心も日常生活に復帰しましょう~危険な職務の一線から身を引いた後に~

国内外を問わず危険な職務の最前線や赴任期間の長短に関わりなく、任務中に
抱えたトラウマの感情に悩まされる人、あるいは周囲にそのような方がいる人
向けの内容です。最前線を離れても日常生活になじめなかったり、社会復帰し
きれない方もおられるかもしれません。少しでもお役にたてればと思います。
危険な職務と言えば、どんな仕事が思い浮かぶでしょうか?私・向井はかつて
建築業で、作業場搬出入の大型車両誘導をやってました。十屯ダンプ・十屯生
コンミキサーやトラック、二十五屯超のトレーラーやクレーン車などの相手を
しました。海外に目を向けると軍隊。紛争地やライフライン未整備の地域で生
活支援やボランティアにいく方もいるでしょう。これら以外にも、いろんなも
のがあると思います。


集まる人たちのバックグラウンドも様々です。仕事がなくて食いつなぐために
選んだ、危ない代わりにそこそこの給料が出るなど。中には平和な世界で安寧
な生活を送ることに不公平感を感じ、争いが続く地域に身を投じて貧困や病気
の人たちに寄り添い、助けることで世界を変えるため自ら志願するんだ、って
方もおられます。
私はこの種のテーマを「危険な職務の一線から身を引いた後のPTSD(心的
外傷後ストレス障害)」と呼びます。どういったタイプの方がなりやすいかは
まだなんとも断定できない部分がありますが、全員が抱え込むとは限らないこ
とは確かなようです。抱え込むきっかけは2パターンあります。激しい危険に
直面した場合と、危険度は低くても繰り返し恐怖を体験した場合です。私のよ
うな近隣の方々が反対するにも関わらず、物件立ち上げを目指す強制着工の作
業場中心に通い続けた者は後者のパターンです。
これらのパターンがもとで悩まされる感情の問題は、退役・もしくは在職中の
軍人の方が抱えた感情の問題とほぼ同じでした。現状の具体例をあげる際、海
外の軍人さん達の例と合わせもって紹介せざるを得ない状況を御理解くださる
と幸いです。日本ではまだまだ一般的ではないからです。
★DVDでは「ランボー」「7月4日に生まれて」「大空港」の退役軍人・ゲ
レロが、参考になりやすいのではないかと存じます。
さらにこのPTSDには3つの特徴があります。1つ目は恐怖体験から悪夢を
見て怖れを感じる。2つ目は外傷体験から逃れようとし、抑圧しすぎて何も感
じなくなってしまう、あるいは、体験をうけとめきれず防御して何も感じない
(記憶がない)。3つ目は常にイライラ・怒りっぽい、感情を刺激するような
ものに過敏に反応する、です。さらに共通する特徴として仮に強い人のふりを
したり、何事もないように平気にしてても、内心は臆病で怖がってると思って
もらっていいと思います。顔つきも険しい感じに変わったり。
現場では砲弾や重機など常に緊張を強いられ、神経を張り詰めて気の休まる暇
がありません。多くの方が現場から退いたら「静かで穏やかでリラックスでき
る場所で暮らしたい。」と、おっしゃいます。私もそうでした。しかし、一瞬
の油断や判断ミスが大怪我や殉職につながりかねない中で、わが身がいつどう
なるかわからない緊迫感を感じ続けると、いざ日常生活に戻った時まるで別世
界みたいに感じ、日々の何気ないことにも、喜怒哀楽を見出せなくなるほど価
値観を感じられませんでした。私共の理論で説明しますとこんな感じです。
◆「無価値感」・・・日常生活に価値感を見出せないことからくる無価値感。
   ↓
◆「罪悪感」・・・喜怒哀楽を共有できない、あるいは自分の体験談を共有し
てもらえない・共有してもらえそうもないヒドい人間になったと自分を責めた
り罰する。もしくはPTSDによる記憶や感情に悩まされるような自分は、一
般の市民生活を送る人と違って、もはや以前のような市民生活を送れなくなる
ような選択を自分で選んだ、自分の値打ちや価値を下げてしまったと自己攻撃
をする。
   ↓
◆「特別意識」・・・(本人は気付きにくいかもしれませんが)上記のように
以前のような市民生活を送れなくなった、特別な存在と見てもらうことを求め
る。
   ↓
◆分離感・・・自分のいる平和な世界が、自らにふさわしくない、まるで別世
界に感じる。
このタイプの人は、大声や怒鳴り声・大音響など感情や記憶を強く刺激するよ
うなものには、身を守ろうとうするマインドを働かせ、その場を離れようとし
たり、ガマンが限度を超えたらその気はないのに手を出してしまったとか、自
殺が絶えない、アルコール依存や薬物中毒などのトラブルを起こすことがあり
ます。怖いと感じるからです。怖さを紛らわそうとしたり、感じないようにし
ようとしたり・・・。特に米国ではベトナム戦争以降、PTSD帰還兵の方が
いる御家庭で、よく起きてるようです。
怖い経験をいっぱいすると、口数が少なくなります。コミュニケーションをと
る時、問いかけにも素っ気ない返事しかかえってこないことも、あるかもしれ
ません。そんな時でも聞いてきた人のことを「無視してる・バカにしてる」よ
うなことは、まずないと思います。繰り返し申し上げるように、つねに臆病に
なってる人だと理解してあげてください。ハラがたつこともあるかもしれませ
んが、何か伝えたい時には「感情的にぶつけない=怖がらせない」が必要だと
思います。
また分離感を感じてるので、心まで日常生活に完全に復帰するには、私の経験
で申し上げると・・・それでも少しづつ少しづつ、じっくりなじんでいく必要
があります。やっていくうちに、なじめないって場合は、軍関係の方なら現場
復帰したり、海外で傭兵や民間軍事会社などへ行く方も実際にいます。私のよ
うな建築業にいたものも、現場へ戻ろうとした時期がありましたが、業界の市
場収縮で仕事が減り、断念した一方、毎日自分が翌日も無事かどうかの不安か
ら解放されたい人が多数おられるのも確かです。したがって現場を離れて心ま
で完全に日常生活に戻るかどうかは、本人が決めたほうがよいと、私は考えま
す。そのかわり「戻らない」と決めたら、決心をゆるがせない強い決意が必要
です。それこそコミットメントです。
そんな場合でも時には「平和な生活にはやっぱり溶け込めない」「喜怒哀楽の
感情を感じられる人らしさなんてどこかに置き忘れてしまった!捨ててしまっ
た!」なんて叫んで、前へ踏み出す歩みを阻もうとするワナやエゴがささやく
ことがありますが、惑わされないで下さい。
当の本人は、自分がやってきたことには何の意味もない、自分を粗末に扱って
自分の値打ち(価値)を下げるようなことをやってしまったと感じてます。決
してムダじゃなかったし、意味がないわけじゃなかったと価値を見出すことが
無価値感やその他の感情を癒すプロセスへとつながります。
身近にこういった方がおられる場合は、できるだけいつも穏やかで、優しい気
持ちで接するようにして支えてあげてください。上手く気分転換をしたり、よ
くがんばった時には自分をほめたりなど。支える側の方の心のメンテナンスや
ケアも大切です。どうやらこの手のテーマにも、自分を大切にする「自己愛」
は欠かせないようです。PTSDを抱えた方、抱えた方を支える周囲の方、ど
ちらにも必要だと思います。
自己愛は自分以外の存在、つまり相手の人や他人の存在を意識し、大切にする
他己愛(たこあい)へと続く、日常生活や社会ともつながりを持てる道を開く
ことでしょう。
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