「最悪」に立ち向かう力をつけるイメージワーク~ハイ・ドリームとロー・ドリームを知る~

東日本大震災のとき、しきりに「想定外」という言葉が使われました。最近では、実は「想定外」ではなく、専門家からは防災面の不備については指摘されていたにもかかわらず、そんな「最悪の事態は起きない」との前提で取り上げられなかったという報道もあります。昔から「臭いものに蓋をする」と言うように、私たちの心には、見たくないものは見ないようにする仕組みがあります。心が壊れてしまわないようにと心を守る防衛規制の一つで、いつもの生活を続けるために感情をコントロールするのに大事な機能ですが、非常時に適切な対応を指揮することが求められるビジネスリーダーは、それではすみません。自分が欲しいものを具体的にイメージすると手に入りやすい、とよく言われます。これは、人の心は未知のものを怖いと感じるため、それがたとえいいことであったとしても、それがどういう状況を引き起こすか分からないと不安や恐怖の方が先に立ってしまいます。でも、本当に欲しいものを手に入れたときにどれほど幸せか、どんなに楽しいかを予め感じる準備をしていれば、それは心にとって現実の延長線上の目標になり、具体的な努力に集中できるため、自然と達成できる可能性も高くなります。こうした自分に起こりうる最高に幸せな夢を「ハイ・ドリーム」とか「ヴィジョン」と呼び、それを手に入れたときの自分の状況を何度もイメージすることで、心の経験値を上げて、怖れを克服するイメージワークは、多くの一流アスリートに活用されています。

「想定外」を「想定内」にするイメージワークには、この「起こりうる最高に幸せ」な結果を引き寄せるためのものと同時に、「最悪の事態」にどう対処するかという「ロー・ドリーム」のシミュレーションもあります。起こりうる「最高」に慣れると同時に、「最悪」に対処する心の力を養うメンタル・トレーニングです。マーケティング予算をかけたのに思ったほど商品が売れなかった、工場を建てたのに予定の注文が入らなかった、大事なプレゼンを失敗した等、手がけている仕事が最悪の状況に陥ったときの自分を想像し、最悪の状況の中で最善の策を打つところをイメージします。そのような悪条件の中で立派に対処する自分に誇りを感じられるまで、「対応できる自分」をくりかえしイメージします。イタリアのインテルで活躍するプロサッカーの長友祐都選手も、このイメージトレーニングを繰り返すことで、ゴール前でボールをとられたときの対応力が増したと報道されていましたね。

「最高」を求めて「ハイ・ドリーム」ばかりをイメージしても、それが「失敗するかもしれないという不安を押し殺したとすれば、見ないふりをした「不安」は心の中で増幅され、ほんの少しの失敗にも慌てふためくことになりかねません。

お化けが怖いのは目に見えないうちだと言いますが、「怖れ」という感情も似たところがあってしっかりと見ることで、逆に平静を取り戻し、失敗の連鎖を防ぐことができます。

強いプレッシャーにさらされているとき、自分の能力を出し切るためにも、是非、活用してみてください。

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