会社を辞める(変わる)決意をする前に振り返ること

会社勤めをしていると、時に会社を辞めたいなぁと思うことがあります。
多くの皆さんがそう思った経験をお持ちではないでしょうか。

その理由は、上司や同僚との人間関係が悪い、仕事自体が面白くない、仕事が自分に合っていない、やりがいが無い、一生懸命頑張っているのに認めてもらえない、給料が安い、将来が見えない、過酷な労働による体調不良など、人それぞれかと思います。

一方、会社を辞めるかどうか考えている時に、それを押しとどめようとする気持ちも出てきます。
次に勤める会社が決まっていない場合は、仕事が見つからないのではないかという不安もあります。
今よりいい条件の会社など無いのではないかという思い。
転職してもまた同じような状況になってしまうのではないかもしれないという不安。
仕事が長続きしないと自分を責める気持ちや私が辞めたら周りに迷惑がかかるのではないかという気持ちなども出てくるかもしれません。

さて、計画的なステップアップで会社を辞める場合はさておき、何らかの理由で自発的に会社を辞めたいと考えている場合は、職場にいるときに感じる何らかの“嫌な感情”が原因です。
逆説的ですが、職場にいるときに感じる感情が、楽しい、面白いといったポジティブな感情ばかりであれば、会社を辞めようとは思わないですね。

会社を辞めるという決意は、人生を大きく左右する決断になる場合もあります。
その決意をする前に、なぜ自分は会社を辞めようと思うのかを、少し振り返ってみられてはいかがでしょうか。
この振り返りをすることで、決意が強められる場合もあれば、逆に少し時間をおいてみようなどと冷静な見方ができるようになります。

振り返りの方法は、自分の感情と向き合ってみることです。
1・職場で自分がどんな嫌な感情を感じているのか。
2・それはなぜそう感じるのか。
3・自分の観念やルール(こだわり)によるものではないか。
4・自分の心の内にある投影によるものではないか。
などです。

ここで、
観念やルールは、「こうあるべき」「こうしなければならない」と自分に課したり、他人に課したりしているもので、自分を縛り、他人を縛っているものです。
例えば、「上司はこうあるべき」「会社はこうあるべき」など、「〜あるべき」「〜しなければならない」といったものです。
私たちは知らず知らずのうちに当たりあえと思っている観念やルールをたくさん持っています。
「外に出るときには靴を履かなければならない」など自然と身についてしまっているルールや観念もあります。

投影とは、私たちの心の中にある物の見方の癖のようなものです。
例えば、家庭内の権威者である父親から可愛がってもらえなかったと思っている人は、会社内で同じ権威者の立場に相当する上司とうまく関係性が築けないことがよく起こります。
上司は父親とは別人格なのですが、父親から「大切にされなかった」という思いが、上司からも「大切にされていない」と感じてしまうのですね。

3番や4番が理由であれば、会社を変わってもまた同じような状況が出てくる可能性があります。

3番については、自分自身の持っている観念やルールをそれが本当に必要なものかどうか見直し、そしてできるだけ多くの観念やルールを手放すことで、職場で感じる感情を変えることができるようになります。
もっとも、それは怖いことなので心の中で様々な抵抗が出てくるので、一朝一夕にはいかないかもしれません。

4番については、何を(誰を)何に(誰に)投影しているのかに先ずは気が付くことです。
過去の経験から生まれた投影もあれば、自己嫌悪を投影している場合もあります。
何を(誰を)“どのように”見ているのか、その“どのように”はなぜそのように見るのか、過去の経験や関係性、自分自身との共通項を探っていくと、投影の原因が見えてくることがあります。
この「投影している」という気づきが、先ずは投影の影響を無くすことにつながります。
心理学でいう「投影を取り戻す」という作業です。

さて、一方会社を辞める事を押しとどめようとする気持ちについてですが、先ずは周りに気を遣う気持ちは一旦横に置かれることをお薦めします。
そのような気持ちは、優しさの側面もありますが、義務や犠牲といった「がまんする気持ち」です。
例え、会社を辞める事を一旦は思いとどまったとしても、いつかはまた会社を辞めたいという思いが湧き上がってきたり、会社に残っていること自体が更に苦痛になったりしてしまいます。

また、会社を辞める事で仕事が長続きしないなど何らかの自分を責める気持ちが出てきたり、会社を辞める事で負けたり逃げたりする感じが出てくる場合は、変化に対する怖れ、心の罠だと認識してください。
会社を辞めるというのは自身が持っている選択の力であり、それを選んだからといって自分を責める必要はなく、また、勝ち負けの勝負をしている訳ではありません。
よりよい人生を送るための選択なのです。

新しい仕事が見つからないのではないかとか、今よりいい条件の仕事は無いのではないかという不安に対しては、先ずは具体的に新しい仕事を探す行動をしてみる事です。
そしてどのような状況なのかを確認して、その上で会社を辞めたいという気持ちと状況を照らし合わせて自分の気持ちで“選択”をする事です。
仕事探しにはタイミングもありますから、ある程度期間を取って新しい仕事探しをされる方が良いのではないかと思います。

会社を辞める決意をする、あるいは辞めないと決意をする時に最も重要なのは、自分で“選択した”という意識です。
どちらを選ぼうと、自らが選択したという意識がある度合だけ、後悔や義務犠牲感はなくなり、自分が選んだその後の状況を素直に受け入れる事ができます。

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。