後悔の心理~「しなかった」罪悪感~

「しなかった」「できなかった」後悔で過去から自由になれない

後悔には、「したこと」を悔やむものと「しなかったこと」を悔やむものがあります。「しなかった」後悔は、「できたかも」「わかっていた」にもかかわらず「しなかった」「できなかった」と自分を責めてしまいます。
「しなかった」罪悪感を抜けるには、「してあげたい」と思った愛情や善意に気づくこと、自己否定をやめて「がんばった」と認めること、「今できること」に焦点をあてて今を生きる選択をすることなどの方法があります。

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●ふたつの後悔

後悔にはふたつあります。

ひとつは、「なんであんなことをしてしまったのだろう」と「したこと」を悔やむもの。もうひとつは、「なんでああしなかったのだろう」と「しなかったこと」を悔やむもの。

「してしまった」後悔は、自分がしたことの結果・自分の選択の結果との自覚があります。心のどこかで「してしまったことは元には戻せない」と体験的に知っているので、やがて今ある現実からどうしていくのかを考えようとするでしょう。

一方、「しなかった」後悔は、「自分が何かしていれば、結果が変わったのかもしれない」と想像します。「もしあの時~していれば」と心が過去に留まった状態で、自分から気持ちに区切りをつけない限り、後悔に終わりがありません。

どちらの後悔も思い返すと胸を苦しくしますが、どちらかというと「した後悔」の方がまだ気持ちの折り合いをつけやすいでしょう。

●「しなかった」罪悪感

「しなかった」後悔は、例えば「がんばればよかったのに、がんばらなかった。」「言えばよかったのに、言わなかった。」「助けを求めていたのに、助けられなかった。」「期待されていたのに、こたえられなかった。」といった罪悪感です。

具体的な例でいうならば、伝えていれば別れずに済んだかも、亡くなった人に「もっとしてあげられることがあった」のに、子供のころ両親の離婚を止められなかった、身近な人の自殺をとめられなかった、いじめられている人に何もできなかった、別の道を選ばなかった、など。

あの時、もしも自分が言っていれば、動いていれば、聞いていれば…。

どこかで「できたかもしれない」のに「わかっていた」のに、「自分がしなかった」、「自分はできなかった」と自分を責め続けてしまいます。

たとえ誰かが「仕方がなかったと思う」「あなたは悪くない」と言ってくれたとしても、自分が自分を許さない状態です。「自分が悪い」と自分のことをひどく罰しています。

●「しなかった」罪悪感の取り扱い

(1)自分の中にある愛に気づく

もし誰かに何かを「してあげられなかった」と自分を責めているのだとしたら。視点を変えれば、「してあげられない」ことが苦痛になるのは、「してあげたい」と思う気持ちがあるからこそ。つまり、あなたの中には愛情や善意がいっぱい「ある」ということです。

多くの場合、「愛したかった」のに「愛せなかった」ことが心の痛みになります。わたしたちが後悔するとき、過去に大切な人を「愛せなかった」ところで心の時間を一時停止してしまいます。そして、「私は愛することができない」と自分の愛を封印して苦しくなるようです。

あの時のあの人に届けることはできなかったかもしれないけれど、まずは、自分の中に愛情や善意があることを認めてみましょう。

そして、別の形でもう一度、自分に誰かを愛させてあげましょう。あなたの中にある愛情や善意が行き先を見つけて「愛する喜び」をもう一度感じられたら、また心が動き出すでしょう。

かつてできなかったことを、形を変えて実現していけたなら。感じたかった気持ちを、形を変えて感じることができたなら。誰かの存在、何かとの接点を、今いる誰かへの愛情や善意につなげられたら。すべての出会い・すべての出来事に意味があると思えるでしょう。

(2)自己否定をやめる

後悔の多くは「できなかった」「自分はダメ」などと自己否定を感じることが苦痛のようです。

うまくできなかったかもしれないけれど、当時の状況の中では精一杯だったのではないでしょうか。問題が大きすぎて、当時のあなたの力では解決が困難だったのではないでしょうか。誰かのことを思うと、あの時はそれを選ぶしかなかったのではないでしょうか。あの時の気持ちの状態では、あれ以上がんばることは無理だったのではないでしょうか。

もし今、あの時のあなたとまったく同じ状況の人がいたら、その人を否定するでしょうか。

望まない結果になったかもしれませんが、あの時はあれが精一杯だったのなら、「がんばった」と自分を認めてみてはいかがでしょうか。

(3)「今」を生きる選択

過去の後悔の中にいて今が幸せでないならば、「今」何ができるのかに注目していく方法があります。「今」を生きることを選択しましょう。今、周りにあるものに意識を向けてみましょう。今、できることに取り組んでみましょう。

たとえ過去がどんなものであったとしても、今は今で「できること」があります。

同じ時間を過ごすのに、過去を悔やむために使うこともできますし、何かを創造するために使うことも、楽しむために使うこともできます。

「今」何をするのかは、「今」自分自身が選択することができます。

「今・ここ」に集中していくと、過去の後悔からも未来の不安からも自由になるでしょう。

どんな過去も「なかったこと」に消し去る必要はありません。ただ、今を生きることを自分に許してみてはいかがでしょうか。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大塚 統子

自己嫌悪セラピスト。心理学ワークショップ講師(東京・仙台) 「自分が嫌い」「自分はダメ」「私は愛されない」などの自己否定、ネガティブな感情・思考をリニューアルし、自信や才能・希望へと変換していく職人。生きづらい人の心が楽になる気づきや癒しを提供。テレビ・Web記事の取材にも多数協力。