わが子の変化に気づいたら
夜遅くまで机に向かうわが子。でも、最近目がうつろで朝も全然起きられない。本当にこれでいいのだろうか。
受験は、本来子ども自身の目標に努力する大切な経験。学びや成長をもたらしてくれるものです。でも、プレッシャーが大きくなりすぎると、心が悲鳴をあげてしまうこともあるのです。
そんなお子さんのSOSに気付いたとき、親として胸が締め付けられるような気持ちになることはありませんか。
「学歴がすべて」と信じていた私
かつての私も「学歴こそが人の価値」と思っていました。幼いころから「学歴があって当たり前」の家庭で育ち、大学受験も当然の道。親の期待に応えたくて、がむしゃらに受験を頑張りました。
ところが、受験が終わって大学に通うと、心が燃え尽きてしまったのです。いわゆる「受験うつ」を、私も経験したのです。
・待っていたのは、自己否定
ネイティブの授業についていけない。これまでと勉強のしかたが全く違う。友達の輪に背伸びをしないと入れない。現実の壁にぶつかりました。
辛かった受験時代に夢見た「華やかな未来」は、あっという間に失望に黒く染まっていきました。
追い打ちをかけたのは、両親の言葉。「頑張ったね」ではなく、「卒業までしっかりね」。次の課題を課された気がして「まだ頑張りが足りない」と、思い込んでしまったのです。
「もう頑張りたくない。もう、無理。お願い、もう私になにも期待しないで」
心も体も限界を越え、私は過食に走りました。食べることでしか、空っぽの心を埋められなかったのです。鏡を見るのも辛いほど醜く太っていき、外に出られなくなってしまいました。大学には行けなくなり、ひきこもりました。
「学歴」は、私の心を、守ってはくれなかったのです。
救ってくれたのは、母の涙
「生きているのが辛い。なんで私なんかを産んだの!!」
泣きながら自分のうまくいかなさを母にぶつけました。母は私を抱きしめながら
「どんなあなたも生きていていい。ごめんね、勉強しろとばかり言ってしまった。
もっとのびのび、あなたらしく育ててあげればよかった」
と、涙ながらに言ってくれました。
その瞬間、私は生まれて初めて「ありのままの自分が愛されていた」と、頭ではなく、体と心で感じました。
・無条件の愛という命綱
「私は生きていてもいい」
この絶対的な安心感が、私をもう一度、生きる方向へと導いてくれたのです。
大学には戻れず中退しましたが、社会人としてもう一度立ち上がろうと思えたのです。母の無条件の愛という命綱があったからです。
お子さんがつぶれそうなら
お子さんが受験の重圧でつぶれそうなら、親にしかわからない限界のサインがあります。
まるで専属の主治医が患者さんの状態をよく見て、ドクターストップをかけるように。勇気をもって「立ち止まらせてあげること」も、深い愛のかたちです。
今では「受験うつ外来」という言葉があるほど、子どもたちは想像以上にプレッシャーや孤独を感じているケースもあります。
気づけるのは親だからこそ、なのです。もしお子さんが辛そうなら、一緒にたちどまってあげてみませんか?無理に前へ進むことより、心を守ることが大切な一歩になることがあります。
親の苦しみと愛
とはいえ、子どもが苦しいとき。一番苦しいのは、実は親のほうかもしれません。
「私の育て方が悪かったのかな」
「どうして、うまくいかないのだろう」
自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
心では子どもを休ませてあげたいのに、つい
「もっと頑張れるでしょ」
と、言ってしまう。そんなご自身に、本当は罪悪感を感じているのかもしれません。
そこには
「子育てで失敗したくない」「なんとか支えなきゃ」
という恐れがあるのかもしれません。
でも、一番思っているのは
「誰よりも子どもを幸せにしたい」
と願っている。そこに愛があるのだと思うのです。
・子どもの苦しみと愛
子どももまた、親を愛しているから頑張ります。
言葉にはしなくても
「パパとママが笑っていてほしい。安心してほしい」
と、心から親の幸せを願っているのです。それはお子さんからの愛です。
でも、苦しみが強くなれば、親への愛を上手に表現できくなり、泣いたり、八つ当たりしたり、閉じこもったりすることもあるのです。
そのと行動の奥にあるのは、助けを求める叫びです。
「わかってほしい」「助けてほしい」「心から愛してほしい」
という声です。
親御さんが今すぐできること
もし、お子さんが苦しんでいるなら。
それは「パパママ、私もう頑張れない」
という声であると同時に
「本当は、パパもママも、もう頑張れないほど、頑張りすぎている」
というメッセージかもしれません。
だとしたらまずは親御さん自身から肩の力を抜いて
「本当によくここまでよく頑張ってきた」
と、自分を認めてあげませんか。
そして、
「自分自身も、結果や世間体ばかりに縛られず、私も、私らしく生きていい」
と、自分を許してあげませんか。
親が自分自身を愛し、大切にする姿こそが、お子さんにあげられる「最高の贈り物」です。
なぜなら、お子さんは
「どうか自分自身を愛してあげて。パパとママを私は愛しているから」
という最高の贈り物をしたい、伝えたいと思っているからです。
どうか、お子さんからの愛、まっすぐに受け取ってあげてください。
無条件の愛という安全基地
最後に、お子さんにまっすぐな愛を渡しませんか?
結果ではなく、存在を丸ごと包み込む愛。「合格したら」「卒業したら」といった「条件付きの愛」ではなく。
「受験や結果にかかわらず、あなたはあなたでいい。あなたがあなたで生きていてくれさえいればいい。あなたは、大切な存在」
この無条件の愛こそが、お子さんのつぶれそうな心をそっとやわらかく包み込む何より強い安全基地となります。この絶対的な安心感こそが、お子さん自身で立ち上がる力を再び育んでくれるのです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。みなさまのなにかのお役にたてたらうれしいです。
来週は小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。