人を見抜く目がない

相談者名
あさこ
はじめして。ニューヨークに住むあさこといいます。
どうぞよろしくお願いします。
3年前に結婚し、子宝にも恵まれ幸せに暮らしています。

問題は、夫との結婚前に少しだけつきあった男性の事です。その男性は、私が留学していた大学で、外国人留学生に英語を教えるチューターをしていました。私はよく彼に宿題を見てもらっていて、彼の家に始めて行った時に、かなり強引に迫られてSEXをしてしまいました。その後、急に彼が冷たくなりとても親切に英語を教えてもらっていたあの1年間は一体何だったんだろうと思うほど態度が豹変したのです。

それからは完全に都合のいい女扱いでしたが、私もいい加減嫌気がさしてきて、一切連絡を取らず、学校でも無視するようになりました。しばらくして無言電話がかかってくるようになり、電話会社に調べてもらったところ、発信先は彼の自宅の電話番号でした。その無言電話は結局2年間も続いたんです。警察にも相談しましたが、1日に20回とかだったら立件できるけど週に5,6回しかかかってこないなら、事件としては取り扱えないといわれ、とても困って、結局家の電話サービスを止めて携帯電話だけにしています。

もし何かあっても夫がちゃんと守ってくれるので不安はありませんが、一緒に楽しく英語を勉強した時の聡明で親切だった彼と、いたずら電話をしてくる気持ちの悪い彼の落差が理解できず混乱しています。大体、私の事を都合よく扱っておいて、こっちから切ったら、未練たらしくいたずら電話してくるなんて頭がおかしいですよね?毎日、毎日、彼と彼と関係してしまった自分に対して嫌悪感でいっぱいです。もう、この嫌悪感と3年も戦っています。どうしたら抜け出せるでしょうか

カウンセラー
大谷常緑
あさこさん、こんにちは。

ご相談を担当させていただく大谷です。

よろしくお願いします。

さて、過去の彼との関係が思い出され、そのことに捉われて嫌な気分を感じておられるとのこと、毎日が楽しくなく、辛いですね。

嫌な気分を感じるときは、必ず、どこかで自分を責めているときです。そして、そんな時は自分が悪いと感じたくないので、自分を責めるのと同じエネルギーで、「誰かが悪い!」とか「環境が悪い!」と自分以外の物を責めます。

あさこさんが今、ご自分を責めておられるとしたら、どんなご自分を責められておられるのでしょうか?

僕がご相談から感じたのは、たとえば、「彼とSEXをしてしまった自分」「都合のいい女にされた自分」「彼の人間性を見抜けなかった自分」そして「そんな馬鹿な自分」ではないかと思います。

このご自分を責める気持ちを手放したときに、ご自分を許すことができて、相手の彼も許すことができ、嫌な気分から解放されることになります。

では、その方法は、というと、まずは、彼の行動について一般的な解説をさせていただくのがいいのかなぁと思いました。彼の行動をわかっていただくことで、あさこさんがご自分を責める必要が全くないことを理解していただける手助けになるのではないかと思います。

ただ、ご相談の内容から読み取れることは限られていますので、あくまで一般論として理解していただけると、と思います。

先ず、“かなり強引に迫られてSEXをしてしまいました。その後、急に彼が冷たくなりとても親切に英語を教えてもらっていたあの1年間は一体何だったんだろうと思うほど態度が豹変したのです。”

との点ですが、人間が、親密だった相手と特にネガティブな出来事がないにもかかわらず冷たい関係になる原因は、「自分は悪い」と自分を責める気持ちです。あさこさんに対して悪いことをしてしまったという気持ちが彼にあったようですね。

この感覚をわかりやすくするために日常生活の中の出来事に置き換えてみましょう。たとえば、相手に対して何か傷つけるような事を言ってしまったり、やってしまったとしましょう。そこでは「私は悪い」という感覚を持ってしまい、何となく相手に近づくのが嫌な感じがしませんか?次に初めてその相手と逢うときに勇気が要りませんか?人によってそれを大きく感じるか小さく感じるかは異なりますし、その出来事によっても異なりますが、そんな気持ちになります。そうすると、それまで親密な関係であっても相手との接し方が変わってきます。何となく素っ気なくなったりします。これが「自分が悪い」と自分を責めることで相手との距離を置きたくなる気持ちです。

