子どもに優しくできない 〜虐待を受けていた影響からの解放〜

子どもに優しくできないというご相談から

子どもに優しくしたいのに優しくできない、抱きしめてあげたいのに抱きしめられない、そんな悩みのお母さんがご相談にこられました。原因を見て究明していくと、そのお母さんが昔虐待を受けていて心が傷が癒えていなかったことが、子育てに影を落としていたことがわかりました。

■子どもに優しくしたいのに優しくできない

A子さんは2人の幼い女の子のお母さんでした。
A子さんの悩みは長女に対してつらくあたるような言動をとってしまうことでした。

例えば、公園に遊びにいき帰宅する時間になったのでひきあげようとする時に長女が「もっと遊んでいきたい」と泣いてぐずったりするとイラッときてしまい「泣いたら言うこと聞いてもらえると思うなよ」とすごむような口調で言ってしまうとのことです。
しかし、同じ事を次女がしてもイラッとこずに「じゃあ、あと5分だけね」と次女のぐずるのを許容してあげれるとのことでした。

長女につらくあたった後に、長女にだけ優しくしてあげられないことに強烈な自己嫌悪に襲われるとのことでした。
すごく自分を責めているとのことでした。

つらく当たることだけではなく、次女と同じ対応ではないことで長女は傷ついているんじゃ無いか?ということも気にされていました。

そして、次こそは優しくしようと思うのですが、いざその状況になると感情的になり同じことをしてしまうとことでした。
頭では優しくしたいという意思があるのに上手くできないとのことでした。

他には長女が甘えてくるとイラッとしてしまうとのことでした。
イラッときて突き放したくなる衝動を抑えて「お母さんは今は忙しいからお父さんと遊んでなさい」などと煙にまいてごまかすようにしているとのことです。
そして甘えてきた時に抱きしめて挙げられないことを悩んでいました。
次女に対しては甘えてきた時に抱きしめてあげられるとことでした。

本当は、長女に優しくしてあげたいのに優しくしてあげらない。
本当は、長女が甘えてきた時に抱きしめてあげたいのに抱きしめれあげられない。
本当は、次女との対応の違いを作って、そのことで長女が傷つかないようにしたいのに、同じ対応をしてあげられない。

それがA子さんの悩みでした。

■虐待の影響が影を落としていた

なぜ次女はできることを長女にはできないのか?
なぜ長女にはイラッときてしまうのか?
どうやったら本当にしたいことであるはずの長女に優しくし、抱きしめてあげられるようになるのか?
その原因を究明するべくカウンセリングで一緒に考えていきました。

カウンセリングで分かってきたのは、A子さんの成育過程の影響によるものだということが分かってきました。

A子さんは子どもの頃、お母さんから虐待を受けていました。
その虐待を受けていた時の心の傷が子育てに影を落としていたことが分かりました。

A子さんのお母さんに叱られ、幼い頃のA子さんが泣くと、A子さんのお母さんは「泣いて許されると思うなよ」と言い、A子さんを叩いたりり、余計に感情的に攻撃したりしていました。

A子さんは、泣くと余計にひどい目に遭うので、泣きたい気持ちを心の奥底に押し込めて、しだいに泣かない子どもになっていきましした。

また、幼い子どもころのA子さんがお母さんに甘えようとすると「暑いのにベタベタするな」と突き放されたり、「うっとしい」などの言葉を言われていたそうです。
お母さんのその態度や言葉にA子さんは傷ついていました。

甘えたい気持ちを持ってお母さんに接すると、傷ついていくことが多くなるので、A子さんは甘えたい気持ちを心の奥底に押し込めました。
そして甘えない子どもになっていきました。

泣きたい気持ちや、甘えたい気持ちを心の奥底に押し込めるというのは、A子さんが幼い頃の環境で酷い目にあわないようにする為に、傷つく思いをしないようにする為に身に付けた術でした。

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長女は次女よりも、幼い頃のAさんに似ていたので、長女と自分自身とを重ねてしまっていることがわかりました。
(心理学の言葉を遣うと、長女に自分自身を投影すると言います)

そして自分自身を投影する長女が泣く、甘えるというものを見せられると、自分自身はその気落ちを押し込めて生きているのでで、長女のその気持ちを押し込めたくなり、長女にだけつらくあたる反応になっていたこともわかりました。

つまり、長女を嫌ってつらくあたっていたのではなく、自分の中にある幼い頃の泣きたい気持ちや、甘えを抑圧していたので、自分自身を投影する長女が見せる泣きたい気持ちや、甘えを抑圧したくなるという心の動きが起きてたことがわかりました。

■ずっとしたかった優しく接することができた

カウンセリングで抑圧していた子どもの頃出せなかった泣きたい気持ちを解放していきました。

本当は甘えたかったという気持ち、甘えられなかった悲しさなどの抑圧してた気持ちも解放していきました。
つらかった思いを涙に流して浄化していきました。

子ども時代の傷ついた気持ちを癒やすインナーチャイルドワークということもしていきました。

何度も癒やしを重ねて浄化が進み自分の中の抑圧が無くなっていった度合いだけ、長女の泣く、甘えを抑圧する現象は緩まっていきました。
長女に対するイラつきはマイルドになっていき、そしてついに次女と同じように接せられるようになりました。

長女に優しくしてあげたい、抱きしめてあげたいと、次女との同じ接し方でありたいと思っているのに、心が違う反応をしてしまうことにずっとできずに苦しんでいました。
ずっとしたかった優しくする、抱きしめてあげる、長女と次女との同じ接し方で接することができたのです!

それはAさんが優しくしてあげたい、抱きしめてあげたいと、次女と同じように接したいということを諦めずに考え、悩んで、自分を見つめ続けて手に入られた変化でした。
状況を良くすることを諦めなかったAさんの姿勢は本当にすばらしいです。

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もし、あなたが誰かに優しくしたいと思っているのに関わらず、それができない時には、もしかしたらA子さんのように何らか原因(理由)があるのかもしれません。
それはAさんのように幼い頃の虐待が原因とは違う理由かもしれませんが、何らかの理由があるのかもしれません。

あなたの性格が悪いという問題ではなく、心の痛みが悪さをして引き起こしている問題なのかもしれません。
人に優しくできない自分を責めることにエネルギーを費やすのではなく、何らか原因(理由)があるのかもしれないという原因究明をすることにエネルギーを費やそうと思ってみるといいかもしれませんね。
原因が見つけられると対策も見つかりやすくなりますから。

あなたが本当にしたいことである人に優しくすることができるように応援をしています。

(続)

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 子どもに優しくできない〜虐待を受けていた影響からの解放〜
  2. 私が悪いと思う癖〜虐待が作る私が悪いと発想する心理パターン〜
  3. 怒りの声を聞くとダメージを受ける〜面前DVの影響からの脱出〜
  4. 自分の気持ちがわからない〜虐待により感情を閉じ込めた影響〜
この記事を書いたカウンセラー

About Author

若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。