一方で、この“心の慣性の法則”を打ち破る何か、モチベーションをあげる何かがあれば、そのハードルは低くなります。
例えば、より自由を求めたいと思っている人は、自分の状況を変化させることで自由になることが信じられれば、状況を変化させます。
より収入を得たいと思っている人は、状況を変化させることでより多くの収入を得ることに自信が持てれば、状況を変化させます。

換言すれば、“心の慣性の法則”から脱皮するためには、自信と怖れを乗り越える勇気が必要だということです。
そしてそれは、自分自身を変化させることなのではないでしょうか。
自分自身に掛けている“心の慣性の法則”の呪縛から、自分自身を解き放つことなのではないでしょうか。

これからの社会を考えたとき、AI技術の発達やロボテクス技術の発達など科学技術の発展とそれらの社会への取り込み、更には今般の新型コロナウイルス問題で明らかになった社会構造の変革の必要性や意識変革の必要性などによる様々な変化が生じてくることが予見されます。
これらの事柄は、当然、仕事とのかかわり方、仕事の仕方など仕事に関する側面をはじめ、家族の関係や社会とのかかわり方など、様々な側面に変化をもたらします。
今はそう、激動の時代と言っても過言ではありません。

みなさんの心の中にある、皆さん自身の変化を妨げているものは何なのか、頭の片隅にでも置きながら、新しい時代を迎える準備をされるとよいのではないかと思います。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大谷 常緑

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。