対人関係の「ちょうどいい」~職場の心理学~

職場や友人など多くの人たちと関わりながら生活をしている私たちにとって対人関係という環境は心に大きな影響を与えるものです。

一緒にいると気持ちが落ち着いて、安心できる。そんな対人関係を家庭や職場で築くことができれば人生はとても豊かになるでしょう。いっぽう、そばにいるとイライラしたり何だか疲れてしまう関係というのもあります。

そんな環境にあると知らず知らずのうちに心のは磨り減ってストレスがたまってしまう。今回のリクエスト特集では「自分からは会話をしようとしない」ちょっと困った同僚とうまく付き合う方法について考えてみます。

◎リクエストを頂きました◎
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職場に新しく入って来た人が、話しかけられないと話さないタイプの人です。
私の隣の席になったので私から話しかけたりしていますが、早くも相手するのが面倒になって来ました。相手から会話を振ってくることがないので、「話しかけ役」を私が100%担うのが負担ですし、なんとか話のネタを探して会話しても、徒労感があるだけで全然楽しくないです。

この場合、仕事に支障がない程度のコミュニケーションさえ取れれば良しとしてもよいでしょうか。自分の気持ちとしては、もうこの人と関わるのは最小限にしたい気分なのですが、相手は新人だし周りが気を遣ってあげるべきなのではないか?とも思います。(でも楽しくないです。会話がんばるのイヤです。)
ちなみに、職場の他メンバーで、その人と話すのに意欲的な人はいません。無理に会話しなくてもね、という感じで静観してる様子です。
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なぜか気になる相手

誰にでも心の落ち着く場所や安心できる居場所というのがあると思いますが、私たちの心は環境の影響を受けて和んだり緊張したりするものです。

そしてそんな私たちの心にもっとも大きな影響を与えるもののひとつが対人関係という環境。家族や友人はもちろん、職場の同僚や、挨拶を交わす程度の知人まで、私たちは大小さまざまな対人関係の影響を受けながら生活しています。

中にはそれほど近しいわけでもないのに「何だか気になってしまう相手」というのもあって、そんな相手との関係ほどジワジワと、時にチクチクと私たちの心に影響を与えてきます。「自分から会話をしない同僚」というのも「何だか気になってしまう相手」のひとりといるかもしれません。今回はそんな、ちょっと心に引っかかる相手との付き合い方について考えてみたいと思います。

まず、「話しかけられないと自分からは話さない」確かに一緒に働く相手としては気を遣うタイプの同僚といえます。それが部下ならコミュニケーションのあり方を注意することもできるかもしれませんが、同僚だとそれも難しい。余計なことをと煙たがられてもつまらないし、ウザいなんて思われたらたまらない。

それなら他の同僚と同じく放っておければいいのだけれどそれもどうかと考えてしまう。気にしなければいいのにと思うけれどなぜかそれもできない。

こんな時、自分も相手も居心地の良い関係を築くにはどうすればよいか?と思い悩む前に考えてみたいのですが、そもそもそんな相手とより良い関係を築くことがあなたにとってどれほど重要でなことでしょうか?「なんだか気になってしまう」という関係のやっかいなところは、本当はそれほど重要ではないはずなのに、知らないうちに心の大部分を占められていていること。それってとてももったいないことです。

対人関係と共感

対人関係のベースになっているのは「好意」と「共感」です。好意は警戒心を和らげ、親密感を育む上で大切ですし、共感は相手を理解するうえで重要な役割を担います。ところがこの「共感」が時に対人関係をやっかいなものにしてしまうんです。

私たちは自身が経験してきた出来事を通して自分なりの見方、考え方、感じ方を身につけてきます。だからこそ同じものを見ても、それをどのように解釈するかは人それぞれ。けれど、時として私たちは共感する能力を発揮して相手の見方、考え方、感じ方まで理解しようと努力をしていることがあるのです。

もちろんそれは悪いことではなく、良好な対人関係を育むために大切です。ある対人関係の調査によれば挫折を経験してきた人ほど他者の失敗に寛大な態度を示す傾向があり、孤独を経験してきた人ほど仲間を大切にするそうです。これは困難を経験した人ほど、同じ境遇にある人に共感を与え、理解することができるということを表しています。けれど、時としてそんな努力が私たちと相手の距離感を過剰に近づけてしまうのです。

対人関係の「ちょうどいい」

業務を越えて同僚とのコミュニケーションを大切にする人は、不慣れな職場で話し相手も少ない同僚へ同情的な気持ちを抱くでしょう。そしていっぽうでは、マイペースに自分からは会話をしない態度には違和感や反感を覚えるかもしれません。

ここで大切なのは、自分と相手との「ちょうどいい距離感」を見つけること。

思い遣る気持ちが強いほど、相手のことが心配になって気を揉んでしまいますが、たとえあなたが心配するような態度をとることでその人が苦労したとしても、それは本人の責任。あなたが思い悩む必要も頑張ってあげる必要もありません。

まさに、仕事に支障がない程度のコミュニケーションさえ取れれば「良し」なのです。

私たちは人と人の環境に影響を受けながら生活をしています。よりよい関係を維持するためにどちらかが過剰な努力をしなければならない関係と言うのは自然な環境とはいえません。

自分のテリトリーと相手のテリトリーとを分けて考える。

親密感が育む対人関係もあれば、「ちょうどいい」距離感を保つことが良好な関係を育むこともある。思いやりがあってついつい相手の気持ちに立って考えてしまうというあなたにおすすめの考え方です。是非実践してみてください。

(完)

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