ファミリーシップを見直す(2)~世界に発信、あなたにできること~

先日、NHKの連続特集で、戦争兵士たちの心の傷についての番組がありました。
どちらかというと、争いごとにはクールな私、したがって、普段はこういっ
た内容の番組を見るということはありません。
しかし、今回は友人の強い薦めにより、見ることにしたのでした。
それは、悲しい現実でした。
器質的な異常は見当たらないのに、全身が剛直して痙攣したままの帰還兵。
目に焼きついた光景を何度も思い出し、罪悪感のあまりに、自分の子供を
愛することができない母親。
恐怖から、アルコールに溺れ、ごく親しいひととしか接することのできない
帰還兵。


心理学にはさまざまな流派がありますが、私が学んでいる心理学のひとつに、
戦争兵士たちのPTSDのリハビリを目的に開発されたものがあります。
さらに、より早い効果を求められ、多くの臨床ケースをモデルに、研究が
なされたものです。
この心理学の創始者は現在もなお、世界につながりをもたらすために各国で
セミナーを行い、この心理学もまた、進化を続けています。
NHK特集を見ながら、もう、戦争経験者は少なくなっているけれど、戦争に
よる痛みというものは、どこかで日本人の心に残っているのかもしれない、
と感じました。
敗戦によるハートブレイク、強いものに巻かれるしかなかった非力な状況は
依存による痛みをもたらします。
もちろん、当時は、絶対服従こそが生き延びるための知恵であったはずです。
しかし、一方ではこの痛みから、私たちは競争に勝つことに意味があるのだ、
と教育されてきたように思います。
学校教育、一流企業、一流の人物。
競争に勝って勝って、勝ち抜いて。
勝ち組、負け組み、という言葉まで生まれました。
やがて問題になったのは燃え尽きです。
私たち日本人は、燃え尽きは、まるで「死」のように感じてしまいます。
敗戦した日本と自分のイメージが重なるのかもしれません。
もちろん、私たちの世代のほとんどは戦争を知りません。
それでも、どこかで終戦直後の惨めさ、勝たなければならないという「痛み」
や「恐怖」は形を変えながらも、「感覚的なもの」として受け継がれたのかも
しれません。
その裏で、いつまでも親にパラサイトしたり、ニート、フリーターといった
次の世代が顔を覗かせます。
子供たちには苦労をさせたくない親たちが、競争に勝ち続けて燃え尽きた
ように、子供たちははじめから燃え尽きたように、今度は競争をやめて
無気力になっているようです。
まるで、何かのいたずらのように、振り子が左右にふれるように、競争に
勝つことにすべてをおいたり、競争しないことに人生を賭けてしまったり。
どちらも、ベースは同じ痛みなんですね。
心理学用語で、自分の中にある、とりわけ見たくない性質をシャドウと
いいます。
心はアンビバレンスな二面性を持っていますが、私たちの心は、自分が
得意な性質を自分が引き受け、そうでないもう片方を誰かに投影(映し出す、
重ねて見る)します。
自分の中に認めたくない部分は、排除したくなり、戦争が起こります。
けれども、認めたくない、あの嫌な性質は、自分にもあるのです。
自分が敵だと思って消そうとする相手は、実は自分なのです。
私たちが普段抱えている問題も、必ず、何かしらの分裂から起こります。
心の中に、二つの相反するものがあるとき、葛藤が起こります。
ハートの中で戦争が起こっているのです。
競争に勝とうとすることは、相手をコントロールする試みです。
私たちは、成功をコントロールすることはできません。
コントロールできるのは、破壊だけなのです。
分裂ではなく統合が、競争ではなく平和が、ちっぽけな意地やプライドより
も真実の望みが、私たちを愛へと導いてくれるのです。
あなたは、破壊を望みますか。
それとも、愛を選択するでしょうか。
私たちの誰かが、心の戦争を終わらせたら。
私たちは長い戦いの旅を終えて、ようやくホームに帰ることができるのです。
ふるさとに帰り、愛する家族と抱き合うことができたら、どれほどの安心と
親密感が感じられるでしょうか。
セラピーの現場では、例えばご両親との間に問題があった場合、実際の
ご両親がその場にいなくても、ご両親との間にあった愛情(の感覚)を取り
戻すことができます。
けれども、感覚を取り戻しながら、いつかは、実際の親を受け入れて、より
よくなっていくことが求められます。
現実をよくする、セラピーはそのためにあります。
もちろん、中にはどうしても両親との折り合いが悪い方もいらっしゃいます
ので、必ずしも現実レベルで理解しあえる、またはしなければならないと
いうわけではありませんが。
父親を亡くした友人は、ずっと反抗することができなかった母親と、お酒の
チカラを借りてバトルを繰り広げたそうです。
たとえ、恨み言であっても、ののしりあいになったとしても、それが生きて
いる親とできる、っていうことはしあわせなことなんだと思う、と。
そんな風に、つぶやいていました。
マザーテレサの有名な言葉があります。
ノーベル平和賞受賞の際、
「世界平和のために私達はどんな事をしたらいいですか」
とインタビューで問われたときのものです。
まさに自分の身近から、平和は始まるのだと感じられます。
今の私たちにできること。
「帰って、あなたの家族を大切にしてあげてください」
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