彼があさこさんに冷たくなってしまったのは、そんな気持ちが彼の心の中で働いていたからだろうと思われます。あさこさんが彼と接する中で気がつかれたかどうかわかりませんが、彼は、どこかで自立的に見えるのですが、どうやら「自分は十分ではない」といつも自分を責めるタイプだったようです。これは、彼が持っている心のパターンで、あさこさんの問題ではありません。彼の問題です。でも、人間というのは誰しも問題が無い人はいません。大なり小なりの問題を持っています。寧ろ、問題の無いことの方が問題なのです。なぜならば、それすら気づかないぐらいに問題に対しての麻痺を起こしているからです。だから、問題を持っている事が必ずしも悪いわけではありません。ただ、彼はそのような心の癖、パターンを持っていたのです。

“それからは完全に都合のいい女扱い”との事ですが、具体的にどんな状態だったのかご相談に書かれていませんでしたので、彼がどんな気持ちを持ってどのような行動をとったのか、あるいはあさこさんがどのような状況でそう感じられたのかわかりませんが、“都合のいい女”という気持ちは、あさこさんが、自分自身を責めている気持ちでもあります。彼は、彼の「自分は悪い」という気持ちを持ちながら行動していたとすれば、彼のあの時の言葉、行動は本当にあさこさんを「都合のいい女」として扱っていたのかどうか、ご自分を責める気持ちや彼を責める気持ちをひとまず横に置いておいて、考えてみられるといいと思います。全く違う見方ができる可能性があると思います。

次に、無言電話の件ですが、彼があさこさんに復讐している側面もありますが、その根本的な動機は、あさこさんに許してほしいというメッセージのようです。これは、彼の顕在意識(頭で理解している意識)というよりも、寧ろ無意識(頭ではわかっていなくて、心の中にある本当の気持ち)の領域です。人間の心は大きく分けて顕在意識と無意識に分かれますが、顕在意識はたった4%~12%ぐらいしか無いのです。残りの96%~88%は無意識です。人間の行動は、この顕在意識と無意識の綱引きで決まるのですが、無意識が圧倒的に強い力を持っています。例えば「こうしたい」と頭ではわかるのだけどなんとなくそうできなかったりする事はありませんか?これは、無意識の中にがそうしたくないという健在意識よりも強い気持ちがあるからです。

人間は、「自分は悪い」と感じると、それを「許してほしい」という感覚になります。しかし、自分を責める気持ちが強い度合いだけ、ますます「自分は悪い」という反対の行動になってしまいます。許して欲しい気持ちが強い度合いだけ、相手のことがみられなくなって、普通では考えられない行動になるのですね。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、日常生活の中に置き換えて考えてみましょう。例えば、子供がイタズラをして親に怒られたとします。「許して」と親にお願いしたとします。でも許してもらえなかった場合、子供は更にイタズラをしてしまう場合があります。本当は許して欲しいのだけれども、それと逆の行動をします。

彼の場合、「自分は悪い」と自分を責める感情から、あさこさんを遠のける気持ちになり、その結果、その「自分は悪い」という感情を整理できない状態で無言電話という行動になったのですね。

「人を見る目」というのは、このように、とても難しいものです。あさこさんが彼の心の奥、ある意味、闇の部分をわからないのは、当然です。

では、どうすれば相手をきちんと見ることができるようになるか、というと、実は自分を責めないことなのですね。自分を責める気持ちがあると、自分自身を見てしまうので、相手のことが自然体では見られなくなります。

さて、ここからが核心です。

彼の気持ちや心の動きをわかる範囲で説明してきましたが、全ては、あさこさんが見ることのできない彼の心の中で起こったことが原因なのです。だから、あさこさんの問題ではないのです。あさこさんがご自分を責める理由は何もないのです。あさこさんが彼に対してとった行動は、当時はそうするのが自然だったというこの点を先ずは認めてください。

次に、あさこさんは、日常でも、起こった事柄を「いい」「悪い」と2つに分けて判断する癖をお持ちではないか、と思います。○と×の間があるといことを意識してください。△があるということを意識してください。何かにつけ「こうだ」と判断をしてしまうと、それに縛られてしまいます。

次に、人間は、完全ではなく、ましてや神でもありません。どんな人間も間違ったことをします。彼も、あさこさんも人間なのです。人間ってこうなんだなぁ、と思ってみてください。

そして最後に、あさこさんご自身が自分を大切に扱ってください。

もし仮に、今、彼とのできごとを使って自分に何か罰を与えようとしているとしたら、それはどんな目的があってのことなのでしょうか?それは今の幸せな生活をどうしたいからなのでしょうか?いいか悪いかは別にして、この観点でご自分を本当に大切に扱っているかどうか、を一度見つめ直されるといいかと思います。

ニューヨークにお住まいとのこと、日本からは離れていて時差もありますが、できれば電話カウンセリングをお受けになられるともう少し気持ちがスッキリされるのではないかと思います。

ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。