やりたいことを先延ばしにしてしまうとき 〜何を恐れているのか〜

みなさんは、新しいことにチャレンジするとき、とりあえずやってみようとすぐに動けるタイプですか。
それとも慎重になるタイプでしょうか。
いつかやりたいと思っていたのに、いざ時間ができても先延ばししてしまうことはありますか。

私は会社に数年勤めた後、個人事業主として働くようになりました。
会社員生活のときには、毎朝早起きをして、満員電車に揺られて、オフィスに向かう生活に馴染めませんでした。
だから、自分で働く時間や場所を決められる働き方に憧れていました。

当時、フリーランスをしておられる方に「私もいつか自分でビジネスをしてみたいんです」と話したことがありました。
すると、その方は「やってみたらいいじゃないですか」と、こともなげに言うのです。
そんな簡単に言われても困る。独立するにしても、必要な知識を学んだり、経験を積んだり、しっかり準備する必要があるはずだ。でも、今は仕事が忙しいし、時間もとれないし、取り組むにしてもきっと先になるだろう、と思っていました。

ところが数年後、会社を離れて、時間ができたにもかかわらず、状況は進展しませんでした。
時間ができたらやろうと思っていたことに、なかなか手をつけられなかったんです。
やりたいって思っていたはずなのに、全く気が進まない。
私のやりたい気持ちはニセモノだったのかなと考えこんでしまいました。

やりたいと思いながらも行動できないとき、「恐れ」がブレーキをかけていることが多いものです。

経験もない、秀でた能力もない自分がうまくいくわけない。
今までは会社が守ってくれたけど、安定して生活できるのか。
周りの人から白い目を向けられるんじゃないか。
失敗して恥をかいたらどうしよう。
つい悪い想像ばかりがうかんで、一歩が重くなってしまいます。

「恐れ」というと、よくない感情のように思われるかもしれませんが、悪いものではありません。恐れているからこそ、望まない事態にならないように前もって準備をしたり、リスクに対処ができます。自分を守ってくれる感情でもあります。
一方で、恐れが強すぎるほど慎重になり、「ちゃんとやらなきゃ」と完璧主義になりやすいです。

失敗しないためには、しっかり準備しなければならない。
認めてもらうには、素晴らしいものを提供しなければならない。
どんどんハードルがあがってしまい、行動することが面倒になります。
そして、絶対にうまくいくことにしか意欲がわかなくなってしまうのです。

自分ではやりたいと思っているはずなのに、1歩が踏み出せないときには、「自分は何を恐れているんだろうか」と問いかけるといいかもしれません。

不十分な自分ではうまくいかない。
ちゃんとやらなきゃ、受け入れてもらえない。
もしかしたら、自信がない自分に気づくかもしれません。
自信がない分だけ、ものすごく大きな努力や苦労をしないと、成功しないと思い込んでいるのかもしれません。
高いハードルを自分に求めてはいないでしょうか。
そんな恐れに気づいて認めるだけでも、心は安心します。
怖いから立ち止まってもいいし、恐がりながら動いてもいい。
今の気持ちを受け入れた上で、どうしたいのかを選ぶことができます。

そして、ぜひ「不十分な見本」を探してみてください。
「これなら私にもできるかも」と感じられる見本を探すこと。手が届きそうだって感じられると、やってみる意欲につながります。
例えば、はじめて楽器を弾いてみようと思ったとき、その道で何年もやってきたプロの演奏を見本にしようとすれば、「無理!」となってしまいます。
でも今日始めたばかりの初心者の演奏をであれば、「これくらいなら簡単そう」「一回やってみようかな」と感じられるのではないでしょうか。

私は、自分と同じように駆け出しの友人から、仕事の練習につきあってほしいと頼まれたことがありました。
始めたばかりですから、もちろん完璧な仕事ぶりではありません。
それでも、友人は依頼相手を見つけて、仕事を受けていました。
私が、うまくできるようになるまで、自信がもてるまで、しっかり準備しなければいけないと足踏みしている間に、その友人は荒削りでも実績をかさねていました。
その姿に、「自信がないままでやっていい」と、許可をおろしてもらったのです。

やりたいはずなのに動けないとき、何かを恐れて動けなくなっているのかもしれません。
まずは自分の気持ちを認めて、安心させてあげましょう。
そして、完璧ではない見本から学んでみませんか。
背伸びしなくても、今の自分でできそうなことが見つかるほど、やりたいことへの一歩が踏み出しやすくなっていきます。

この記事を書いたカウンセラー

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人間関係、自己嫌悪、家族関係、仕事などの相談を主に扱う。じっくりと話を聴きながら、そのままの自分でもっと楽に自由になれる道筋を一緒に見出していくサポートを行う。 お客さまの個性やペースを尊重し、いつでも味方でいることを大切にしており、「話していて安心できる」「心の深いところをわかってもらえた」と好評である。