自分は迷惑な存在?~原体験を見直して自己肯定しよう~

身の回りに起こったネガティブな出来事の多くを自分のせいと感じる人は、心のどこかに「自分は迷惑をかける存在」と感じています。

この感じ方は、多くの場合小さい頃の経験(原体験)に根ざしています。小さい頃は理解力や感情処理能力が十分に整っておらず、また様々な知識を習得する時期なので、状況の理解が十分にできない状態での記憶や感情が残るからです。

この原体験を見直し、それが勘違いであった事やそうなるには何らかの事情があった事を理解すると、自分は迷惑をかける存在ではないと自己肯定する事ができるようになります。また、同時に人には様々な事情があってそのような振る舞いをしている事がわかります。そして、身の回りに起こっている状況を正当に評価できるようになり、自分の問題と人の問題を分けて考えられるようになります。

◎リクエストを頂きました◎
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人を怒鳴りつけたり、聞こえよがしにぼろくそに言ったり、挨拶を強要するものの自分の機嫌が悪いと目も合わさず返事もしない、気分や機嫌によって指示が変わる上司がいます。そういうことをされるたびに、自分がものすごく無力で役に立たない人間で、いっそやめてしまった方がいいのではと落ち込み、だんだん気持ちの中で上司を受け入れることができず苦しくなっていきました。

相手が悪いのではなく自分が至らないのだ、自分が変わればよいのだからと思っても、気持ちが怯えて拒絶してしまい、顔には出ないものの(出てないと思うのですが)パニックを起こしてしまいどうしてよいか解りません。
他人からの攻撃をうまくかわしたり、顔色をうかがうことなく、平常心で仕事を続けるにはどうすればよいのでしょうか?
気持ちの切り替え方を教えていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
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1.人の気持ちと振る舞い

世の中には様々な人がいます。
怒りっぽい人もいれば、大きな気持ちで包み込んでくれるような人もいます。
また、人はその時の心の状態で様々な振る舞いをします。
普段は温和な人でも、嫌な事があったときにはブスッとしている場合もあります。あるいは、いつもは怒りっぽい人でも、何かいい事があって気分がよい時には優しく接してくれる事もあります。

ではなぜ、人は怒りっぽかったり、優しかったりするのでしょうか?

それは、その人がそのときに自分をどう扱っているかが他の人との関係にそのまま反映されるからなのです。

自分に優しくしていない人は、人にも優しくできません。なぜならば、自分を厳しく扱い責めているのですから、いつもピリピリしていて心に余裕が無いからです。
一方、自分に優しくしている人は、心に余裕があるので人にも優しく接する事ができるのです。

今回リクエストにある上司の方は、
怒りっぽいのは自分自身に対して怒っていて余裕がないから、聞こえよがしにぼろくそに言うのは自分自身に対して心の中でぼろくそに言っているから、という事になります。
このようなその人の振る舞いは、誰かのせいではなく、その人自身の心の問題なのです。

2.自分のせいと感じてしまう心の仕組み

しかし、このような状況であっても「自分が悪いのでは?」と感じてしまう心理パターン(心の癖)を持っておられる方がいます。客観的に冷静に見るとそうではないことが一目瞭然の場合でも、問題の渦中にいるときにはそう感じてしまうのです。
では、なぜそう感じてしまうのでしょうか?
その根本的な原因は、心のどこかで「自分は迷惑をかける存在」と感じている事です。
逆説的になりますが、もし自分は迷惑な存在と感じていなかったとしたら(そんな事気にしてもいなかったとしたら)誰がどんな言動をしようと気にならないのです。「へぇ~」という感じなのです。
「自分は迷惑をかける存在」と感じていると、身の回りに起こるネガティブな出来事は全て自分のせいと思ってしまうのです。例えば「隣の愛犬ポチが老衰で死んだのも、死ぬ前の日に頭をなでてやらなかった私のせい」という具合です。

ではどうして自分の事を迷惑をかける存在と感じてしまうのでしょうか?
これを突き詰めていくと、多くの場合、小さい頃の体験やそのときに感じた感情に根ざしています。
なぜ小さい頃の体験や感情が問題になるかというと、小さい頃は理解力や感情処理能力が十分に整っておらず、また様々な知識を習得する時期なので、状況の理解が十分にできない状態での記憶や感情(例えば、冗談を冗談と受け取れずにそのまま受け止めるなど)が残るからです。
この子供の頃の経験を原体験と言います。人は、原体験に通じる何かを経験したときに、同じパターンで同じ感情に入り、その体験を再現するような状況を作ります。
失恋が同じパターンになったり、人間関係が同じパターンで崩壊してゆくのもそのためなのです。

「私は迷惑をかける存在」と感じる原体験の例としては、両親の仲が余り良くなくて、それは私が居るからと感じたから、親の仕事が忙しくて大切にしてもらえないと感じて、私は親に愛されていない、私は邪魔な存在なんだと感じたから、あるいはお母さんがとても頑張っていて、私は助けられないばかりか逆に迷惑をかけていると感じたからなど枚挙にいとまがありません。この原体験のパターンは人により様々です。そして、同じ状況があったからといって、それが原体験になるかどうかも人により異なります。また、この原体験自体はは既に忘れてしまっている場合もとても多いのですが、自分が原因で人に迷惑をかけるという気持ちが残ってしまうのです。
そしてその結果、人との距離をとって迷惑をかけないようにしてみたり、人のせいではなく自分のせいとしてその状況の責任を一手に引き受けてしまったりします。

3.自分を肯定しよう

元々、自分は迷惑な存在と感じたのは原体験に根ざしている事をお話ししましたが、その多くは勘違いからきています。
大人になった今、子供の頃の家庭の状況、例えばご両親がどんな状況だったかなどを考えてみると、そう感じてしまった何らかの事情があった事に気づく事が出来るのではないでしょうか?
親も神様ではなく人間だった事に気づくのではないでしょうか?
そして、決して自分は迷惑な存在ではなかった事を理解できるのではないでしょうか?
それが理解できると、自分は迷惑をかける存在ではないと自己肯定ができるようになり、同時に人には様々な事情があってそのような振る舞いをしている事がわかります。あの上司も、です。
このように自己否定から自己肯定へ気持ちを切り替えると、身の回りに起こっている状況を正当に評価できるようになります。そして、どんな問題でも自分のせいとの捉え方から、自分の問題と人の問題を分けて考えられるようになります。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。