足の病気と自分の将来

相談者名
マコト
こんにちは。この4月から,大学2年になる者です。生まれつき足に病気があり(未熟児で生まれたことによる病気なのですが),将来への不安があります。その中でも特に今日お話ししたいのは,運転免許の問題です。私はどうも,免許を取ることに積極的になれないのです。病気の程度ですが,日常生活にはほぼ問題はありませんが,階段を利用する際は手すりを利用しないと厳しいなど,それでも若干の問題はあります。そして,小学校から高校まで体育の授業がありましたが,みんなと同じようには出来ませんでした。(小学校~高校までは普通の学校にいましたし,今も普通の大学におります。みんなと同じように勉強は出来ます。)また,自転車に乗ることも出来ません。漕ぐのは難しいです。
そんな中で,私は大学生になりました。大学生になると,皆が押し並べて,自動車の運転免許を取得します。今は乗らなくとも就活時や将来必要になるかもしれないから,との理由からです。車があれば便利だというのは私でも分かりますし,大学時代は比較的時間に余裕のある時代,ということも絡むかと思います。私は別に今すぐ欲しいというわけではないですし,逆に取得に不安さえ感じるのですけれども,免許の話を友人や先輩,今度同じ大学に入ってくる仲の良い後輩にされると,肩身の狭い思いがするのです。足の病気の事情をしている友人でさえ,「おまえは免許取らないの?」ですとか,両親にも,「免許を取りにいかないのか」と,言われます。「就職に必要だからそれでも取った方がよい」という先輩もいました。両親は,「免許があると便利だ」と,遠回しに言ってきます。その話をされる度に,足の病気がある里普通の人とは少し違うということを散々説明してきましたし,いくら運転が簡単だとはいえ(運転は簡単らしいです),足は使います。仮に免許を取得したとしても,事故を起こすリスクは高まるわけです。身体的作業を必要とするモノがダメなら,語学の検定試験などで資格面は補おうかな,とも思いますが,だからといって自動車が使えるほどの便利を獲得できるわけでもありません。どうしたらよいのか,分からずにいます。免許取得は難しいようだ。でも,これからの人生で自動車が必要だったり,そうでなくとも大変なことはいろいろあると思います。どうしたらよいでしょうか。
カウンセラー
小倉健太郎
マコトさん、はじめまして。
担当させて頂きます、小倉健太郎と申します。どうぞ、よろしくお願い致します。

「おまえは免許取らないの?」「免許を取りにいかないのか」

足に病気が無い普通の人にとっては何でもないこの会話も、マコトさんにとっては、残酷な言葉ですよね。
まして、マコトさんは生まれつき足に病気がある訳ですし、それなのに、両親にまで車の免許の事について言われてしまうなんて、本当に辛かったですね。

こんな事があると、自分はこの先も足の事でずっと苦労するのかと感じてしまい、将来の事まで不安になってしまいますよね。

「足に病気があるのは自分のせいじゃないのに。それでも自分はみんなと同じように過ごそうと懸命に頑張ってきたのに。それでも、どうしても出来ない事はある。なのにそれを理解してもらえないなんて・・・結局障害があると言う事は、世の中のお荷物と言うことなのか。」

もしかしたら、こんな気分になってしまったかもしれませんね。

マコトさんはこれまでの人生で、ハンディキャップを背負った人の人生が、いかに大変で厳しいかを学んでこられたのかもしれません。
そして、マコトさんだけではなく、ハンディキャップを背負った人と言うのは、その苦しみを健常者の人にはなかなか理解してもらえず、悩んでいる人もたくさんおられるんだろうなと思います。
なので、マコトさんや、同じようにハンディキャップを背負いながらも頑張って生きている人達が、少しでも楽になり、将来の不安が軽くなるにはどうしたらいいのか考えたいなと思いました。

それではどうぞ、よろしくお願い致します。

まず、周囲の人がマコトさんに運転免許を取るように薦めてくることに関してですが、この事について、もう少し深く考えてみませんか?
この言葉は、マコトさんをひどく苦しめたし、足に病気のあるマコトさんを傷つけた、無神経な言葉でした。
けれども私は、この言葉が、一方的にひどいだけの言葉だとは、どうしても思えないのです。

特に両親に関しては、誰よりもマコトさんの現状を把握されておられると思いますし、そんな人が言うからには、何か深い意味があるに違いないと思いました。
そして、それがどんな意味があるかと言うと、表面的な態度はどうであれ、心の中では、ご両親もまたマコトさんを未熟児で産んでしまったことを責めておられ、こんな風に考えているかもしれないなと思いました。

