「愛されない」という思い込み

「自分はなぜ、彼に愛されないのだろう」の答えとは

こんにちは 平です。

私たちはそれぞれに、「世界とはこういうものである」とか「人生とはこういうものである」という概念をもっています。

それは多くの場合、家庭での幼児体験の中で学んだものだといわれます。子どもにとっては、それが世界のほぼすべてですからね。

したがって、世界観や結婚観の基準のすべては家庭で起こっていたことであり、あなたがよく口にする、「ふつう、こうでしょ?」の“ふつう”もあなたの家庭が基準になっています。

その日、私どもにご相談にみえた女性は、アル中の父親のもとで育ってきました。

父親はふだんはやさしいのですが、お酒を飲みはじめると、暴力的かつ破壊的なタイプに一変するそうです。

そのため、夜、父親がお酒を飲みはじめると、家の中は安らぎの場所どころか、恐怖に支配される戦場のような場所になるわけです。

彼女は成長するにしたがい、家庭以外でもいろいろなことに怯えたり、不安を感じたりというタイプになっていきました。

彼氏ができても、「そのうち、浮気をするのではないか。そして、私は捨てられるのではないか」という不安ばかりが浮かび、心は急激に防衛的になっていきます。

「彼のことをもっと好きになってからふられるのはつらい。いまから心の距離をとっておけば、心の傷は浅くてすむだろう」なんて考えてしまうわけです。

そのため、彼の前ではどうしても無表情な人になってしまいます。

彼にしてみれば、それはまるで「自分といても、おもしろくないみたいだな」、「自分は嫌われているのかもしれない」などと感じてしまうような態度であるわけです。

それは、やがて彼の心をイライラとさせるようになっていき、挙げ句に、破局する。彼女はこんな恋愛パターンを繰り返してきたわけです。

カウンセリングの中で、私は彼女にあるセラピーをしてみました。

「きょうは、おとうさんの目になって、家族を見てみましょう」というものです。

私は彼女に質問をしました。

私「おとうさんの目から、家にいるときのあなたはどう見えますか?」

彼女「自分とはけっして目を合わさず、怯えている女の子がいます」

私「その子を見て、おとうさんはなにを感じるでしょう?」

彼女「自分になついていない、自分を嫌っている‥‥。おとうさんなんか、いないほうがいいと思っているんだろうなと感じます」

私「なるほど。そう感じると、おとうさんはどうなるんでしょう?」

彼女「いやな気分になって、お酒を飲んで。それから、“おまえの育て方が悪い”とおかあさんに当たります‥‥」

そう言うと、彼女は泣きはじめました。

そのときの彼女は、家の中の出来事はすべて自分のせいであるかのように感じ、自分を責めていました。

そんな彼女に、私はこう言いました。

「じつは、おとうさんも同じように自分を責めて、愛されにくい態度をとっていましたよね」

すると、彼女はこんなことに気づいてくれたのです。

「私がいま、彼の前でとっている態度は、昔、おとうさんが家の中でやっていたこととまったく同じかも‥‥」

彼女は、「自分はなぜ、彼に愛されないのだろう」と悩んでいました。

その要因は“愛されにくいこと”をしてしまうためであり、それは、かつての父親と同じだったわけです。

そして、この日、彼女にはもう一つの気づきがありました。

それは、「おとうさんは、私に愛されたかったんだ」ということだったのです。

そんな彼女に、私は次のようなイメージワークを行いました。

私「いままではおとうさんと目を合わさずに怯えていた女の子が、“おとうさん、おかえりー!”と元気よく迎え、近づいていったら、おとうさんはどうなりますか?」

彼女「笑顔になり、私を愛してくれます」

私「そうですね。いま、あなたが彼の前ですべきことも、同じ。笑顔で彼とのデートに向かうことなんですよ」

父親と同じように、彼氏もまた彼女の笑顔や親密感を求めているわけです。「それを、与えてあげましょうよ」という私の提案に、彼女はまた泣き崩れてしまったのでした。

では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。