事故とトラウマ

 

相談者名
りつこ
重度の知的障害の姉をもち、私は幼い頃から「姉の面倒をみる」という役目を任されていました。
私が4歳位の頃、外出先で母から姉を見ているように言いつけられていたのですが、姉は私の手を強い力で振りほどき広い横断歩道に飛び出して行ってしまいました。
私が追って歩道の前に来た時には信号は赤になり手前の車はゆっくり動きだし、姉は遠く歩道の真ん中です。
「自分が今行っても、あの場所にたどり着くまでに車に轢かれてしまう」と判断して一歩を踏み出せず、分かっていても歩道に出なければいけない気持ちでしたが、姉は車に轢かれ、私はそれを見ている事しか出来ず深い罪を負いました。
幸い姉は命に別状は無かったのですが、病室で「お前が死ねばよかった、お前のせいだ」と母親に泣き叫ばれ、看護師に無言で睨まれた時「自分は死ねばよかった、あの時の選択は間違っていた」と幼心に非常に傷つきました。
衝撃的で忘れられません。
自分の中の何かが死んでしまった様です。
年月が経ち、最近になってその出来事が自分で思うより相当深く影響している事が分かりました。
人を助ける機会を渇望している自分に気付いてしまったのです。
もしかしたら「事故の時に姉を助けられなかった自分を挽回しようとしている」のではないかと…。
常に自分の事は後回しにして譲り、犠牲になったりしてまでも助けてしまいます。
あの事故の時から「自分の判断はいつも間違っている」と思い「死んでいるはずの人間に権利は無い」と自信や肯定感を持てず、自分を軽んじます。
完璧でなければいけない焦燥感、人の何倍も働き苦しまなければ居てはいけない、いたたまれない気持ちがあります。
自分を犠牲にすることによって、ようやくこの世で生きる事を許される様な安堵感があるのです。
人が困ったり苦しんでいる姿を見るよりも、自分が苦しんだ方が苦しくないのです。
内向的な性格ですが人との距離感が上手く保てません。
人を助けても嫌われ蔑まれ、人並みの対人関係に憧れる一方で「自分なんか」という思いがあり人を遠ざけます。
うつ病、摂食障害、パニック障害、対人恐怖症なども経験したのですが、原因に潜在的な劣等感がある様な気がします。
本当に必要な時に、人を助けられる様になり、もう一度、ちゃんと生きてみたいです。
どうすれば、これらのトラウマを克服できるのか何か良い方法があれば教えて下さい。
宜しくお願いします。
カウンセラー
宮本恵
りつこさん、こんにちは。
ご相談ありがとうございます。
今回、担当をさせていただきます宮本恵と申します。
よろしくお願いします。>重度の知的障害の姉をもち、私は幼い頃から「姉の面倒をみる」という役目を任さ
れていました。

りつこさんは、幼少期からお姉さんの面倒を見てこられたんですね。
幼少期は、自分の面倒を見ることもままらない時期ですから、大変でしたね。
そうすることで、お姉さんも家族の皆さんも助けられたのでしょうね。

お姉さんの事故も、大変だったと思います。
あの事故によって、りつこさんの中の何かが死んでしまうくらいに、たくさん傷つ
き、たくさんご自身を責めてこられたのでしょうね。
そして、今もお姉さんを助けられなかったことを責め続けているのではないでしょう
か?
それは、とても辛く苦しいことだと思います。

心理学では、自分を責めて責めて責めきれなくなったときに、自分以外の誰かを責め
ると言われています。
ですから、りつこさんのお母さんは、りつこさんを責めたかったのではなくて、りつ
こさんのお母さんがお母さんをを責めて、責めて、責めきれなくなって、りつこさん
のせいだと言われたのかもしれません。
そのくらい、りつこさんもりつこさんのお母さんもご自身を責めてこられたのではな
いでしょうか。

>人を助ける機会を渇望している自分に気付いてしまったのです。
>もしかしたら「事故の時に姉を助けられなかった自分を挽回しようとしている」の
ではないかと…。

そのくらい、あの事故のときにお姉さんを助けてあげたかったのだと思います。

りつこさんの心の中に大きな十字架を背負った、傷だらけの4歳くらいのりつこさん
がいるのだと思います。
大人の私たちでも、判断を誤ることこともありますし、出来事が大きいと動けなく
なってしまうと思うんです。
4歳のりつこさんに背負わせるには、あまりに大きすぎる十字架なのではないでしょ
うか。
私は、4歳の頃のりつこさんが助けを求めているのだと思います。

もし、大人になったりつこさんの目の前に同じような境遇の4歳の女の子がいたとし
たら、どうしてあげたいでしょうか?

りつこさんの思いついたことから、りつこさんの心の中にいる4歳の頃のりつこさん
にやってあげてください。
まずは、4歳の頃のりつこさんを助けてあげましょう。

りつこさんの中にある罪悪感が人との距離をつくってしまいます。
ゆっくり、ゆっくり、4歳の頃のりつこさんの傷がなくなるように撫でてあげたり、
今お持ちの罪悪感を洗い流してあげたりするつもりで、接してあげてくださいね。

たくさん人を助けてこられたりつこさんですから、りつこさんが癒されたり、元気に
なったりした度合いだけ、りつこさんは今よりもっと、楽に簡単に人を助けることが
出来るようになりますし、人との距離も近づけることができます。
今まで感じてきた罪悪感を無罪とすることは、勇気がいることですし、一筋縄にはい
かないかもしれません。
そんなときは、私たちにお手伝いさせてください。
私たちと、乗り越えていきましょう。

りつこさんが少しでも、楽になりますように。
参考になりましたら、幸いです。
ご相談、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

人間関係の築き方・コミュニケーションのスキルアップ・個性を生かすことを得意とする。 お客さまのテーマを多角的な視点でとらえて分析することにより、新たな視点や心の気楽さを持つことが出来ると定評がある。ゆるぎない安心感の基盤を基に行うカウンセリングは、心のうちを語りやすいと評価が高い。