「未熟児で産んでしまってごめんね。その為に足に病気を抱え、苦労ばかりさせる事になってしまってごめんね。早く車の免許をとっておくれ。そうすれば、日々の移動は、今までよりずっと楽になると思うから。そして、そんな風になってくれたら、マコトを未熟児で産んでしまった罪悪感から解放されるかもしれないと思うから。」

もちろん、車の運転をする事は足を使うことであり、大変だと思います。そして、車の運転と言うのはリスクのあることだと思います。
けれども、周りの人が一体どんな気持ちでそんな事を言ったのか、勇気を出して、もう一歩理解を深めようとして頂けないでしょうか?
そして、騙されたっと思って、友人や両親にこんな風に聞いてみてもらえないでしょうか?

「どうして、車の免許をとれと言うの?」

両親でも友人でも誰でも構いません。でも、できればいろんな人に聞いてみて欲しいのです。
これは、マコトさんに車の免許を取得して欲しくて言っている訳ではありません。
ただ、どんな気持ちなのかをもっと知って欲しいなと思っただけです。そして、その気持ちを知ることが、マコトさんの”理解されない苦しみ”から抜け出すきっかけになるかもしれないと思ったからです。

また、マコトさんは運転免許が無いと就職に不利なのではないかと考えておられるようですが、現実は、それほど不利にはならないと思いますよ。
私自身、学生時代に多くの会社に面接に行って、運転免許を持っている事が有利になったと思えた事は一度もありませんでしたし、そもそも都会の会社の場合は特に、車よりも公共交通機関を利用することを推奨している場合の方が圧倒的に多いと思います。

これで、運転免許を取らなければいけないのではないかと言うプレッシャーは、少しは軽くなったでしょうか?
でも、友人や両親が運転免許についてあれこれと言った理由、よかったらそれは本当に聞いてみて下さいね。

それから、話が少し飛びますが、”チャームポイント”という言葉がありますよね。
これは、その人の”かわいいところ”つまり、愛されるポイントの事ですが、多くの場合、このチャームポイントと言うのは、その人の”欠点”や”短所”であるということは、ご存知ですか?
例えば、「ドジなところ。」「背がちっちゃいところ。」「八重歯があるところ。」など。

何故こんな話をするかと言うと、私は、マコトさんの足の病気は、多くの人から見て”チャームポイント”ではないのかなと思ったからです。

例えば、マコトさんは、階段の上り下りは、手すりを使うなど苦労されているのですよね?
そんな時、誰かにこんな事を聞いた事はあるでしょうか?

「肩、貸してもらえないかな?」

他にも、もしも重い荷物を持って移動しているときに、荷物を持ってもらうよう頼んでみたり、どこかに移動する際に車に乗せてもらうように頼んでみたり。
足に病気の無い人が頼めば少々ずうずうしいことでも、マコトさんであれば、きっと快く引き受けてくれるのではないかと思うのです。
そして、そんな風に頼んだときに、その人が自分に対してどんな目をしているのか、そして、そうしてもらった時にマコトさんはどんな気分になるのかを確認して欲しいのです。

いろいろと書きましたが、マコトさんは本当に頑張ってこられた方のように感じました。
もちろん今までは、そうやってチャレンジして、自分の可能性を試してきた事は、本当にいい事だと思います。

けれども、これから先も”ずっと一人で生きていこう”と考えているのでしたら、将来は不安で仕方の無い事の様に思えてしまうかもしれません。
そして、そんな不安は、もし、頑張って車の免許を取得したとしても、変わらないのでは無いのかなと思います。
けれども、”みんなで生きていこう”と考えることが出来たとしたら、そんな不安はだいぶ少なくなるのかなと思いました。
そして、その為には、マコトさんの足の病気は、役に立つかもしれません。多くの人から愛される”チャームポイント”として役にたつのです。

それから、最後に、マコトさんにひとつお聞きしたいことがあります。
マコトさんは将来が不安であると書かれていますが、では、どんな将来をお望みですか?
出来ればそれをもっと具体的に考えて、その理想の将来に向かっていって欲しいなと思いますよ。
もしかしたら、その理想の将来のためには、車の免許を取得するという事も必要な条件になってしまうかもしれませんが、その時は嫌々ではなく、自ら進んで頑張れると思いますよ。
何事も、人から言われてではなく、自ら主体性を持つことが大事ですね。

マコトさんの輝かしい将来をお祈りしていますね。そして、その為には、足の病気も役に立たせる事も出来る事はお忘れなく。
今回は、相談をして下さいましてありがとうございました。
何かしらの参考になりましたら幸いです。

この記事を書いたカウンセラー